「もし、リヴィングストン博士をご存じではありませんか？」

ドーデン地方の外れ。遺棄されていたジェネレーターが偶然稼働し生み出された彼女は孤独であった。
森を彷徨い歩き、運良く蛮族にこそ襲われなかったものの、彼女を最初に見つけたのは下卑た奴隷商人だった。
どこへ売り飛ばされどのような扱いを受けるのか。生まれて早々の受難に見舞われた彼女にはすぐに買い手が付いた。

彼女を買い上げた紳士は服を与え、食事を与え、住み込みの職を与えた。
名を与え、姓を与え、どうしてそこまでするのかと尋ねる彼女に、そうするべきであるからだとだけ答えた。

「はい。博士は探検家であり、人徳に溢れた医師であり、聖職者でもあります。以前魔物に襲われ、左腕に大きな傷をお持ちです」

紳士は高名な探検家であった。また彼女がそうされたように、持たざる者に手を差し伸べる人格者であった。
探検の理由は単なる好奇心であると答えていたが、それがいまだ分断された村落を繋ぐためのものであると彼女は知っていた。
時に大小さまざまな傷を負いながらも帰り、その危険を理由に彼女を共に連れてはくれなかった。
彼女にできることはいつ主人が帰っても良いよう質素な屋敷を整え、料理の腕を磨き待つことのみであった。

そしてついに、遠く南へ向かうと言い残したまま紳士は帰らなかった。

「そうですか……ありがとうございます。今後何か心当たりがありましたら、ご連絡頂けますと幸いです」

期日まで戻らなかったら開けてほしいと言われていた封書を読み、彼女はすぐに準備を始めた。
指示の通り屋敷を売り払い、しかし得た金銭で静かに暮らすことはせず、護身の技術の習得と旅装、そして馬へと費やした。
やがて同封されていたタリスマンを胸に、彼女もまた南へと向かう。


旦那様。どうかご無事であってください。
かつて救って頂いた私が、今度は貴方を見つけ出せますよう。

やや長身、細身。170cm弱くらい。
金髪碧眼、髪の片側を編み込み片側を垂らしている。
給仕服と乗馬服の中間のような服装、濃い赤のコートを羽織っていることが多い。
首と胸の中央に硬質素材部分があり、あまり見せたくないため全体を覆うインナーを好んで着ている。
胸はあまりない。

・〈ブラッドスクイーズ〉::-28000
・アビス強化::-8000
・オーダーメイド(必筋+3)::-9000
・レイラの所有権::-20000
・〈とんがり帽子〉::-3000
・〈石人の耳飾り〉::-6640
・〈スマルティエの銀鈴〉::-7500
・〈正しき信念のリング〉::-30000
・〈グリーンベルト〉::-35000

巡る空鯨亭にて冒険者登録をして数週、遺跡で立ち往生している探検家の救助依頼があると聞き飛びつきました。
詳しく聞けば行き先はウルシラ地方ということで旦那様とは全くの無関係でしたが、私と同じように帰りを待つ人がいるでしょうから、放っておくことはできませんでした。
それに、早速空鯨亭というギルドの活動範囲の広さを知ることができたのも幸いでした。ユーシズからハールーンへのゲートについても、本来であれば私個人で使用することはできないものです。
ギルドから共に出発したボーチェさんにリベラさん、ペリドットさん。道中偶然にもお会いし同行してくださったマノリアさん。ユーシズまでの往復と高価な矢を貸してくださったリャンさん。皆とても良い方で、安心して仕事にあたれました。

遺跡ではラルさんという探検家の方と無事合流することができ、彼の当初の目的である遺跡の秘宝にも辿り着くことができました。
同じ探検家として旦那様のことを訊ねましたが、残念ながらご存じではありませんでした。

ハーヴェスに来るまでは近付いて確実に当てるという戦法を多く取っていましたが、どうやらあまり一般的ではないようです。
それに近付くこと自体避けた方が良い相手というのも、今まで運良く相対しなかっただけなのでしょう。少し戦い方については考えた方がいいのかもしれません。
とはいえ今までの経験が役に立たなかったわけではなく、厄介な魔法生物を速やかに排除できたことは誇りに思いたいところです。
レイラも道中や現地での安全確保等、とても頑張ってくれました。これからもよろしくお願いしますね。

お掃除の仕事をくださった方の紹介で、ハーヴェス近隣の村で行われる収穫祭の警備役をさせて頂きました。
しかし祝祭の準備中に死者が出てしまったことは痛恨の極みです。明日ハーヴェスに戻りご子息に改めてお伝えするのですが、何と申し上げれば良いのでしょう。
村では偶然仕入れに来られていたリャンさん、所縁のある聖剣を見るため訪れていたノルンさん、踊り子として私と同じように雇われていたツバインヒさん、そして村の神殿勤めであったイルルクさんと共に調査を行いました。
当初は証拠も乏しく、ともすれば隣人同士で疑い合わなければならないような状況に胸を痛めましたが、各所での聞き取りを進めるうちに村の分断と収穫祭の転覆、それによる神の力の打倒を目論んだ吸血鬼の仕業であると発覚、これを討伐することで解決となりました。

私は、自身の生まれを不幸だとは思っていません。むしろ旦那様に見つけて頂き、とても恵まれた生を歩んできたと胸を張って言えます。
しかし今のように寄る辺が無く、誰かに縋りたいような心細い日々を送ると、たとえ私がどんなに信心深くても神様の声を聞くことはできないのだという事実が重くのしかかります。声が聞こえない私の声もまた届くことは無いのではないかと、諦めかけたことも1度や2度ではありません。
イルルクさんを依代として降臨なさったフルシル様にお声をかけて頂いた時、名を呼んで頂き激励の言葉を賜った時、今までの私の諦念を恥じると同時に報われたような、赦されたような心地になりました。
見て下さっている、ただ祈りが空に消えていただけではないと分かる、それだけで希望を捨てず歩んでいく活力がまた湧いてくるのを感じます。
なにより神様の前でそう名乗りを上げたのですから、これからも諦めずに進んで行くことを改めて心に決めます。

旦那様と同じシーン様への信心を失くすわけではありませんが、フルシル様にも同じだけ祈りを捧げることにしました。
どうかこれからの私を、良き方へ導いて下さいますように。

先日の収穫祭の一件もあり、再び警備・護衛役としてのお仕事を頂くことができました。
ブルライト地方の東海域を遊覧する船で、つい最近まで非常に危険な海域であったところを先輩方が航路を切り開いたことで運航可能となったそうです。船は非常に大きく豪華な食堂設備まで備えていました。各神殿からの協賛があっての運航らしく、その護衛任務を仰せつかったことをとても誇りに思います。
神殿からはテレスさん、エンジンさん、代理で来られたテルミィさんが立ち会いに来られており、そして先日の村から姿を消していたイルルクさんとも早々の再会となりました。やはり現人神のように扱われることに耐えられなかったそうです。これについては私にも責任の一端があるはずで、少し申し訳ない気持ちがあります。

遊覧運航は途中まで順調でしたがやがて小さな魔域にぶつかってしまい、その対処のために皆さんと潜り込むことになりました。
内部については、正直あまり思い出さない方が良い気がします。なんとか正気で戻って来れただけ幸運と言えるでしょう。
魔域を閉じることにも成功し、陸へ戻ってからは皆さんと料理を囲んで親睦を深めました。残念ながら旦那様の消息については今回も空振りとなりましたが、情報を得た際はご連絡頂けることになりました。本当に優しい方々だと思います。

ずっと内陸を南下してきましたから、久しぶりに茹でたカニを頂きました。グランティンとは味付けが少々異なりましたが、こちらの味も好みです。ハーヴェスは広く交易を行っていることもあり、新鮮な調味料や調理法を多く見かけます。
旦那様とこの味について語らうことができれば良かったのですが。
お会いできた際に召し上がって頂けるよう、こちらの料理についても広く学んでおくことにします。