ある朝目覚めると……
右腕に奇妙な刺青が刻まれていた！あと胸にも！

瞬間察してしまった。これは、闇の力の覚醒だ。


　いつしかラミウムの自室は、貴族から流れ着いた多量の"闇の宝物品(ジ・アンティーク)"によって埋め尽くされていた。
　しかし、力を得るには犠牲は付き物だ。……そう、ラミウムは"闇の宝物品(ジ・アンティーク)"の数々を手に入れるために、多量の生贄(ガメル)を捧げてしまっていた……。
　義母や親戚に頼み込んで前借りしていた闇の供物(お小遣い)はついに20000ガメルを超えてしまっている。

　一攫千金。そんな夢をかなえるには冒険者になるしかない。

　ラミウムは決意した。いつか必ずここに戻る！だから、二年後、シャボンディ諸島で会おう！


　お金を返すため……。そしてPTの"陰の実力者(シャドウ)"になるため、幼馴染の冒険に同行することにした。

お前はシャドウじゃなくてメリアだ((殴

　ラミウムは、この世界を舐め腐っていた。冒険とは、希望に満ち溢れたものだと思っていた。しかし、人は簡単に死ぬ。命は脆く儚いものだった。襲い掛かってきたからこそ打ち倒した人族にも、大切な家族や友人がいたはずだった。腕に宿ったこの召異の力だけでなく、皆を支える力が欲しかった。

　母に持たされたノートを開く。そこには、自身があまり好きではなかった魔法の詠唱が描かれていた。母の字で丁寧に書かれた操霊の技術を、ラミウムはかみしめるように読み進めた。

　月光の下、詩を詠むのが好きだった。いつしか月は、ラミウムの唄を聞かせる唯一の相手になっていた。
　寝静まった街の中、湖のほとりで、ラミウムはいつしか"月光(シーン)"に唄をささげた。

　そして、いつものように仲間たちが寝静まった夜に、月を見つめるその瞳に清らかな声(神の声)が届いた。

　ついに封じられしこの力を開放する時が来た。異界より来たる瘴気に満ち満ちた怪物どもを、その声で従属させる力がラミウムにはあった。
　湖のほとりで静かに囁いた。

「――時は満ちた。世界に潜む闇(ダークサイド)が、動き出した。我ら宵闇の放浪者(ワンダラーズ・オブ・ダークネス)も、大きな壁を越えなければならない」

　腕に刻まれし刺青が薄く輝く。異界の扉はもうじき開かれるのだ。
　水面に煌めく月光に照らされながら、静かに拳を握り締めた。

　魔神使いとして、森羅の力とは距離を置いていた。
　しかし、遺伝子が導いたのか、或いは。
　彼にはいつも精霊のこえがきこえた。

「今宵の戦いで、生死の境をこの目に見た。沈むような心地よさと、全て諦めていいと思えるような暖かな光が、オレを輪廻に誘った。しかし、もうひとりのオレ(内なる悪魔)が囁いた。

　　『ここで終わるのか？』

　目を覚ませば、ピンチに陥る同胞達が見えた。死に物狂いで神の奇跡を願った。

　
　あのティダンの神官戦士(悪に落ちた騎士)も、かつては敬虔な信徒だったのだろう。彼は強かった。
　そして、また彼も数々の絶望をその瞳に刻んできたのかもしれない。

　オレは、仲間を失うわけにはいかない。扉の小魔(内なる悪魔)も、いつもオレの心を惑わせてきたが、今回ばかりは感謝してやろう。

　魔法文明時代から、未知かつ強大な魔神の力は人族だけでなく蛮族にとっても、魅力的なものだった。
　しかし、強大な力はいつしか破滅を招く。魔法文明に終止符を打った原因の一つに、魔神の力は大いに関係しているだろう。
　時代は移り変われど、その遺恨は消えることはない。
　我らは旅に出てからたしかに強くなった。だが、その力に溺れてはいけない。
　オレはあいつらの為にも、"選択"しなければならない時がくるだろう。オレがどう思われようと、こいつらを旅の終点に連れて行く責任がオレにはある。
　腕に刻まれし刻印が疼く……。」

　　　　　　　　　――とある少年の手記より

　「俺も角が欲しい。と思ったが言えなかったのでここに書き残しておこう。」

魔導の極み　我が名に刻め

同じ時を刻む唄を
荒野の風に乗りて
それは果実のように鮮やかで
純粋な恋は実る

無知は罪なり
知は空虚なり
英知を持つもの英雄なり

知識を持つだけでは空虚に過ぎず。それを他者のために行使出来る者こそ真の英雄なのだ

信仰とは、神とはなんだ。
信じるならば、それに惑わされることを本当に進行と言えるのか。
彼らは本当に。