【出自・寝床】

フレジア森林国内、動物と協力し共存しあう集落がある。
その村の重要な位、獣医の家に3女として生を受けた。
他の集落と交易や交通便などでここの集落は成り立っている。
分かりやすく例えるなら車庫、始発も終電も最後はここに戻り眠る場所。

【幼少期・平和な日常】

家族の中でも動物との調和性が高く、初対面の(飼育下の)動物でもすぐに懐かれるほど。
勉学より体を動かくす運動のほうを好み、よく勉強をサボって動物達と遊んでいた。
３女として家を継ぐ必要は無いが将来のために少々不安を抱えていた。
が代わりに暴れる動物たちを鎮めたり「調教」の才能が高く、そっち方面へ伸ばしたほうがよりサポートに回れるだろうと思い、勉学もそっち方面へとシフトチェンジした。
シエン本人は良く分からない医学系統の勉強より、生物系統が多くなったと喜んだ。前よりサボることは減った、らしい。

【転機・ヒトメボレ(6)】

とある日、家族と「繋ぎの集落」から帰る道中の事。その日は霧が濃く、寒く、行き慣れた道としても馬車共々緊張が走っていた。
ふとシエンは何気なしに森の奥へと視線を移すと、｜瞳《め》と目が合った。
周りは霧が濃く、森の奥深くを見るには不可能な状況。そんな環境なのに、異様な｜瞳《め》だけがそこに存在している。

シエンはその｜瞳《め》から目が離せなくなった。

あの｜瞳《め》と出会って数日後、シエンはボーっとすることが増え家族は心配をしていた。どうやら彼女たちはあの｜瞳《め》が見えなかったらしい。
シエンは日々あの｜瞳《め》の事を想う事が増え始めた、それは私生活に支障をきたす程に。
次姉が持ちうる医学書でシエンの症状を当てはめ、病状を探してたが見つからず焦っていた時に長姉から一冊の本を渡された。

それは恋愛小説であった。
そこで家族全員に判明される、彼女はどうやら「ヒトメボレ」をしたそうだ、と

このままではダメだと家族はシエンを「繋ぎの集落」にあるライダーギルドで暫く療養(それと社会勉強とアルバイト経験)をさせる為に行かせた。
家族がシエンを見送った日も、霧が濃く肌寒かった。揺れる馬車の中で家族に手を振り、またボーっとする。
あの｜瞳《め》から出会った日から一度も忘れたことは無い。
だから｜それ《瞳》を見逃すことは無かった。見逃すはずがない。
その｜瞳《め》は依然見かけた時より近かった。長姉から借りた恋愛小説に影響されてか「一目会いたい」と強く思い、走っている最中の馬車から誰にも気づかれずに降り、｜瞳《め》の元へと駆け出して行った。

この日から数年間、家族がシエンと再会することはなかった。

【巨木の子・でアい】

勢いで｜瞳《め》の元へと掛ける。手荷物は傍にあった最低限の荷物。

あの日から出会った｜瞳《め》の持ち主はいったいどんな人だろう？
一言目の挨拶はなんて言おう？
ああ、生まれて初めてこんなに心臓が鳴っている！
これが『恋』なんだ！！

「恋は盲目」が服を着て走っているかのようにシエンは一直線に｜瞳《め》の元へと掛けて行く。
しかしいくら近づこうにも近づけない。霧はどんどん濃くなる。それでも何故か不安も恐怖も無かった。
暫く木々の間を走った後に漸く不思議に思いスピードを落とす。先ほどの場所より霧は薄くなっている事を気付く。

--ここはどこだろうか？--

結構な距離を歩いたと自覚しながら周りを見渡す。勿論｜瞳《め》の事は見失わず、というかまるでシエンと常に一定距離が開いているのか近づくことが出来ない。
自身が迷っている事も気付き、さてこのさきどうしようかと悩んでいるときにとある老齢のエントレットと出会う。
後に彼の事を『じいじ』と呼び慕い、彼から様々な自然や狩りの知識を学んだ。
しかしシエンは妖精語を習って無かったのでエントレットと意思疎通が出来なかったのだが、絵とボディランゲージで意思疎通をしていた。
今も妖精語を習得していないのはちゃんと学んでいないからのと勘で受け答えをし、主に絵で交流したからかもしれない。
そこで数年エントレットの『じいじ』と共に過ごしながら、近づくことが出来ない｜瞳《め》を見つめ続ける。
じいじに｜瞳《め》の事を何か知っているか聞いたところ「害はない」としか理解できなかった。

ある日また｜瞳《め》を追いかけて行くと、いつの間にかとあるティルグリスの縄張りに入ってしまう。
そこで命の危機を感じるわけでもなく「ここに来ればもっと｜瞳《め》に近づけれる、もしかしたら会うかもしんない！」と思いが助長し、毎回ティルグリスの猛攻を避けながら｜瞳《め》に近づこうする。
ティルグリス、のちにシエンから『ラトゥコラ』と勝手に名付けられ呼ばれる、は毎回侵入してくる小娘を追い払おうと攻撃を繰り返すが会う度に上手く避けたり逃げたり反撃を食らうこともある。
そういった過程で謎にシエンとラトゥコラの間に悪友のような友情の絆が芽吹いた。そのせいかお陰かラトゥコラは交易共通語を理解し、話せることが出来てしまった。
シエンは｜瞳《め》がラトゥコラの縄張り内かその先にあると思い「もしかして恋敵では？！」と勘違いをしている。
ラトゥコラは否定しているが頑固者のシエンにはなかなか届かない、ので放っておいている。

【正体？・神への道】

｜エントレット《じいじ》の元で生活し｜ティルグリス《ラトゥコラ》と｜じゃれあい《戦い》ながら｜瞳《め》を見続けて数年、本格的に｜瞳《め》と出会い、話をし、あわよくば隣にいさせて欲しいと思う。
それは長らく放置していた持っていた手荷物から覗いた長姉の恋愛小説を久方ぶりに読んだからだ。
その中に一文「命短し恋せよ乙女」と書いてあり、更なる欲望と共に｜瞳《め》と共にあれる方法はないかとじいじに相談することにした。彼曰く「神への道は世界の何処かにある。又は神が気まぐれに与えると聞く」(シエンの勘訳)(実際合ってる)。
シエンの中で｜瞳《め》の正体は「樹神ダリオン」だと思っている。しかし彼女には神官の才が無く、だから声を聞けれなければ姿も見れないと思いじいじに「神の傍にいれるにはどうすればいい？」と相談したのである。

それからはじいじからは知識を、ラトゥコラからは戦闘の実技と幻獣の扱い方を教わる日々に。
十分な知識を蓄えたシエンにじいじは「人族には「冒険者」という堂々と世界を旅できる切符を持ち、「神」への道に踏み込めれる資格がある」と教え人族の群れ(集落)に戻るように促す。
一理あるとシエンは納得しラトゥコラに勝手に「強くなって戻ってきたときに君から一本取れたら一緒に｜あのヒト《瞳》に会いに行こう」と旅の同行の約束を取り付け、じいじに別れを告げ、実家へと帰る。
薄い霧の中に入り、案外すんなり帰宅できたシエンを出迎えたのは泣きじゃくったり怒ったりしている家族と集落のみんなであった。

【修行・長い長い旅路の始まり(15)】

おおよそ9年、シエンは行方知らずだったのだ。
家族は心配からくる怒りと安堵の涙でシエンを迎え入れ、事情を聴く。
絶句するもの、らしいと笑うもの、様々な思いの中シエンは冒険者になると宣言して、再度怒られる。
家族からの要望でせめて10年はフレジア森林国内で冒険者をし、家族の元へ必ず帰るという約束を無理やりにでも取り付けられた。
少しでも早く世界を回り、神に近づきたいシエンにとっては相当渋ったが、危うく監禁されるもしれないと感じ、この条件を飲んだ。

もう成人したので冒険者になれるが長らく人族社会から離れていたので復帰の為に「繋ぎの集落」のライダーギルドで暫く働き、その過程で「ネルネアニン騎獣調香術」に入門した。
その為冒険者になったのは社会復帰もした成人した3年後、つまり18歳の時になれたのだ。

フレジア森林国内で初心者冒険者として7年過ごし、その後家族から手紙でもいいから1年に1回は無事を知らせることを約束され、国外から旅立った。
ドーテン地方を巡り、その過程で『アースト強射術』に入門する。

そうしてキングスフォールの冒険者ギルドから一つの依頼が舞い込んできた…

【現在・運命の歯車が動き出す】

今度は鉄道ギルドからの指名で長期の依頼を頼まれた。
久しぶりの帰郷がまさかこんなことになるなんて…しかもなんか事件が起こっている…
…｜あのヒト《瞳》とコラとじいじは大丈夫かな？大丈夫だろう。
空いた時間で見に行けれるかな？

空奏列車
サクラノタトゥー
拝啓、何者にもなれなかった僕へ。
クノウチでも恋がしたい
ファタール
ド屑