コルガナ地方西部にある「アスセーナ村」という知る人もほぼいない小さな村の出身。
人間同士の夫婦から生まれた非常に珍しいティエンスで、胸元に輝く蒼い宝玉があるのが特徴。
奈落に程近い位置に存在するその村は「魔神」を中心とした魔物に察知されないように、
隠れ里と言って差し支えないくらいには、外界と隔絶された立地となっていた。
両親はティエンスであるリリーにも変わらぬ愛を注いでくれたし、村の人々から差別を
受けることもなかった。むしろ『村から魔を打ち払う奇跡の神子』であると信じられていた。

ロッサには、いつも行動を共にしている「ミュゲ」という名前の、犬のペットがいた。
心を通わせることを得意とするティエンスであった事も含め、ミュゲはリリーに懐いており、
顔を見かけると尻尾を振って喜ぶほどであった。だが…ある日を境に会う度に吠えられる様になる。
ミュゲと意識を通わせてみると『ロッサがどこかおかしい』と強く主張している様だった。
しかしリリーが彼を見ても何も違いを感じられなかった。そこにいるのはいつも通りのロッサ。
様々な生き物と心を通わせてきた彼女にとって、理解できない事は「苦手」と感じるには十分だった。

この好意を自覚したのはいつだろう。リリーもロッサも気付けばお互いがお互いを想っていた。
男女の関係になったのは１４歳の頃だ。それ以前も、それ以降も２人が喧嘩した事は一度もなかった。
だが運命は２人が共に在る未来を拒んだ。別れはリリーが１６歳になってすぐ、突然に訪れた。
複数の魔神がアスセーナ村へと攻め入ってきたのだ。両親はちょうど家にいたリリーとロッサを
何とか逃がそうと奔走し、自分の身を投げ出して時間を稼いだ。聞こえる断末魔さえも振り切って
逃げたが、それでも追いかけてきた１体の魔神が放った攻撃は、ロッサの身体を貫いてしまった。
リリーは咄嗟に意識を通わせると「早く…早く逃げろ…！ 俺はもう絶対に助からない…。
お前に死に顔は…見せたくないし見せられねえ。だからお前だけでも…逃げて…生き延びて…
幸せになってくれ…愛している」と。…これが２人が最期に交わした「意識(ことば)」だった。

かつては数多の動物と心を通わせて、純粋に仲良くなっていた。それが楽しかった。
今ではこの技能(能力)も便利な道具の一種。表面上、心を通わせた動物を利用している。

常に手伝っていたわけではなく、亡き父親の手伝いでたまに農作物の生産等に携わった。
このおかげで朝早く起きる事に慣れているし、ある程度の重労働に身体が負けたりしない。

常に手伝っていたわけではなく、亡き母親の手伝いでたまに清掃や料理等の家事に携わった。
その頃は「花嫁修業」の一環と捉えて、面倒な素振りも見せず、楽しそうに行っていた。

もはや片隅の記憶。確かな信頼が絡めた小指で、指切りげんまん。
何かを疑う事など知らない子どもが２人、誓うは幼稚な約束が１つずつ。

とある少女「じゃあ～約束だよ！ これからも一緒に…ずっと私のそばにいてよね！」
とある少年「ああ、もちろんだとも。一緒にいる時は…涙なんて見せてくれるなよ？」
とある少女「ふふっ！ 泣かないよ！ だってロッサが私を笑顔にしてくれるから。」
とある少年「……ああ。俺もお前からいつも元気をもらってるよ。ありがとう、リリー。」
　　　　　　　　　　
とある少女『白く染まれば【清浄・純潔・尊厳】黒に堕ちれば【呪い・復讐・愛・恋】』

―――これは未来を誓い合った幼馴染が、魔神の手によって死に別れるだけの悲恋物語。

とある少女は、それ以上知る由も無い。知れたとしても知りたくも無いだろう。
苦手なペットが『動物の本能による危険信号を送っていた』事にも気付かない。
とある少年は、いつからか人では無い。正しくは…本人はとっくに死んでいた。
正体は姿写しによって人族の社会へと紛れ込んだ魔神「ダブラブルグ」だった。
だが…その魔神は人族の少女に恋をした。愛してしまった。時間が経つにつれ、
元の少年を殺した事と、愛した少女を騙しているという事実の呵責に苦しんだ。

―――これは未来を誓い合った幼馴染が、魔神の手によって死に別れるだけの純愛物語。

少女の本質【魔神を愛し、魔神に愛され、魔神に殺され、魔神を殺す。恋は盲目、愛は瞠目】
少年の本質【人間を愛し、人間に愛され、魔神に殺され、魔神を殺す。住めば都で花が咲く】

　私たちの住む悪徳の都ヴァイスシティ。その別名を「モルガナンシン」と言うのは住んでいる者なら
大抵の人は知ってるでしょう。ただその名が、３０００年前に奈落から溢れた魔神によって蹂躙され、
魔法文明時代の終焉と共に滅び去った「モルガナンシン王国」に由来している事を知る人は多くは無い。
私だって知らなかったし、知ったからと言って何かが変わるというわけでもない。要はただの歴史ね。

　けれど歴史の中には偉人が存在する。まあ偉人の成した事や人物像なんて欠片も興味はないけれど、
そういった人物は大抵何かを後世に残している。それを知っておくと、手段を知り選択肢が増える。
使える道具が増えるという事。つまり滅び去ったモルガナンシン王国にて、軍を効率的に支援・強化
する為に編み出された軍隊・戦場用の魔法運用法。それが【古モルガナンシン王国式戦域魔導術】ね。

　ゴミの様な悪徳の都において、この流派が失われる無く語り継がれたという事実は褒められる
唯一と言っていい点かもしれないわね。正直パーティメンバーなんて欠片も大切に思ってはいないけど、
依頼を受けていく上で最上級の力と言っても過言じゃない。まあこの流派と秘伝がもたらす価値も
分からないような奴らに、私が自ら印を刻まなくてはならないのが癪ではあるけれど我慢しましょう。

ロッセリーニの魔法印を刻んだ者

　①リリー / ②ドルフィン(リリー) / ③ジャイアントリザード(リリー) / ④ベルティアナ
　⑤Dr. / ⑥ドラゴンインファント(Dr.) / ⑦ネロ / ⑧ヴィリア / ⑨ジンジュウ
　⑩マリィ / ⑪ドンダウレス(リリー) / ⑫ドンダウレス(Dr.) / ⑬カルキノス(リリー)
　⑭ウォーホース(リリー) / ⑮ディノス(リリー) / ⑯ペガサス(リリー)
　⑰プレーンセンチピード(リリー) / ⑱エメラルドラクーン(リリー) / ⑲ティルグリス(Dr.)

　私たちのいるヴァイスシティから遥か南方。ブルライト地方には「奈落教大教会」という存在が
あるらしい。私はその教会には何の興味もないけれど、その教会は魔神を崇拝するに等しい狂った
教義をしているとか。そして、それに警鐘を鳴らして集った人が「対奈落教会議」と呼ばれる。
まあこれだけならしょうもない話だけど、その「対奈落教会議」の活動グループの中にいる神官は、
【奈落反転神術】を編み出した。これが神官である私にとっては、必要な力だったというわけね。

　正直ここで過ごしていて、奈落教そのものと関わることはまず無い。ただ奈落教が引き起こす
事件の裏側に魔神が寄与するならば、私が滅ぼす道理となる。それに奈落教が関係してなかろうと、
魔神を殺す選択肢が増える事は有意義ね。そう、使える物はなんだって使ってあげましょう。
どうやら冒険者の場合は、奈落教を躍起になって追う必要も無いらしいし、ますます都合が良い。

　神官が長い射程で攻撃する手段を得られる【封呪反転攻術】は、どうも価値のない神聖魔法を
封印することによって、敵を討つ為の力に変換すると言った感じね。まあ神聖魔法なんてほとんど
価値の無い魔法ばかりだし楽でいいわ。使った事の無い魔法を封印してもいいけれど、使ったけど
効果を得られなかった記憶がある魔法で良いでしょう。こんな魔法、もう２度使う事は無いわ。

封呪反転攻術を用いて封印した魔法

　Ⅲ.キュア・ブラインドネス(MP1/HP2/威力15)　Ⅴ.キュア・ディジーズ(MP1/HP4/威力25)

・火葬場の主 ブルガトリオ（ドレイクバロン(人間形態)）
・運び屋の少年 クリント（レプラカーン）
✓山月亭亭主 アイザック（人間）
・調鍵士 スミス（ルーンフォーク？）
✓騎獣の管理人 アルパトロン（タビット）
・資産家 スペクルム（ドッペルゲンガー）
・闇に救われた少女 メグ（リカント）
・娼館の支配者 バビロン（エルフ）
・薬草の調合師 エウルシア（メリア(長命種)）
・ギルドの貸出屋
・奈落の研究者 ジルアール（ダークドワーフ）