ゆとシートⅡ for SW2.5 - ゆと工公式鯖

ジル・スラヴ=ヴェント - ゆとシートⅡ for SW2.5 - ゆと工公式鯖

ジル・スラヴ=ヴェント

プレイヤー:ひらりん

種族
ナイトメア(リルドラケン)
年齢
19
性別
種族特徴
[異貌][弱点/風]
生まれ
操霊術士
信仰
なし
ランク
レイピア
穢れ
1
6
11
13
8
8
6
3
10
10
成長
5
成長
8
成長
4
成長
2
成長
1
成長
7
器用度
19
敏捷度
22
筋力
21
生命力
16
知力
24
精神力
30
増強
2
増強
2
増強
増強
増強
増強
器用度
3
敏捷度
4
筋力
3
生命力
2
知力
4
精神力
5
生命抵抗
9
精神抵抗
12
HP
37
MP
45
冒険者レベル
7

経験点

使用
26,500
残り
300
総計
26,800

技能

フェンサー
7
エンハンサー
5
コンジャラー
3
セージ
3
アルケミスト
3
マギテック
1
デーモンルーラー
1
ウォーリーダー
1

一般技能

料理
3
大工
2
仕立て
3
理髪・整髪
2
【不得手】乙女心
4
【不得手】甘える
5

戦闘特技

  • 《かいくぐり》
  • 《防具習熟A/非金属鎧》
  • 《マルチアクション》
  • 《防具習熟S/非金属鎧》

練技

  • 【ガゼルフット】
  • 【キャッツアイ】
  • 【マッスルベアー】
  • 【ドラゴンテイル】
  • 【ワイドウィング】

賦術

  • 【インスタントウェポン】
  • 【クリティカルレイ】
  • 【ヴォーパルウェポン】

鼓咆/陣率

  • 【鉄壁の防陣Ⅰ】

判定パッケージ

セージ技能レベル3 知識 7
アルケミスト技能レベル3 知識 7
ウォーリーダー技能レベル1 先制 5
魔物知識
7
先制力
5
制限移動
3 m
移動力
24 m
全力移動
72 m

言語

会話読文
交易共通語
ドラゴン語
妖魔語
魔法文明語
魔神語
リカント語
魔動機文明語

魔法/賦術

魔力行使/賦術
基準値
ダメージ
上昇効果
専用
コンジャラー技能レベル3 操霊魔法 7 7 +0
マギテック技能レベル1 魔動機術 5 5 +0
デーモンルーラー技能レベル1 召異魔法 5 5 +0
アルケミスト技能レベル3 賦術 7
技能・特技 必筋
上限
命中力 C値 追加D
フェンサー技能レベル7 11 10 -1 10
デーモンルーラー技能レベル1 21 4
武器 用法 必筋 命中力 威力 C値 追加D 専用 備考
サーベル 1H 10 10 10 9 10 召異加工
【脇差】八寸八分/鴉丸国綱 1H 1 10 20 9 10 白A
【天下五剣】二尺五寸八分半/鬼丸国綱 1H 1 10 30 9 10 白S
【大太刀】二尺七寸七分/光鬼国綱 1H 1 10 50 9 10 白SS
技能・特技 必筋
上限
回避力 防護点
フェンサー技能レベル7 11 11
《防具習熟S/非金属鎧》 3
防具 必筋 回避力 防護点 専用 備考
タイガーバンド 10 1 5
バックラー 1 1
合計: すべて 13 8
装飾品 専用 効果
仮面 左目を衆目にそのまま晒すよりはマシ
仮面固定用ベルト ちゃっちいけどちょっと形状が特殊な仮面固定用
マギスフィア(小) 「空いた」左目の代わり
イヤリング 左耳に下げる
チョーカー
軍師の徽章
背中 肩甲 ザクの肩パッド。防護点はない
多重ベルト 首元から腰までの装備をしっかり固定
ウェポンホルダー 多重ベルトの下の方から繋げるぞ
右手 肘手甲 肘までガード、防護点はない
組紐
疾風の腕輪 割る用
左手 肘手甲 肘までガード、防護点はない
組紐
宗匠の腕輪 割る用
絞め帯
ズボンベルト 装飾は少なめ。軍服ズボン用
アルケミーキット
ブーツ 行動力の高いジルには丈夫な靴は必需品なのだ
魔法の発動体 イヤリングに更につなげている
所持金
487 G
預金/借金
0 G / 0 G

所持品

戦闘備品
装備(未装備含む)

サーベル
タイガーバンド
バックラー
マギスフィア(小)
ウェポンホルダー
軍師の徽章
知性の指輪
宗匠の腕輪
疾風の腕輪
剛力の指輪

道具類

救命草×5
魔香草×3
マテリアルカード白
マテリアルカード赤
マテリアルカード金
魔晶石【2点】×5
魔晶石【3点】×5
アウェイクポーション×4
月光の魔符×2
魔化された樫の枝×4
黒曜石の盾(小)
天に吠える翼竜のシンボル

生活備品

冒険者セット
テント
毛布
調理道具セット

趣味嗜好品

リカント語の本
魔神語辞典

衣服類
普段着

着替えセット
普段着×3
下着×3
礼服(軍服・上下)
イヤリング
肩甲
肘手甲×2
チョーカー
組紐(太・赤)×2
絞め帯
多重ベルト
ズボンベルト
仮面固定ベルト
ブーツ

状況次第

フード付きマント×3(砂漠越えに利用)

マテリアルカード

BASSS
102
8
232
名誉点
38
ランク
レイピア

名誉アイテム

点数
冒険者ランク50
≪千年に一度の天才≫ヘルネリア/友人0
使いやすい調理道具セット0

容姿・経歴・その他メモ

容姿・出自・出典

身長187.6cm、体重75.8kg。
衣服はサイズが変わったので買いなおした。
身長と体格に対して体重が軽いのは人体実験によって削り取られた肉があるから。

出自ダイス

家族に異種族がいる
大怪我をしたことがある
かつて従者がいた

名前・見た目由来

ジル…ドイツの伝説の竜「ジルニトラ(ツィルニトラ)」より。魔法の神とされている
スラヴ=ヴェント…ジルニトラ旗を使用する軍隊、ヴェント人とその地方名、スラヴ地方より

青年期の見た目は刀剣乱舞の鬼丸国綱より。ツノ生えてる男全然いねぇよ………
合わせる形で白髪&赤目の少年を探した結果、ダンまちのベルを採用。
また、異貌化はグラブルのアバターくんより抜粋。

キャラ設定

ジルの実家

ウッドパルナに移り住んでからジルの母、トコは持ち前の器用さを生かして服飾店を開いた。現代で言うところのクリーニング屋さんみたいな感じね。
普段着からハンカチなんかの小物、礼服に下着、非金属鎧や革製武具まで補修するって感じの仕事。
だから結構女性モノの下着とかも見慣れちゃってて結構そこらへんのリアクションは達観した感じになってる。けど別に性欲とかないわけじゃなくて、単純に恥じらいや後ろめたさ、あと衣服への興味がないだけっていう認識。
…いや、言っとくけど裸はあかんよ。流石にね。思春期の男の子だし。

ジルの能力

元々はモイネロに色々魔法のことを教えてもらいつつ、魔法拡大/数の習得に至っていたジル。
しかし、度重なる人体実験のショックや実戦から5年離れていた点。なにより、手加減されていたとはいえオージアスの最大火力をまともに浴びたこと。それによって家族と離れ離れになり、仲間を守りきれなかった自責の念。これらが精神的障害となり魔法拡大/数を含めた攻撃魔法、範囲魔法を使用できない。

その代わりとして、この5年で手に入れたのは村の外の見識。特に高価な武器や防具をみた時に思い出したのは母の仕事場に立つ姿だった。あの時は流し見していた母の細かな技術はこういったものに使われており、それがなんと高い技術であったことか今なら理解できる。
こうしてジルは防具/非金属鎧への見識を深めていった。

異貌化について

幼き頃の母との旅路を経て、ジルは基本的にナイトメアであることをひた隠しにするようにしていた。とはいえ角の存在自体を隠し通すこともできず、普段は「一応リルドラケン」と自己紹介することにしている。「…嘘は言ってねぇ。嘘は」
異貌の姿になることも勿論できるが、その姿は竜には程遠い。どちらかと言えば奈落の底に棲む悪魔のように邪悪に変化してしまうのだった。
予めこの姿を密かに確認していたジルは「こんな姿、誰にも見せられない」とこの能力を有用なものと理解しつつも、どれだけ窮地に立たされようと人前でこの姿になることを自ら禁じてきた。

彼がこれを他人の眼前に晒すことに決心をつけるのはいつになるだろうか。この姿を見せてもいいような関係の人物の前か、はたまた全てを投げ打ってでも成し遂げたい何かがある時か………
恐らく本人は生涯その姿を見せる機会に恵まれないことこそ、真に望むのだろう。

ゲームシステム上は「異貌化+ドラゴンテイル+ワイドウイング」が必ず1セットで使用される

殺意

荒っぽい粗雑な喋り方からそんなイメージは持たれづらいが、意外と心底怒ることは少ない。…なくはない、なくは。

ビルド

自バフ盛り盛りフェンサー。
攻撃面。インスタントウエポンで必筋問題を解決。固定値が低い点はマルアクによる自バフ魔法でカバー。後に覚える変幻自在と必殺攻撃、かいくぐりにクリレイで爆発力を兼ね備える。
命中力はタゲサとキャッツアイにてシンプルに強化。
防護面は防具習熟、自バフ魔法でファイター並みの防護点を確保。かつ、非金属鎧特有の回避強化とガゼルフット。
因みに魔法は必筋10以上の非金属防具なので達成値-4。攻撃魔法しないけどね。

ということでほぼ毎ターン以下手順が発生。
①補助動作にてアルケミ技能投げ
②主動作にて自己バフ、シャドウステップ宣言
③変幻マルアク利用から主動作追加、武器攻撃
④変幻自在で必殺攻撃宣言

ただし、特技枠めちゃくちゃ圧迫してる上にいろんな種類の技能が必要なのでフェンサー以外は全然レベルあがらない。5以上取るサブ技能もめちゃくちゃ珍しい気がする。あとそのうちMPの枯渇がやばくなりそう。
今後は
①必殺攻撃・変幻自在修得による爆発力強化
②バクメ、ヴォーパルウエポン修得で自バフ能力追加
③ウォーリーダー伸ばして鼓咆による自バフ追加(物理ダメか回避の2択。多分回避にする)
④マギテック3~4修得
⑤アルケミ5でマナスプラウト修得。MP問題を解決
⑥シャドウステップ修得による回避試行回数の増加
⑦防具の達人修得による装備増強
この辺が目標。因みにフレーバー的にはファイアブレスが欲しい。

よって伸ばしたい能力値は
精神>>>器用&敏捷>生命・筋力>>>>>知力
的な感じ。いっぱい魔法唱えます。

あと名誉点は冒険者ランクにぶっこみます。ヘヘ。

既知の人物
パーティ
アンジェリカ

幼馴染その1。ルーンフォークで年齢は一個下。アンジェリカは言いづらいのでアンジュと呼ぶことにした。
見た目も可愛らしいし、ノリも合うし、なにより気立てよく勤勉なところが抜群に気に入っている。ジルにとってはいい悪友というか、数少ない信頼のおける友人。「おまえ最高だぜ!」って言われたら「俺も愛してるぜ!」って程度の軽口が返せたり、調べ物をする時には膝の上に乗せたり、同じベッドで寝れたりとジルからの距離感はまあまあバグっている。
不安な点は2つ。アンジェリカの職業病なのかもしれないが、金遣いが荒いところ。そして生来のものなのだろうが、周りの目に無頓着なところ。この2つは純粋に心配している。「こんなんでこいつは嫁の貰い手ができるんだろうか…?」みたいな気持ち。親かな…?

或る宿屋

…なんだ。静かになったと思ったら二人とも寝たのか…
やれやれ、いつまでも中身はガキのまんまだぜこいつらはほんとに。
あ?なんだこりゃ…カタログか?
ほぉー、武器に装飾品に…冒険一色で色気のねぇやつだな全く…
ったく、ちょっと普通にしてりゃ男なんて選り取り見取りだろうになんだってこう…
しっかしあっちもこっちも物の見事に高価なモンばっかだな
…お前の金銭感覚で買えるわけねぇだろ、ばぁか。しょうがねぇな

ところでこのバレットシャワーっつぅのはどういうもんなんだ…
はぁ、またバレねぇように本でも買ってくるか…

グローリア

幼馴染その2。リカントでこっちも年齢は一個下。
基本的にアホでとにかく手のかかる面倒な部分もあるが、単純な戦闘能力の高さと見た目の壮麗さ、髪や毛の手触りをジルはとても気に入っている。
グローリアが失敗すれば文字通りケツを引っ叩けるし、手が空けばグローリアの髪やら毛並みやらで遊んでるし、勿論こっちの幼馴染とも同じベッドで寝れる。ジルはこことの距離感もバグってる。
叩けば音の鳴るおもちゃのような扱いをしているが、実は誰よりグローリアの都合や心境を優先して行動している。面倒事も大体引き受けるし、身の回りの世話もするし、不都合が無いように色々と手筈を整える。だって心配だろ!!絶対言わないけど。

クラース

うっかり旅の道連れとなった妖精使いの男性。人間で年齢は何と11個上。
当初は依頼人と請負人という一種ビジネスライクの関係だったため、ジルもあまり深く素性を探ろうとはしなかったし肩入れもしていなかった。なんなら意図的に心理的壁を作るようにしていた。どこから追っ手に情報が洩れるかわからないしね。
ともに行動をするうちにその観察眼と研究へのあくなき探求心、そして穏やかな人柄をジルは個人的に尊敬の念を抱いている。だからこそ、現状の自分たちの旅へ付き合わせてしまっていることに対する罪悪感は日に日に増えている。隠すようにはしているが。なので道中はジルの中でも1、2を争うVIP待遇を心掛けている。

ウッドパルナの住人

母・トコ・スラヴ=ヴェント
冒険者・モイネロ
冒険者・ラミレス

食堂のおばちゃん

ウッドパルナの中心地、冒険者。ギルドの斜向かいに店を構える。
ジルは殆どの料理、調理法をこのおばちゃんから学んだ。

冒険者ギルドのマスター
受付嬢
医者のじいちゃん

道中
相棒・ヨルゲン

ジルと共にオージアスの研究施設に幽閉されていた青年。胡散臭さは(恐らく)自他共に認めるところだが、ジルは完全に慣れきっている。
いい雰囲気の時とダメな雰囲気の時では、ジル曰く歯切れの良し悪しが違うらしい。周りで聞いてる分には全く判断がつかない。

錬金術師・ヘルネリア

キャサーウッドの大森林にアトリエを構える研究者。
見た目は幼い少女だが、レプラカーンという種族に依るものだろうか。その見た目に引っ張られてか、ジルはちょっと歳の離れた妹のような印象を持っている。
この少女に頼まれたらぶつくさ言いながらも願いを聞いてやることになるんだろう…割とジルは女子供に甘い。

錬金術師の弟子・ロラン

ヘルネリアの弟子。
行方不明、恐らくは死亡と考えられていたがなんやかんや生きて帰ってきた。1発目の挨拶がとても丁寧で明るかったことから、ジルはまあまあ好印象を抱いている。

盲目の奏者・メイリィ

召使・ソマーズ

ジル曰く「モブ顔野郎」。
「こういうのに限ってごちゃごちゃと一丁前に指示しようとしてきやがる。相手したくねぇよ、かったりぃ………」
………第一印象が悪かったのか、だいぶ苦手意識があるようだ。

ハウスルール

~コネクション~
・千年に一度の天才《ヘルネリア》/友人
「このコネクションを持つ者でマテリアルカードを購入する場合、通常価格から3割引いた価格で購入することができる。このコネクションは、GMからの許可が降りた時のみに使用できる

履歴

第零章 其の背中、黙し語らず
過去、体と心、傷と傷

トコ・スラヴ=ヴェントの一人息子、ジルはナイトメア種として生を受けた。
ナイトメア種といえば存在そのものが穢れたものとされ、ジルにおいても奇異の目は例外ではなかった。乳吞児とその母親に、世界は冷たかった。街を歩けば襲い来る奇異の視線、理不尽、暴言、暴力───────
人々が最も残酷になるのは悪に染まった時ではない。己を正義と過信した時である。
言葉も満足に紡げぬ赤子にさえ"正義"が首を高く擡げた。

「このような角を持つからまともではない。この俺が『穢れ』を取り除いてくれる」

………結果のみを語る。この一件でジルの右角と右耳の聴覚は永遠に失われた。
人々の「興味」そのものから逃げるように。トコは街を転々とするようになった。
ボロボロの衣服、母と幼き子、リルドラケン種と人間のハーフ、ナイトメア。このような様相であれば数日ですぐさま噂になる。噂になれば顔を覚えられる、覚えられれば危険が及ぶ、そうなる前に次の都市へ移動する。
悪循環であった。幾重もの冷遇に親子の心身は荒野と化した。

こんな生活を続けてどれほどの時間が経ったか。
ジルがようやく言葉を操り、自身の姿を隠しながら過ごすことに必要性を見出した頃。小刀を操り、暴力の与え方を覚え始めた頃。
親子が辿り着いたのは「ウッドパルナ」。

強者、夢の跡

《竜人》リルドラケン。
現在もその血は薄れる事無く、過去から現代に至るまで『最強の種族』の称号を欲しいままにする。
しかし、そんな彼らも常勝無敗かと聞かれたらそうではない。リルドラケンの住む国も長い歴史の中で堕ちることはある。

近しい歴史の中で滅んだ国といえば【洽覧深識、智泉ノ如】(こうらんしんしき ちせんのごとし)『ミネルティス』が挙げられる。
この国が滅んだのは精々が十数年前。また、城下町に入るための扉、建物、空、地面が深い茨で覆われている。詳しい調査が進んでおらず、難航しているのが現実だ。生き残ったものはいるのだろうか…


真実はいまだ世界でたった一人の女性の胸、奥深くで固く扉を閉ざしている。その事すら知るものはいない。
たった一人、トコ・スラヴ=ヴェントだけが。

温かな記憶、血と誇り

トコ・エレウサは人間の生まれである。
彼女の伴侶はミネルティスの士兵団長アレス・スラヴ=ヴェント、リルドラケン種だ。ミネルティス現国王の腹違いの兄にあたる。
男らしく、酒と夕焼けを好んだ。戦いを愛し、家族を愛し、国を愛する。同様に才能に愛され、妻に愛され、民に愛された。
弱者を助け、強きを挫き。或る時は国の矛となり、また或る時は国の盾となった。彼に実現出来ないことはなかった。

そんなアレスとトコの間にできたのはナイトメア種であった。忌み嫌われ、捨てられ、悲惨な人生を送ることこそ世の常である。
しかし意外にも、本人たちも周囲も好意的、前向きであった。
リルドラケン種にとってナイトメアは忌み子ではないが、人間にとっては認識が異なる。それでも道行く誰しもがこの第一子の誕生を祝福するのは(ひとえ)にアレスの、そしてトコの人望ゆえであろう。
「アレス様の御子である!ナイトメアがなんだ、必ずや素晴らしい人物になるに決まっている!」



────大きなベット。たくさんの人たちがこちらを囲んでいる。母の腕の感触。

───────そして、自分よりもずっと大きい角の生えた頭部の影が覗き込む。

ジルが覚えているのはこれだけだ。

第壱章 歩幅、未だ幼く
すべての始まり

郊外の小さな村『ウッドパルナ』。大通りから1本外れた道の3件目に母と居を構えるのはジル・スラヴ=ヴェント。
彼の日々の信条といえば「この村のシンボルであること」。
見た目だけでなく、心だけでなく、言葉だけでなく、態度だけでなく。
その姿正しく、全身全霊をもって村の人々へ奉公する姿があちこちで目撃される。
文武両道、力は強く勤勉であり。烈士徇名、口は悪いが仁義に厚く。志操堅固、飄々としているがどこか芯がある。
いまこの村において彼のことを悪く思う者はこの村に一人もいない。この村が世間から疎いのではない。村人たちの優しさが彼を救い、その優しさに彼がまた応えるのだ。そうして村のためだけに疲れ果てるまで駆け回る毎日をジルはとても誇りに思っている。

彼の仕事といえば家事育児やお使い、ペットの世話に街角医者の問診の手伝い、店番や弁当の配達に品物の仕入れ、御用聞きから低級モンスター退治まで。枚挙に暇が無い。
そんなジルはある日、ウッドパルナの目と鼻の先にある森へやってきた。
今日の仕事は冒険者ギルドへ薬草を納品する。ギルドといっても大した規模のものじゃないが、この村の安全を守る上での要の機関だ。この仕事は最重要である。
定期的にあるこの仕事ではウッドパルナを囲む森、これを時計回りに巡ることで採れる薬草の数を安定させてきた。今日は東側からスタートするのがよいだろう。

袋を抱えて薬草を摘むジルの目に飛び込んできたのは、数十メートル先の普段とは違う景色。そういえば、あれが最近出現したと噂の洞窟ではないか。未調査と聞いていたジルはてっきりもっと遠方への出現を想定していた。
普段とは違う景色がもう一つ。見かけない年端も行かぬ少女が二人(一体と一匹?)、洞窟の中へ侵入していった。
嘆息した。明らかに冒険、いや野外活動の初心者だ。自身も玄人とは言わないが、かといって洞窟へ挑むにあたって何の警戒心もなく飛び込んでいくものがあるものか。
ここまでならまだ嘆息することもない。聞く話なら「クソガキ2名が冒険ごっこの途中でくたばった」程度の愚かで馬鹿な子供の話として聞ける。問題は"ジルがその様子を事前に知ってしまったこと"だ。ここで踵を返すなら、ジルが敢えて彼女らを見捨てたことになる。
母が日頃から口にするヴェント家の家訓を思い出す。「世界の端まで尾を伸ばせ」。父方がリルドラケンならではの比喩表現だが、要は救えるものは全部救って来いという話なんだそうだ。これを破らなければならない理由がなかった。大急ぎで彼女らの後を追い、洞窟に入った。

結局追いつけたのは洞窟を大分進んでからだった。
ジルがようやく少女二人を見つけた時、彼女らは既にダガーフットの群れと戦闘にならんとしていた。
冷静に観察する。ダガーフットが2体。ルーンフォークの少女が銃を構え、リカントの少女は剣を構える。特筆して、ルーンフォークの少女の装備が薄い点、リカントの少女の剣はその体躯よりも大きい点に目を付けた。大振りを安定して敵に当てるにはそれなりの筋力や体力が必要なはず。もしくはチーム単位で隙を作り、剣の導線へ敵を誘導する必要がある。あの二人ではそれは実現困難だろう。となると時点で予想される場面はその大振りが外れた時の反撃。これをあの少女2人で耐える、もしくは避ける技術や装備があるように思えなかった。勝てることは勝てるであろうが、同時に苦戦が容易に想像できる………是非もなし。短剣を構え、ノータイムで割って入る。

戦闘は難なく終了した。
ルーンフォークの少女はアンジェリカと名乗った。髪はボサボサ、言葉遣いも仕草も野生児そのものといった感じだが…素の見た目は、うん。悪くない。めかしこんで黙って立ってればどこかのご令嬢と言われてもあまり驚かない。「気立てはいいんだがな。周りの目を気にしなさ過ぎなんだあいつは…」と彼も少々呆れた様子で語る。
一方リカントの少女は怪我の痛みで涙目になっている。只管(ひたすら)にやかましい。が、こちらは見た目が超一級品だ。10人が10人、彼女を見て美少女と評価するだろう。彼自身は「まぁ、中身も超一級品のバカだったがね!」とケラケラ笑っていたが。

リカントの少女は1発もらっていたが、ジルに言わせれば「言わんこっちゃない」だろう。冒険初めましてでいきなり来るようなところじゃない。なんとか引き返すよう説得はしたが、二人の少女は聞く耳持たない。後にジルは「都合のいいことしか聞こえねぇなんて、随分不便な体をしてるんだなと思ったね」と盛大に皮肉った。
乗り掛かった舟。二人の少女のようにダンジョンの宝になど興味はないが、単純に「怪我や死を目の前に、この二人を放って帰る」という選択肢をとらねばならない理由がなかった。本人曰く、「あの時ばかりは生まれを呪ったね」。

ダンジョン内を隈なく連れ回された。戦闘は先ほどのものを含めて計3回。コボルド2体、ダガーフット2体を従えたボルグ1体。ボルグの存在は彼にとっても衝撃的であったが、かといってジルに引く理由はなかった。こんなものが村の徒歩圏内にいる。見た瞬間から「放っておかない、必ずここで討伐していく」とそう決めた。
ボルグ戦は少しばかり苦戦した。リカントの少女はやはり戦いについてこれていなかった。「まぁ最初(ハナ)から期待しちゃいなかったさ」といつもの通り飄々と語った。本気で自分一人で処理するつもりだったのだろう。
剣と魔法を駆使して各個撃破、後ろに敵を通さず、自身は攻撃を避け続けながら撃破していった。モンスターの完全討伐後、リカントの少女にはアウェイクンポーションと救命草で応急処置を施しておいた。少女もすぐに目を覚まし、命に別状はないだろうことが窺えた。

そしてやはり、と言うべきか。彼女らは冒険の素人だった。倒したモンスターの所持品すら漁ろうとしない。特にリカントの少女は冒険に対してかなり夢見がちだったようで、そうして冒険者が日銭を稼ぐという現実に少し落胆していたようだ。
ところが、今回はその現実こそが裏切られる。驚くべきことにこの程度の低級モンスターたちが大量に宝を抱え込んでいた。少女二人は跳び上がって喜んでいた。
見つけてしまったものは致し方ない。この宝石は鑑定に出し、その金額を全員で山分けするということで話の決着はついた。「俺はこの時の”公平に山分け"ってのは、当時どうも釈然としなかったがね」と今でも苦笑いをする。

そうして宝石を抱えて帰路につかんとする一行が振り向いた先。今通ってきたばかりの道に大きな扉が忽然と現れた。
そんな事象も、この扉そのものも。見たことも聞いたこともない。困惑している間に反応が一歩遅れた。リカントの少女が一足先に扉を開け放ってしまったのだ。
扉が開いたその先、今までの様相とは一線を画す遺跡が広がっていた。そこらじゅうの柱には見たこともない文字が記されており、一行では誰一人知識のない文字であった。書かれている意味は分からない。
遺跡の奥にはもう一つ扉が佇んでいた。だがこちらの扉はと言えば押せども引けどもびくともしない。「進めないのであれば居ても仕方ない」と少女たちは納得したのか、ここで改めて帰路に付くこととなった。「あの時は俺ぁ神紀文明語で書いてあると思ってたな。あの言語は紙じゃなく、石碑に文字を記す文化がある」と当時を振り返った。

村にたどり着いた矢先、ジルはすぐに冒険者ギルド、そのギルドマスターへ洞窟内での詳細を事細かに報告した。
ギルドマスター曰く、後日正式に調査隊を派遣するそうだ。ジルは胸をなでおろした。あとは任せておけば細かい露払いもやってくれるはずだ、村への危険性はなくなったといえる。
また、ジルは洞窟に入る前とは打って変わって上機嫌であった。なにせ、さりげなく旅人二人の滞在を誘導したのだ。宝石の鑑定にしたってわざわざこの村でやらせたのだ。つまりこの二人、急に大金を得た上にこの村にとどまる理由ができた。1Gでも多くこの村に貢献してもらわねば、真にこの二人の冒険者ごっこに付き合った意味がないというものだ。
しかも元々の目的であった薬草取りまで手伝わせ、作業効率はいつもの3倍。転んでもただでは起きてやらない精神だ。特にリカントの少女はとても扱いやすい。ここはなるべくいい飯と宿で、少しでも調子づかせておこう。

今日この日もまた、村のために粉骨砕身した時間を送った。ジルは誇らしい気持ちのまま床についた。

希望と絶望、そして

あれから何日かが過ぎた。以来、ルーンフォークの少女「アンジェリカ」とリカントの少女「グローリア」は冒険者ギルドに滞在していた。ジルは二人を多少気にかけてはいたものの、村のあちこちを行ったり来たり。概ねの変化はなく村中を駆け巡っていた。

多少変わった点と言えば。アンジェリカは意外とジルと馬が合った。食事の趣味や着眼点、それにいい意味で年頃の少女とは思えない粗雑な話し方。単純に集団生活や常識というものに対しての理解がないだけであって、一度教えてしまえばしっかり覚える。洞窟になんの警戒心もなく入っていった時と比較して、ジルは彼女の評価を大きく改めた。
一方グローリアはというと。ジルにとっては非常にからかいがいのある玩具へと進化を遂げた。精神年齢が幼く、成人直前だというのにキャンディ一つで機嫌を直すその単純さ。突けば必ず反応が返ってくる仕掛け絵本のような行動パターン。暇つぶしにはもってこいだった。少し手が空けば必ずグローリアをからかって帰った。

ある日、3人はギルドマスターに呼び出される。
要件は二つ。一つは先日鑑定に出した宝石が金銭となって戻ってきた。しかも高い利率で売れ、更に追加で報酬をもらってしまった。少女二人は特に大喜びだった。ジルは二人を茶化す反面、内心明日は槍が降るかのような得も言われぬ不安に駆られるのだった。
もう一方の要件とは(くだん)の洞窟についてだった。聞けば、先日ジルが報告内容に盛り込んだ「洞窟に突如現れた扉」。これがどうしても出現しないそうだ。ギルドとしてはジル、アンジェリカ、そしてグローリアの3名が調査に同行することで出現条件を満たすのではないかと考えた。ついては調査の同行を承諾してほしいとのことであった。3人は快くその「お使い」を承諾した。

翌日、3人は早速調査に出かけた。これに同行するのはウッドパルナの主力、モイネロとラミレスの二人だ。ジルはそうでもないが、アンジェリカとグローリアはこの二人の飲んだくれた姿しか見ていない。若干不安そうな顔をしていた。
ともあれ、洞窟内の再調査が開始された。ジルは当時の行動をモイネロとラミレスに説明しながら調査を進めていった。
洞窟の最深部、かつてボルグを討伐し、宝石を手に入れた場所。当時の状況としてはただ一行が振り返っただけだが、今回はまったく扉が現れる様子がない。
モイネロに(いざな)われ、最深部入り口付近をジルがうろうろしていると。あの日のようにまた扉は唐突にその姿を現した。ところが、モイネロとラミレスが扉へ近づき開けようとするも、その体ごと扉を通り抜けてしまう。彼ら二人は扉そのものに一切触れることができなかった。
我慢できずうずうずしていたグローリアを見て、ジルはグローリアに扉を開けさせた。これも当時と同じように扉は難なく開いた。「当時の俺にはこの条件がわからなかった。俺たち3人の共通項とギルドの大人たちの違いとかを考えていたからな」と証言した。如何にこのジルという男が幼少期から高い能力を有していたとはいえ、当てが外れることもあったようだ。

その先の遺跡の景色も、何も変化がなかった。また、モイネロとラミレスは扉に触れられないだけで開いている扉の通過は可能なようであった。「扉のみに施された仕掛け」というのがまた、ジルの思考を混乱させていた。「何故?何のために?これを仮説付けることすら当時の俺にはできるもんじゃなかった」
また、この柱。この柱に書かれた文字はモイネロの見立てだと魔神語か魔動機文明語であろうとのことだった。ジルは即座にその二つなら魔神語を推した。ルーンフォークであるアンジェリカが読めない文字であるため、魔動機文明語ではないという消去法だ。そもそも魔神語であるという根拠はジルにはわかっていないわけだが。
次いで、以前は開かなかった遺跡の扉。ここはやはり大人の腕力や知識でも開かず、グローリアやアンジェリカでも開くことはなかった。最後にダメで元々とジルが扉に触れたその瞬間。扉はゆっくりとその先の景色を映した。
何よりもジル本人が一番困惑した。そういえばこの遺跡に入る際の扉も自分がうろついて出現した。グローリアやアンジェリカは何もしていない。この場所に至るまでの切欠は、なんだというんだ?…わからないことだらけだった。

部屋の中は明かりが灯されていた。しかし、この光源は中に火種が見えない。ジルとモイネロ、ラミレスの意見は「魔法によって動いているもの=人工物であり、動かしている人物の出入りのある場所」として見解は一致した。瞬間、周囲の警戒を強める。

それは上にあった。頭上からこちらを目掛けて襲い来るのは『魔神:ナズラック』であった。元来は奈落に生息し、そこから行動範囲を移すことは殆どないはずの魔神だ。この場所は普通ではない………ジルは人知れず焦燥感を覚えていた。
モイネロ、ラミレスの助けもあってナズラックは概ね無事に討伐された。止めにジルが放った魔法(スパーク)はグローリアを諸共にナズラックを屠ったのだが…ジルはナズラックのせいにして誤魔化した。「いつもあっさり誤魔化されるんだ、あいつはアホだからな」と愉快そうに笑う。
弁明としてはモイネロの回復力をあてにし、グローリアは後で回復させればいい。一時的なものを含めても大怪我には至らないと見込んでの巻添えだったそうだが………時折ふざけの過ぎる彼だ。どこまで信用するかは読者諸兄に判断を委ねるとしよう。

倒した直後、部屋に響き渡る拍手。大きなシルクハットを被った男が現れた。男は名を「オージアス」と名乗り、ジルのみを「ジル様」と敬称した。もちろんジルとこのオージアスという男、この時が初対面であった。
オージアスは流石ジル様とその御友人、と称賛する。その上で、魔王復活にあたりジルの潜在的・将来的な能力を目的として、正面切って誘拐に来たというのだ。
勿論黙っている大人たちではない。珍しく動揺を隠せないジルより一手早く、モイネロとラミレスは動き出した。ところが片腕を一つ振っただけで吹き飛ばされる。単純な筋力ではなく、魔術の様子があった。恐らく、技量としては二人の天高く上にあるのであろうことは容易に想像できた。程なくして二人は意識はあるものの、指一本動かせなくなった。
このまま逃げ帰ることはできない。なんとか追い払う程度までは奮闘しなければ必ず犠牲者を出す。ジルは直感した。

幸か不幸か、アンジェリカとグローリアもやる気だった。何合か打ち合う。ジルはこの相手には勝ち目がないことをすぐに悟った。次点として「グローリアとアンジェリカが大人二人を抱えて村に戻る」ことを思案した次の瞬間、強大な炎が視界を覆った。
アンジェリカ、グローリア、そしてジルは敢えて生かされたまま。このオージアスに連れ去られることになる。
ここから数年間。ジルにとっては2度目の、2人の少女らにとっては人生で初めて。
最も辛い日々が彼らの未来へと。重厚に、闇夜よりも深く暗く、ゆったりと。そのカーテンを下ろした。

第弐章 広き世界、小さき灯火
夜更け、星は見えず

───あれから5年の月日が経った。
オージアス曰く「器の覚醒」のため、ジルはこれまで一日も欠かさず人体実験の被験体(モルモット)であり続けた。
一般的な能力テストも勿論存在したが、中には非人道的な実験も存在した。
薬物、魔法、金属、落下、水没、寒暖など…あらゆる極限状態においての耐久テストや脳波を強制的に呼び起こす電気信号による実験、姿形を強制的に変えて能力の増強を目指す合成獣(キメラ)化、逆に被験体の細胞を用いて能力を引き継ぐクローン実験。
「どの過程でどういったことで」というのは察する他ないが、結果として彼はこの5年で左目と一部の筋組織を失ってしまった。本人曰く「なんだか知らんが勝手が変わっちまったんだ」と語った。恐らくはこの際、魔法に利用する組織系統も損傷してしまったのだろう。
しかし、異常なほど彼はオージアス一派に従順であり続けた。或る時オージアスの囁いた「ご一緒の彼女たちもとても頑張ってくれると思いますよ?」の一言で、彼は脅迫内容の全てを察した。彼は驚くほど速く、自身の犠牲を選んだ。
この施設内にいる、恐らくある程度の身の安全は保障される、ただし自身の態度如何ではそうもならない──────
当時の彼にとって迷う余地はなかったようだ。

この5年で変わったことと言えば。ジルには友好関係が一つだけできていた。
この世の獄中、とも言えるこの地にはにはヨルゲンという青年がいた。底抜けに明るく、腕が立ち、潜在能力も高い。聞けば「ジルの前に器の覚醒を目指されていたもの」だそうだ。
優しさからか、同情からか、共感からか。はたまた何か目的があってかはわからない。しかし、日々満身創痍であるジルにヨルゲンはとてもよくしてくれていた。ヨルゲンはジルに全てを語らず、ジルもまた必要以上に聞かず、その逆もまた然り。いつしか彼らは尊重し、信頼し合い、お互いを「相棒」と呼び合うようになっていた。
もう一つ。オージアスのジルを見る目が変わっていた。もう少し正確に言えば、ヨルゲンやジルを通して「この人体実験で器の覚醒に成果があるのか」ということに疑問を持つようになったようだ。オージアスはしばしば拠点を留守にするようになった。
それでもジルが大人しくしていたのは、やはり彼女らのことを気にかけたのだろう。元々誰にだって面倒見の良い彼ではあるが、かの少女2人には特別肩入れするような節がある。

そういった、5年であった。壇上は再び幕を開く。

新たなる夜明け

ジルが人体実験を日常にしてから幾年月、或る日のことである。
オージアスの不在を見計って、ヨルゲンに脱出の話を持ちかけられたジル。無論、人質をとられた彼にとって脱出の選択肢はない。ノータイムで断ったが、この時ばかりは珍しくヨルゲンが食い下がった。しかも、どこから仕入れたのやら…アンジェリカとグローリアの同時脱出になるというのであった。
ジルが疑問を口にするのとほぼ同時。拠点内に警報が鳴り響いた。…ジルに最早、断り文句は見つからなかった。痛みに叫ぶ体を引き摺りながら拠点を駆けた。

その道中。およそこの施設にいるには余りにそぐわない2人の美女と鉢合わせする。取り急ぎ敵意はないようだが、余りに景観から浮いた姿に思考が止まってしまった。
長年辛きを共にした相棒の顔を見る。何やら思うところがあるらしい、ニコニコ(ニヤニヤ)している。
こんな時に何を勿体ぶるのかと苛立つが「君もよく知る子たちだよ?」と笑顔を解かない。ジルにはこうなった時の彼を動かそうとして一度も出来た試しはない。致し方なく、改めて美女2人組を注視した。
長身の美女を見る。種族はリカントだろうか、長い髪が美しく、プロポーションは完璧。鉢合わせしたのが拠点(ここ)でなければ、どこぞの貴族令嬢かと見紛うほどであった。
小柄な美女に目を向ける。こちらの種族はルーンフォークと思われ、髪が肩下まで伸び、理知的で整った顔立ちだ。身に付けた装飾品は古ぼけたものが多いが、それが一層、誰かに幼い頃から大事に使われてきた高価な人形のような、ある種完成された可愛らしさを感じる。
そういえば、幼い頃…。ここでハッとする。自身が幼い頃、この小柄な美女を自分は見たことがある…ような………?
勝手ながら小柄な少女の髪を首元で絞る。これは………
「アンジュ…………か………?」
思わず口をついて出た名詞は、己を犠牲にし続けた理由の一つ(アンジェリカ)だった。…ということは。その隣にいるリカントの美女はもしかして。いやいや、あの頃の姿とは大きく異なっている。確認しなければ。
「…………お手」
剣を構えられた。次いで、すぐさま飴を与えてみたら即刻噛み砕いていた。間違いない、もう一つの理由(グローリア)だ。この辺りでヨルゲンはこれらのやり取りに遂に耐えきれなくなったらしい、非常事態だというのに声を上げて笑い出していた。「全く腹立たしい野郎だ!人が真面目に確認してたっつーのによ!」とこの時のエピソードをジルは未だに憤る。…彼には悪いが、筆者もこの確認方法には口角の上がりを禁じ得ない。

ここからは4人で施設脱出を図ることとなった。
しかし、ジルの体調は思わしくなかった。全力で道中を進んだつもりだが、思うように身体を動かせない。特に右足、つい先の実験で腱を傷つけたからだろうか……どうにもこうにも、地面から微塵も浮かなかった。
誤魔化しながら、隠しながら道中を進む。恐らく、ヨルゲンは敢えてその様子に口を出さなかった。「あいつはそういう矜恃の部分で妙に気を使える男だよ」と、なんでもないように肩を竦める。
しかし、目敏い人物は他にもいた。なるべく隠したい相手のアンジェリカにも悟られてしまったのだ。格好悪いところを勘付かれてしまったジルだが、アンジェリカもまた意外にも彼の意思を汲んだ。「5年の間に何があったやら知らんが、随分気立てのいい女になったもんさ」…こういう話の時に彼は決まって、何故か得意げにニヤリと語る。

また、オージアスはある程度この脱出劇を予期していたようだ。無理もない、他でもない自身が拠点を空けるのだから。つまりは当然のこと、道中で魔動機や魔物との戦闘になった。ここでもジルは不調を抑え込みきれなかったようだ…何度か生死の狭間を彷徨ったようである。
道中で気にかかったことは2点。
一つは彼の相棒、ヨルゲンの探し出した書物「魔神黄道十二宮」である。曰く、伝説の武具についての記載が魔動機文明語と魔神語を用いて記されているようだ。当時の彼にはさっぱり理解が及ばなかった。
もう一つはグローリアだ。戦闘中に彼女の獣変貌を初めて目の当たりにした。彼は一切語らないが、彼女と意思疎通が取れなくなることに非常にやきもきしたようである。「だってそうだろ?不便なだけじゃねぇか!」…果たしてこの言い分がどの程度、彼の心を語っているのやら。

魔動機、魔物を撃退した彼らは長い洞窟(旧文明に使用されていた通路だったそうだ)をひた走り。遂にはとある森の最中へ踊り出した。他3人は幽閉されていた施設を脱出できた達成感、伝説の武具を求める旅への高揚感に大はしゃぎだった。特に相棒ときたら「さあ行こう、僕らの旅はこれから始まるんだ!」だのと抜かす。アンジェリカもグローリアも、ジルの過去の記憶の中と同じ瞳の輝きを取り戻していた。
一方、彼はといえば。その場に座り込んで、頭を抱えて溜息ばかりだった。それもその筈、ジルはただ故郷へと帰りたいだけなのだ。それなのに何だってそんな冒険に付き合わされなきゃならないのか。しかし単身ウッドパルナを目指そうにも、ここはどこでどのくらい故郷から離れた場所なのか見当もつかない。それに主張こそしないが、少女2人をこのままここに放り投げて行くことになれば、これまでの5年間は何だったことになるのか。

どれだけ考えても冒険に付き合う他ないのが目に見えていたからこそ、ジルは嘆息するのだ。
「はぁ…………いつまでこの"冒険ごっこ"は続くんだかね…………………」

第参章 神秘の力、共に在る者
逃亡戦線、開始位置(セカンド・スタート・ライン)

施設を抜け、森を進んで数時間。
夕刻には麓の町、クレージュへ辿り着いたジル一行であった。相棒(ヨルゲン)曰く、本日はここで宿泊とのことだ。
わかったわかった、と手際良く宿の手配を進めるジル。竹馬の友、阿吽の呼吸というものをこの頃からやり取りの節々に感じるところである。
ついでに、ということでジルのたっての希望により冒険者ギルドと本屋へと赴いた。おなかすいただの武器が見たいだのやかましい少女二人をなんとか(食事で釣りながら)引き摺り、冒険者登録をした。本屋は兎も角、冒険者ギルドでの所用はジルにとって必須だった。路銀は必要だし、なにより身元証明にもなる。今後もしばらくは帰れなかったとしても、冒険者として有名になれば自分の地元や肉親にも安否のほどを届けることができるかもしれない。こいつらの家族だってきっと……と、そこまでは相変わらず彼は伝えないわけだが。

冒険者ギルドでの進展はもう一つ。たまたま依頼が2つ貼り出されていたのだ。
彼としては少しばかり思案したものの、常人の感覚からするとほぼノータイムで依頼受領の意思表示をした。どっちみちここで少し稼ぎを入れなければならないのだ。ならば早い方がいい。
ひとつは馬車で数時間先の「キャサーウッドの大森林」にて最深部の調査のための護衛任務。もうひとつはその大森林にアトリエを構える「ヘルネリア」なる人物の手伝いだった。
しかも一つ目の依頼主は、この冒険者ギルドで依頼者を待っていたそうだ。受付嬢は併設されている酒場の隅にでかい帽子と奇妙な刺青の目立つ男を名を紹介した。男は名を「クラーク」と名乗り、ジルも連れ立っている少女二人を交えて自己紹介を済ませる。早速打ち合わせを…と話し始めたジルだが、どうも思ったように話が運ばれない。少し訝しんでいたジルだったが、すぐに合点がいった。
「この男はこちらの技量を信用していない」
なら話は別だ、と言わんばかりにジルは攻撃的に話の舵を切った。ここで破談してもかまわないくらいの考えだったのだろう。そもそも人情気質の強いジルには年齢や様相のみで話を進める態度が全く気に入らない。なによりも怒ったのは、自身の後ろをみて「若いな」の一言。見た目だけで二人の実力を推し量ったからだろう。この時のジルはなるべく態度にこそ出さなかったが、内心発火寸前まで至っていたと筆者は推測する。
結果からすると、クラースは納得した。ひりついた様な空気が流れた場面もあったが、とりあえずは依頼受領までこぎつけた。2つの依頼の同時並行としてクラースとも打ち合わせをし、了承も得たところで本日は解散の運びとなった。

さて、宿に戻ってジルが手配した部屋は二つ。本来は男女別室というところであろうが、この時ヨルゲンは「積もる話もあるだろう?3人で同室するといい」などと笑顔で主張(ニヤニヤ)した。一般的には慌てふためく幼馴染たちが見れたかもしれない…………。しかし彼にとってこの2人、距離感が一般的なそれではなかった。
「ん?あぁ、じゃあそうするか」となんでもないようにジルは答え、2人の少女を連れてさっさと部屋へ向かってしまった。もしかしたら少女たちは内心驚嘆していたかもしれないが、あったとしてもジルがその機微に気付くことはなかった。
夜になって。部屋で思い出話に花を咲かせる幼馴染2人を尻目に、ジルは町で通りがかりに買った語学の本を読み耽っていた。いまはこれも処分され、本の内容もタイトルも教えてくれないが……そのうち一冊の表紙は、狼人間のようなキャラクターの描かれた、親しみやすいものであり、どういうわけかこの頃から彼はリカント語を操れるようになったとだけ記載しておく。「…ぁんだよ、何が言いてぇんだよ」と彼は横目で睨む。筆者としてはこの不可解で"優しい"謎を、ぜひ読者諸兄には解明していただきたいところだ。

さて、翌日の早朝である。
依頼のために3人が起きだしたのとほぼ同時刻。ヨルゲンは調査があると言い残し、単身ふらふらと宿を出て行ってしまった。若干戸惑いを見せたアンジェリカとグローリアだったが、「あぁやって自由にさせといた方がいいんだ」と即座に放っておく選択をしたジル。どれほどの苦楽を共にすればたった5年でこういった関係になるのか、筆者には想像も及ばない。
一行は予定通りクラースとも町の入り口で合流、道中での戦闘を軽々こなしつつ馬車で移動した一行は「キャサーウッドの大森林」へとたどり着く。

錬金術師と大森林

大森林に到着した一行がまず向かったのは錬金術師「ヘルネリア」のアトリエだった。まずはここで細かい依頼内容をはっきりさせなければ行動も決まらない。ジルの中ではもはや規定事項だった。

さて、このアトリエだったが。呼びかけてもノックをしても反応がない。どうしたものかと思案していると、ほどなくして聞こえてきたのは物の崩れ落ちるような騒音と悲鳴。ただ事じゃないとアトリエの扉を開け放つ。
目に入ったのはまず所狭しと並ぶ実験器具、機材、資料に衣服。そしてそこに埋もれて目を回している少女。
あたりを見回せば、足の踏み場もない部屋が広がっていた。埃のたまった本棚に机、しばらくは取り換えてなさそうなカーテンに、使った前なんだか後なんだかよくわからない食器。ものの見事に何もない食料。そして少女の「お腹すいた…」の呟き。クラースへは少し時間を貰いたいと許可を得つつ、仕方なく幼馴染トリオでアトリエの片づけと食事の準備を始める。「ありゃあアンジュの鞄の中よりとっ散らかってたぜ、つまりは住めるような場所じゃあねぇってこった」
本日のランチ「里芋のコロッケ、野菜スープ付き(お値段10G)」を人数分そろえながらジルは嘆息する。どうして自分の出会う同年代の女たちは、揃いも揃って一般生活能力に欠けているのだろうか………普通は男女逆じゃないか………?
筆者が思うに、それもまた彼の命運。見返りを求めずいつ何時も誰かのために尽くす、そういった星の元に生まれた存在なのだろうと考えている。

時間が経つにつれ、綺麗に片付いていく部屋と漂う食事の匂いに釣られて漸く少女は目を覚ました。名乗るより早くジルの料理に文字通り齧り付いた少女は、一頻り腹の虫を黙らせると「ところでお前らは誰だ?」と、とんでもなく偉そうな切り口で喋り始めた。ところが話がここでもやはり噛み合わない。聞くに、恐らく依頼を出したのはこの少女「ヘルネリア」ではなく、ここに住むもう一人の人物。彼女の弟子と思われることが判明した。ヘルネリア自身はこの依頼の存在すら認知していなかったが、ともあれその内容のままでいいから手伝えと行き当たりばったりな依頼を提示してきた。呑気なんだか豪胆なんだか、はたまたずぼらなのか………ジルは内心頭を抱えつつ依頼の内容を聞く。

依頼の概要は「研究のための素材を取ってこい」。森に聳え立つ世界樹の「葉」、森に生息する巨大猪の「牙」と怪鳥の「爪」。これらを入手し、無事届けるという内容であった。
クラースが「興味がある」とのことで助力を申し出たこともあり、ジル一行もこれを受理。今にもヘルネリアとラス1コロッケ争奪バトルを開催しようとしている大バカ(グローリア)を「後でなんか作ってやるから!」と強引に引き摺りながら出立した。

アトリエの出入り口でパペットに懐かれつつ森に入るジル一行であるが、森に入るや否や「どうもマナの様子がおかしい」とはクラース曰く。会話が成立し、大人しいという話だった世界樹も凶暴性が増しており、どうも「葉っぱを1枚くださいな」と言い出せる雰囲気ではない。
この森には明らかに異変が起きている。しかも元から生息していた生物ではない、何かしらの外的要因が…………
ジルは魔物を討伐しながら森全体の調査をしていく方針に切り替えた。問題の根本を一つ潰せば、同時に解決しそうなことが多いと考えたのだ。

病魔の巣窟となり凶暴化した猪、ジルの戦闘スタイルとは相性がトコトン悪い怪鳥に苦戦しつつもなんとかこれらを討伐した一行は、遂に森の最深部に辿り着く。満身創痍だった彼らだが、ここにヘルネリアが合流した。
「追加依頼だ」と、相変わらずの斜め上の位置から入る口調で話始めたそれは「シェスタコフ」なる魔物の討伐だった。細菌をばら撒くこの魔物が、この森がおかしくなった原因に違いない。そのままヘルネリアを後方支援に加え、更に奥を目指した。

最深部には想定通り「シェスタコフ」が鎮座していた。生息は菌類に近く、なにかを媒介として生命活動を維持するようだ。そして、正にいまこの時に媒介にしているのは。ボロボロになった衣服を被せた肉塊だった。
こういった事態には普段特に心の動かないジルだが、今回は一気に怒りのボルテージが上がった。これには2人の少女の存在が大きいだろう…2人とも衝撃的な様子だった。こんなものをこの2人に見せられた、傷付けた、ショックを受けさせたことが何より腹立たしいのだ。……彼は頑なに認めようとしないが、あの幼馴染たちとの様子を少しでも見ていれば火を見るより明らかである。「別にそんなんじゃねぇよ、ただ…俺が気に食わなかっただけだ」これを言うと、彼は必ずそっぽを向いてしまう。

ヘルネリアと共闘し、このシェスタコフを撃破。森は一気に本来あるべきだったであろう静けさを取り戻した。そして、この最深部こそもう1人の依頼主であるクラースの目的地。幼馴染み3人で周囲警戒をしつつ、クラースの研究に邪魔が入らないよう勤めた。
もう充分と戻ってきたクラースは、手に握りしめた宝石のようなものを差し出した。勿論契約にないものを受け取るわけにもいかなかったジルだが、不要だから持っていけとのクラースの主張に珍しく押し負けてしまった。筆者が考察するに、悪意には慣れているために単純な言い争いに負けることはないが、人の善意や好意にはめっぽう不慣れな部分がある。この一件もそういった部分で断りきれなかったのだろう。

アトリエに戻る途中で大人しくなった世界樹と(クラースが)交渉し「リントの葉」を手に入れた一行は、依頼を無事達成したというのに妙に重い足取りでヘルネリアのアトリエへと向かった。
原因はやはりあのシェスタコフとの一戦、それが始まる直前に見たあの布切れ。そして、いまこの場におらず、それでいてこの森を出入りするような人物。………ヘルネリアの弟子はきっと、もう。そんな考えが全員の頭に酷く重くのしかかっていたからであった。

アトリエに戻ると、やはりと言うべきか。浮かない顔のヘルネリアがジルたちの帰りを待っていた。依頼された素材を渡したものの、やはり誰一人として笑顔を浮かべられなかった。
少し間隔を空けて、ヘルネリアは独白する。ジル達がここに来る数日前、ヘルネリアとその弟子はちょっとしたことで言い争いになったそうだ。そこからヘルネリアはその時の売り言葉に買い言葉で弟子を外へ追いやってしまった。弟子はそれきり戻らず、今日に至るという。後悔、自責、そんなヘルネリアの思いを感じる一行がなんと声をかけたものかと思案した………
その時である。アトリエの入り口が勢いよく開いた。
1人の青年が転がり込んで来たかと思うと、「依頼を見てくれた冒険者の方ですか!」とニコニコ挨拶を始めた。ヘルネリアの弟子、名をロランと名乗った青年は無事生きていたのだ。
ふとヘルネリアの顔を見る。羞恥からだろうか、見る見るうちに真っ赤に染まり始めたかと思うと
「出てけーーーーっ!!!」
と怒鳴り散らされ、5人は外へ追いやられてしまった。が、しかし。他の4人は定かではないが、それでもなおジルは上機嫌だった。一つの悲しみが救われ、大きな喜びと変わったのだ。彼の喜びの根元は、幼き日よりここから変わっていない。
依頼料をそのまま受け取り、一行は帰路についた。命さえあれば、未来は拓ける。今はそうでなくとも、きっと彼らのこの逃避行も意味のあるものに変わるだろう。

第肆章 勇気、その在処を問うて
砂塵の海、彼方の記憶を

クレージュで路銀を確保したジル一行は、翌朝には慌しく…けれども密かに出立した。無論、オージアスからの追手を警戒してのことだ。これには何よりジルの相棒、ヨルゲンの意見が大きい。
そんな彼はといえば、出発の前日には珍しく声を大きくしていた。というのも、クラースから渡された宝石のようなもの…これは≪Legendary Weapon≫(レジェンダリー・ウェポン)、オージアスに対抗するためには必要不可欠な力の源なのだそうだ。脱出を図って数日でこれを手に入れることになるのは、どうやらヨルゲンにとっても大きく嬉しい誤算だったようだ。特に今回持ち帰ったものはグローリアと親和性が高い代物らしく、ヨルゲンから「ぜひ持っていてくれ」と懇願された。
同時に、これからの旅はこういった≪Legendary Weapon≫(レジェンダリー・ウェポン)を探し出し手に入れる…これが当面の目標になるらしい。ジルにとっては相変わらず喜べない目的でしかなかったようだが。
ただし、向かうべき場所はある。クラースの研究所だ。彼の依頼の報酬はどうやら研究所に備蓄してあるらしく、そこを目指さねば報酬は手に入らない。どうせここを出る、行く道も同じならクラースの故郷を目指すのはジルにとっても悪くない選択肢だった。

しかしその道中の手間を思って幾ら彼が嘆息しようとも、無情にも話は進み刻は進み馬車も進み。クラースの故郷方面、且つ≪Legendary Weapon≫(レジェンダリー・ウェポン)を求めて次なる町へと向かっている。道すがらアンジェリカとグローリアは先だっての≪Legendary Weapon≫(レジェンダリー・ウェポン)の能力を検証していた。どうやらこれを伴っての獣変貌は非常に進化したものになるようだ。まず第一に、獣変貌後も変わらず交易共通語でのコミュニケーションが取れる。そして姿も獣一辺倒のような姿ではなく、自身の思ったような姿へ変わるといった自由がきくとのことだ。しかも、身体的な負担なく何度でも、なにかの片手間程度の労力で。
因みに車内では「じゃあ例えばでっかいドラゴンになったりもできんのか?」「できると思うよー!せーの…」の会話を彼は慌てて静止していた。「当たり前だろ、馬車ぶっ壊す気なのかアイツらは…」

そんな騒がしい車内で過ごして早数日。一行は砂漠の街「リンドベリ」へと辿り着いた。同行の錬金術師、クラースの故郷からもある程度近く、どこか懐かしさを覚えているようだ。グローリア(食いしん坊)に名物を聞かれてすぐさま「サボテン料理だ」と回答できる程度には、かつてこの街にもよく出入りしていたであろうことが伺える。
さて。リンドベリへ着くなり、ここでも彼の相棒はふらふらとどこかへ出掛けてしまった。他3人がヨルゲンへ怪訝な目を向けているのを物ともせず、ジルは一行を冒険者ギルドへと先導した。
主に腹の虫が五月蠅い幼馴染二人と、旅には無関係のクラースをギルドの酒場で待たせた後。ジルはまた路銀確保のために依頼受領の手続きをしようとした…その時である。
大きな音楽、仰々しい身振り手振りと共にまるで寸劇のように依頼が掲示…いや、提示された。しかもなんと「この緊急の依頼を受領頂ける勇者様はいませんか」ときた。正直、彼は全く名乗り出たくなかったようだ。それもそのはず…彼は今までの人生の多くを忌み嫌われ、迫害され、一生モノの傷を全身に受けながら生き永らえてきたのだ。今更『勇者』なんて柄じゃない…気恥ずかしさに似た、一種のバツの悪さのほうが先行してしまう。「『魔王』とか呼ばれるほうがいっそしっくりくるぐらいだ」…彼のように悪意だけを向けられることばかりに慣れきってしまうのも困りものだが。

しかしながら、誰もこの依頼受領に名乗りを上げなかったことから、渋々ジルは手を挙げた。「依頼がある」ということは「困っている誰かがいる」ということだ。それを理解した彼が放っておくはずがないのは、彼を知れば知るほど当たり前のことだった。
散々祭り上げられ、この時点で精神的に疲弊した彼が受けた依頼は「砂漠の真ん中にある遺跡の調査」だった。先だって向かった冒険者がこぞって帰ってこないらしく、その救出も併せて。しかもその遺跡まで行くには砂漠を往く船が必要らしく、それを所有する自警団に借用せねばならないと、なんとも大掛かりな話になってしまった。
だが、他に手ごろな依頼もなく。時間との勝負をするくらいならと正式にこの依頼を受理。酒場で歓談していた2人…それと、クラースもまた事のついでだと自警団のもとへ同行。有難さと申し訳なさを同時に感じながら、4人で自警団のもとへと向かった。

(くだん)の自警団の拠点へ到着して、まず目に入ったのは大柄な竜人。リルドラケン種であった。その屈強な体躯、竜人ならではの尾や鱗、翼といった種族としての身体的な特徴…自身との違いをジルは初めて痛感した。なにせ彼には目の前の人物と同じくリルドラケン種であった父との記憶などない。彼はその姿を目前にして、その存在感に圧倒されていた。
珍しくジルが言葉を失っている間に、クラースがその竜人…自警団の団長と話を付けた。クラースによれば、船を貸すのは構わないが、代わりに自警団との模擬戦に付き合ってほしいとの事だった。断る理由がない…が。ジルには船の借用以外にもう一つ付けたい条件ができた。
「団長さんよ…俺たちが勝ったらアンタの全力の一撃を受けさせてくれ」
これが、彼の出した条件…いや、願いだった。竜人が彼の瞳に何を見たのかはわからない…だが、しかし。少しの沈黙の後、その願いは了承された。珍しく不可思議なジルに注目する3人を他所に、彼のやる気は跳ね上がった。
ほどなくして、模擬戦は終わった。この道中で初めて自分の為に目的を持って挑んだジルは悉く相手を薙ぎ倒していった。あのグローリアが剣を振るうよりも強く、あのクラースが考えるよりも早く、あのアンジェリカの腕より正確に、誰もが思わず腕を下ろして呆けてしまうくらいに。
どれだけワンサイドゲームになろうが、約束は約束。取り決め通り、船の借用とジルの願いは聞き入れられた。

自警団の団長…リルドラケンの力は圧倒的だった。避けられなかったのか、はたまた避けようとしなかったのか…その剣激はジルをたった一振りで戦闘不能寸前まで追いこんだ。これが…いや、これぞリルドラケン種。疲労からではなく、損傷からでもなく、彼は言葉を失った。この圧倒的な力が、記憶にもない自分の父の力なのか。もしかしたら、目の前の人物よりもずっと強大な力で……。彼がその瞳に映したものは、目の前の人物だけではなかっただろう。その力の先にジルは、一度も記憶にない父の背中を確かに垣間見た。

名も亡き者、紡がれし歌

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 ガメル 名誉点 成長 GM 参加者
キャラクター作成 2,500 1,000 0
1 3/7 すべての始まり 1,500 2,070 5 筋力
精神
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア
2 3/9 希望と絶望、そして 1,500+50 0 0 筋力×2
生命
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア
ジルくんのトラウマシナリオ
3 3/12 新たなる夜明け 6,500+50*3 2,300 0 敏捷×2
知力
精神×2
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア
4 3/29 錬金術師と大森林(1) 1,500 0 0 敏捷×2
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア/クラース
5 3/31 錬金術師と大森林(2) 1,000+50*4 0 18 器用×2
精神
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア/クラース
6 4/4 錬金術師と大森林(3) 2,500+50*2 11,960 28 生命
精神
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア/クラース
7 5/8 名も亡き者、紡がれし歌(1) 5,500+50*4 0 0 筋力
敏捷
精神
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア/クラース
8 5/15 名も亡き者、紡がれし歌(2) 500+50*2 2,585 0 器用
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア/クラース
9 8/14 歌声の消えた森 3,000 6,623 37 器用
敏捷
精神
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア/クラース
19に年齢を上げておいた
10 1/8 ノルダールの祝祭~序章~ 0 0 0 敏捷
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア/クラース
11 1/9 ノルダールの祝祭~第1&2章~ 0 0 0 器用
敏捷
エラーさん ジル/アンジェリカ/グローリア/クラース
取得総計 26,800 26,538 88 27

収支履歴

幼少期
事前準備

カッツバルケル::-100
ソフトレザー::-150
バックラー::-60
冒険者セット::-100
救命草×5::-150
アウェイクポーション::-100
ベルト::-15
ブーツ::-20
魔法の発動体::-100

すべての始まり

奢りの飯::-50

幕間

魔香草×2::-200
知性の指輪::-500
剛力の指輪::-500
調理道具セット::-50
テント::-350
着替えセット::-45
普段着×3::-45
下着×3::-12
毛布::-40

希望と絶望、そして

追加報酬::1500
魔晶石5点×2::-1000
アウェイクポーション×2::-200
霜降り肉::-20

青年期
幕間2

仮面::-130
多重ベルト::-50
ズボンベルト::-15
仮面固定ベルト::-20
ブーツ::-30
着替えセット::-45
普段着×3::-45
下着×3::-12
イヤリング::-100
肩甲::-50
肘手甲×2::-40
チョーカー::-13
組紐(太・赤)×2::-12
絞め帯::-30
礼服(軍服・上下)::-150

新たなる夜明け

作中消費無

幕間3

敏捷の腕輪::-1000

錬金術師と大森林

宿代(飯付き)::-10
リカント語の本::-50
魔神語辞典::-50
宿代(素)::-24
馬車::-300
前金::2000
魔晶石3点×3::-900
魔香草×5::-500
アウェイクポーション::-200
屋台の飯::-10
駄犬のジュース代::-3
駄犬のパン代::-5

幕間

宋匠の腕輪::-1000
ブレストアーマー::-1000
マテリアルカード白A×10::-2000
マテリアルカード白S::-2000
魔晶石3点×12::-3600
マテリアルカード金B×20::-400
マテリアルカード金A×5::-1000
アウェイクポーション×7::-700

名も亡き者、紡がれし歌

小娘たちのお小遣い×2::-60
餞別::1500
マテリアルカード金B×16::-320
マテリアルカード白A×2::-400
フード付きマント×3::-150
魔晶石3点::-300
マテリアルカード金A::-200

食材

ベーコン::-4
保存食(豆)::-10
保存食(乾燥バナナ)::-10
食用サボテン::-16
調味料::-10
鶏ささみ::-16
トマト::-12
チーズ::-8
アムルー::-10
パン::-6

幕間

タイガーバンド::-3600
マテリアルカード金B×10::-200
マテリアルカード白A::-200

アンジェリカの服
トップス

緑ロング長袖ワンピース::-42
水色リボン半袖ワンピース::-37
白セーラー風ニット::-14
白リボン長袖シャツ::-21

インナー

レース付き長袖シャツ::-18
キャミソール::-30

ボトムス

毛糸ショートパンツ::-20
チェックスカート赤::-17
無地スカートネイビー::-16

クロックス黒::-20
装飾革靴茶::-23
浅ヒール白::-30
ベルト付き厚底黒::-25
アンクレットブーツ茶::-40

靴下

白レースアンクレット::-8
黒レース&リボンクルーソックス::-10
黒無地ハイソックス::-4
黒レースガーターハイソックス::-9
茶無地ニーハイソックス::-4

小物

白ニットベレー::-11
ネイビーベレー::-10
黒革ハンドバッグ::-50
イヤリング(1対)::-36
カチューシャ::-25
髪留め::-130

グローリアの服

花柄リボンノースリーブ::-15
白アシンメトリースカート::-22
薄ピンクストライプサンダルヒール::-32
白革製ハンドバッグ::-50

歌声の消えた森

前金::3000
月光の魔符×2::-1000
魔晶石【3点】×3::-900
魔化された樫の枝×5::-250
黒曜石の盾(小)::-150
マテリアルカード(白A)::-200
食事代::-20
宿代::-40

幕間

ウェポンホルダー::-1000
マギスフィア(小)::-200
マテリアルカード(白A)×6::-1200
マテリアルカード(赤B)×10::-200
マテリアルカード(金B)×14::-280
マテリアルカード(赤A)::-200
魔晶石【2点】×5::-1000
魔晶石【3点】×4::-1200
武器の召異加工::-200
最高級A5ランク牛肉の含まれる豪華ディナー×4::-600
軍師の徽章::-100

ノルダールの祝祭

屋台1台分の食費::-200
情報料::-200
雑誌①「月間SHOOTING☆STAR特別号~ハンドガンを極める"最強"の一冊~」::-15
雑誌②「ツーハンデッドのススメ」::-8

売却

カッツバルケル::50
ベルト::6
ブーツ::10
着替えセット::24
普段着×3::24
下着×3::6
ベルト::8
ブーツ::10
ソフトレザー::76
ブレストアーマー::500

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