理解と応用、発想に富む天才児である異能
　物体の構造改変も行えるがそちらにはあまり興味がない。
　社会で公に扱えない手品など、さして意味が無いのだから

　二世オーヴァードである彼女は目が開く頃に言語を理解し、周囲のように動けない自分に不足不満を覚えていた。
　数カ月の我慢を解消するように這って歩きながら父の書斎を漁り、2足で立つ事が叶う時には今と変わらないだけの知識量を蓄えることになる。
　そんな気味の悪い子供ではあるが、親もまた超人。贔屓も嫌味もなく溺愛されて育ち、一善もまた両親を愛した。

　初めはそんな両親への恩返しになればと業務上の課題へ案出しをしていたが、このままでは自らの差配が行き過ぎてしまう事に気が付く。
　一方、組織の運営に興味が湧いていたのもまた事実。
　小学校に上がるのと同時、勉強もちゃんとするという約束で会社を一つ貰い受けた。
　親馬鹿に呆れる食器王(ショッキング)経営陣を実力で黙らせ、会社をグループ末端から中核まで押し上げたのはまた別の話。

　夏休み。親戚の竜宮泉と一緒に、民宿『おはし』を営む祖母の家へと遊びに行った一善。
　祖母の住む薬山村では、吸血鬼騒ぎが起きているという。
　半信半疑でいた一行であったが、淡い想いを向けている親戚の伏見ノブが被害にあったことを皮切りに、事態は進行していった。

　自分勝手な事を言う現地エージェントにキレたり
　ようやく追い詰めた吸血鬼にキレたり
　裏切ってたエージェントにキレたり
　捕まえた吸血鬼の言い分にキレたりしながら解決を見たかと思ったが、更なる黒幕の存在が判明する。

　都築京香。
　流石のビッグネームに怯え、責任と安全に振れて手を引く事を提案する一善であったが、泉に焚き付けられて戦う覚悟を決める。

　決めたからにはボコボコにする。
　ガキだと舐めたのか余裕ぶっこいてプランの内訳を話して犯行予告までしていってくれたので、ありがたく先手を打ち全部台無しにして、気持ちよく残りの夏休みを過ごす事に成功したのであった。

　御柱宮と三橋新奈こと『ニーナ』、そして白城聖こと『ひー』は幼馴染である。
　しばらく会えていなかったが白城に呼び出された二人は、令戦への参加を求められた。
　数々の試練を乗り越え最強の令嬢、『令王』を決める戦い、『令嬢大戦』通称令戦。
　弱々しかった自分に決別し、自分たちに勝利を収めるのだという彼女に一も二もなく勝負を受ける。

　一方、イリーガルとしてテレーズブルムからも調査の以来が入った。
　今年の令戦はなにかきな臭いらしい。事のついでである。請け負う事に決めた。

　出会いと別れ、数々の名勝負を繰り広げ、決勝まで駒を進める一行。
　白城の背後にはFHエージェントがおり、彼女の生家が弱みを握られ言いなりになっていたのだ。
　ハイソの風上にも置けない輩である。上流階級として黙っているわけには行かない。

　相も変わらず勝負が絡むと手のつけられないニーナに呆れながら、悪党を撃破。
　その後に待っていたのは身も蓋もない殴り合いの決勝戦であった。

　打ち上げで行った焼肉屋は爆発した。