私ね、妹がいたの。……うん、今はもう……病気でね、死んじゃったんだ。――えっ？うーん、そんなに似てはないかなぁ。あの子はもっと明るかったし……あっ、ごめんね？別に貴女が暗いって言ってる訳じゃなくて、ただ妹は底抜けに明るかったっていうだけで……。

もう、そういうこと言わないの。リベルちゃんが時々本当に素敵な顔で笑うの、私知ってるんだからね？

え？ああそうそう、妹の話だったわね。実は私ね……あの子の最期に立ち会ってあげられなかったんだ。別にそれだけなら珍しい話でもないんだけど……。

私、両親も病気で亡くしてるんだ。ううん、みんな別々の病気だったから家系(かけい)とかじゃないよ。本当に偶然。――あの時も、そう思えてたら良かったんだけどね。

お父さんもお母さんも、私がお見舞いに行った次の日に死んじゃったんだ。だから私、2人が死んじゃったのは自分がお見舞いに行ったせいなんじゃないかって思って、怖くて……それで妹のお見舞いにほとんど行けなかったの。

これはあの子のためなんだ、きっと私がお見舞いを我慢したらあの子も元気に帰ってきてくれる、って……そう自分に言い聞かせて家に閉じ籠って。

あの子ね、最期の瞬間まで……｢もう一度だけでいいからお姉ちゃんに会いたい｣って……そう呟いてたんだって。私、本当に悔しくて、情けなくって……。

でも何より悔しかったのはね。私、妹が死んじゃったって聞いて……ほっとしちゃったんだ。｢ああ良かった、お父さんもお母さんも私のせいで死んだんじゃなかったんだ｣、って。ほんと、ひどいお姉ちゃんだよね。妹のお見舞いにも行ってあげられず、寂しい思いをさせたまま逝かせて――挙げ句の果てに妹が死んで安心するだなんて。

それで、ほっとけなかったんだ。今のリベルちゃんが、噂や迷信に囚われて、身動きが取れなくなってた昔の自分みたいで。

だからね、これは私の為にやってることなの。過去の自分と訣別して、少しでも妹の死に報いてあげられるように……貴女の苦しみを癒してあげられれば、私のこの辛い記憶も少しは和らぐんじゃないか、ってね。

その結果私が死んでも、それは自業自得でしょ？自分の苦しみを癒すために貴女を利用した悪い人が一人いなくなるだけ。貴女は何も気に病む必要はない。

うん、分かってるよ。それじゃ貴女の噂を否定することには繋がらない。だからね――私は死なないよ。貴女のためにも……私のためにも。