ラインハルトは家族との時間を何よりも重んじている。
冒険から帰れば家族の元へ直行し、妻や子供達と過ごすことを楽しみにしている。

妻との関係は非常に良好で、愛妻家である彼は妻を誇りに思い、また誇れる夫たらんとしている。
プライベートでは二人で料理を作ったり、美味しい食事と酒を囲いのんびりとした時間を過ごすのが彼の幸せの一つである。

ラインハルトは子供達と遊ぶ時間も欠かさない。
豪快な彼の性格は遊びにも表れ、冒険者ごっこをしてはしゃぐこともあるんだとか。
夜になれば「パパの冒険譚を聞かせる時間」となり、子供達は話をひとしきり楽しんだ後、ラインハルトと一緒に眠りに就く。

「妻よ、子供達よ、いつも感謝しておるぞ。我輩がこうして元気でいられるのも、全てそなたらのおかげだ。」

ラインハルトの作る酒は、昔からの伝統的な製法で作られている。
素材は旧友の畑で栽培されたものを使い、心を込めて丁寧に醸造している。
収穫の時期になると冒険を一度休み、酒造りに専念するほどだ。

冒険から帰ってくると、時折ラインハルトは地元では見ない果実やハーブを持ち帰る。
珍しい素材を用い、普段とは趣向の異なる酒を造ることもあるそうだ。
売り物にはならないが、それらからできた酒は記念のものとして特別な日に家族や友人に振る舞われるという。

「酒はいつの時代も美味いものだ。酒は、人の笑顔を引き出すものだ。我輩には、この温かい時間が愛おしい。」

冒険に出ていない間でも、ラインハルトは鍛錬を怠ることはない。
彼のトレーニングは趣味の一環になっており、家族も参加することが多いそう。
子供達と一緒に身体を動かすことは、彼にとって心身のリフレッシュになっている。

彼の豪快な性格は地元コミュニティでも有名であり、度々開くホームパーティは人気を博している。
近所の人々や友人の冒険者を誘い、大声での乾杯の音頭や、冒険にまつわる話は場を盛り上げさせている。
時たま人々から相談を受けることもあり、豪快な解決策を提示したり、実際に手助けすることもあるという。

ラインハルトは隠れた趣味として読書を持っており、彼の書斎には古今東西様々な英雄譚が置いてある。
次の冒険へ思いを馳せ、一人静かに本を読む時間も彼にとって大切なひとときらしい。

「さぁ、新たな冒険が我輩を待っている。今宵見る夢は、一層楽しいものとなるであろう。」

ラインハルトは豪快かつ公明正大な男である。
彼の目立ちたがりなところは単純な自己顕示欲から来るものではなく、彼の持つ思いやりや責任感から生まれている。

ラインハルトは冒険において自らが皆の盾となることを役目としている。
彼の派手な装いと、よく響く大きな声は敵の注意を引き寄せ、味方への鼓舞に役立つ。

また彼は子供達にとって憧れの父親でありたいという想いも強い。
自らが先頭に立ち、困難を乗り越え勝利を掴む英雄然とした姿を見せることで、夢や希望を与えたいという願いがある。

ラインハルトは自身の誇りと信念を疑うことなく生きている。
自身の行動が人々に勇気を与え、鼓舞する力があると信じており、それを誇りに思っている。
自らの信念を貫く姿勢を見せることで人々の心に明るい光を灯せると、確信しているのである。

「もう大丈夫！！なぜって？我輩が来た！！」

　ラインハルトが冒険者を志すこととなったのは、幼い頃に聞かされた英雄譚がきっかけだった。

彼の父、ヴォルフガングはフランベルジュ級の冒険者としてその名を轟かせていた。
多くの者に認められる彼だが、胸には秘めたる夢が一つあった。

「英雄のマント」……それを手にすること。

このマントは名だたる冒険者達が身につけたとされる高価なアイテムであり、その存在は力と誇りの象徴とされていた。
しかし、その価格は庶民には手が出せないほどに高く、ヴォルフガングとて簡単に手に入る代物ではなかった。

ある日、ヴォルフガングはついに決心し「英雄のマント」を手に入れた。
これは彼にとってこれまでの冒険人生の集大成であり、また新たな冒険への熱を生み出す誇りとなった。

これで更なる高みを目指す。
赤いマントを身にまとい、ヴォルフガングは次の戦場へと赴いた。

だが、その冒険は決して順調なものではなかった。
ある時から病に侵され、徐々に体力を蝕まれた彼は激しい戦い続きの中ついに重傷を負ってしまう。
続けることは、もう無理だろう。そう悟ったヴォルフガングは引退を決意する。

その夜、レイピア級冒険者となったばかりのラインハルトを呼び出した。
二人の眼前には、英雄のマントが丁寧に畳まれている。

「ラインハルト。このマントを、お前に託す。」

ヴォルフガングは手渡しながら、静かにそう言った。

「父上、これは……英雄のマントではないのですか？」

ラインハルトは驚きと尊敬の念を込めた顔で父の顔を見上げた。

「そうだ。このマントは我輩が手に入れたものだが、今となってはお前の方が相応しいだろう。
お前なら、我輩を越える冒険者となり、誰もが認める英雄へとなれる。」

ヴォルフガングの口調は諭すように、だが確信を持ったものだった。
その声は深い誇りと愛情が込められていることを、ラインハルトも感じ取った。

マントを受け取るラインハルト。父の誇りと夢が手にのしかかった。
その重さに一瞬戸惑いながらも、すぐに決意を固めた。

「ありがとうございます、父上。私はこのマントを背に、必ずや父上が果たせなかった夢を果たしてみせます。」

その言葉を聞くとヴォルフガングはこれまでの冒険の日々が走馬灯のように蘇り、息子への誇りが胸に込み上げてきた。


それから数年、ラインハルトは冒険者としての道を着実に進みついには父と同じフランベルジュ級へとなる。
ある日、彼のファンだというリルドラケンの女性エレオノーレと出会った。
彼は一目で心奪われ恋に落ち、やがて二人は結婚し、家庭を築くことになった。

家族を持ったことで、ラインハルトの冒険者としての誇りは更に強まる。
彼は妻と子供達に誇れる父親であり冒険者であり続けるため、日々の鍛錬を欠かすことはなかった。

やがて彼がハイペリオン級となりその名が広く知られるようになる頃には、今や彼の背のマントには父の誇りだけでなく彼自身の誇りが刻まれていた。

「さて、勇敢な父はそろそろ冒険に行ってくるぞ！愛する妻と、我が子達。今度の冒険譚を楽しみに待っておるがよい！」

そう宣言して、ラインハルトは今日も新たな冒険へと旅立つ。
彼の赤いマントが風に舞い、黄金の鎧が煌めく。

幼少の頃に憧れたあの英雄の姿がそこにあった。

　朝日が差し込み、ルービンシュタイン家に新しい一日が始まった。
家の中は既に活動が始まっており、台所からは美味しそうな匂いが漂ってくる。
妻エレオノーレが朝食の準備をし、子供達は既に目を覚まして元気いっぱいに走り回っていた。

「おはよう、メル、トビ、アンナ！」

ラインハルトは階段から降りながら力強い声で挨拶をした。
彼も家では鎧を脱ぎ、楽な格好でリルドラケンらしい白い鱗を露わにしている。

「パパ、おはようー！！」

息子、トビアスが一番に駆け寄りラインハルトの脚にしがみついた。

「ヌッハッハ！トビアス、今日も元気であるな！」

ラインハルトは息子を持ち上げ、高く放り投げた。
トビアスは楽しそうに笑い声をあげながら、父親の腕に再び抱き溜められた。

「朝からそんなにはしゃぎ回って……ケガしちゃうわよ？」

エレオノーレが朝食を運んできて、微笑みながら軽く嗜める。
その横には長女のメルセデスも一緒だ。
彼女は一番上のお姉さんであり、元気いっぱいだがしっかり者でもある。
ナイトメアとして産まれた彼女もリルドラケンの家庭では大した問題ではなく、家族全員と深い愛情で繋がっている。

「パパ、おはよう！今日の朝ごはんのオカズ、私が作ったんだー！」

メルセデスがにこやかにそう告げると、ラインハルトはニカッと笑い「それは楽しみだ！」と彼女の頭を優しく撫でた。

「さ、朝ごはんができたわよ。みんな席について？」

エレオノーレがそう言うと、庭からひょっこりとアンネリーゼが顔を出す。
彼女は末っ子で、上の二人と比べると大人しく穏やかな性格だ。
その手には、少し不恰好な花冠が持たれている。

「パパ、これ作ったの……ママのも。」

アンネリーゼがおずおずと差し出すと、ラインハルトはそれを嬉しそうに被り「ウム、我輩によく似合う！アンナは器用であるな！」と誇らしげに抱き上げた。

家族全員がテーブルにつき、メルセデスの焼いたパンの香りと、エレオノーレが用意したスープの湯気が食卓を包んだ。
賑やかな声が飛び交う中、今日の一日が本格的に始まりを告げる。
メルセデスはパンにジャムを塗りながら、弟のトビアスにもう少し綺麗に食べなさい！と指導をしている。
アンネリーゼはラインハルトの隣に座り、嬉しそうに話しかけた。

「パパ、次はどんな冒険に行くの？」

アンネリーゼが興味津々に答える。
他の二人も、その話題になると耳をすませた。

「次の冒険？それはな、燃え盛るマンモスを討伐せよ！というものである！
帰ってきたら、また新しい冒険譚を話してやるぞ！」

ラインハルトは胸を張り、満足げに答える。

「うん……楽しみにしてる！」

アンネリーゼは笑顔でそう答えた。



朝食を終えると、ラインハルトは一度外に出て日課であるトレーニングを始めた。
家族の平和を守るためにも彼は日々の鍛錬を欠かさない。
今日は特別に、子供達も一緒に行うこととなった。

「さあ、我輩と一緒に身体を動かすぞ！」

ラインハルトが声をあげると、メルセデスとトビアスは喜んで父親の足元に駆け寄った。
アンネリーゼは少し離れた場所でエレオノーレと一緒にその様子を見ている。

「準備はできたか？まずは腕立て伏せからだ！」

ラインハルトが地面に手をつくと、メルセデスとトビアスもそれを真似した。

「パパ……私も一緒にしていい？」

すると、アンネリーゼが近づいてきて少し恥ずかしそうに尋ねる。

「もちろんだとも！アンナ、そなたも我輩と一緒に強くなろうではないか！」

ラインハルトは嬉しそうに笑いながら答えた。
家族みんなでのトレーニングは笑いと汗に包まれた特別な時間となった。
彼は子供達が楽しみながら少しずつ成長していくのが誇らしかった。



夕方になりトレーニングを終えた後、ラインハルトは庭でくつろいでいた。
エレオノーレが淹れてくれたお茶を飲みながら、子供達は庭で遊び回っている。

「エレオノーレ、今日も良い一日であった。我輩はこうして家族と過ごす時間が一番の幸せだと感じる。」

しみじみと語るラインハルト。その言葉に、エレオノーレは静かに頷く。

「そうねラインハルト。貴方が無事に帰ってくるから、私達はこうして幸せに過ごせるのよ」

微笑みながらそう答える。

「無論だとも。我輩は冒険の最中で終わるつもりはない。
家族を守るためにどんな困難にも立ち向かい、必ず生きて帰ってくる。」

ラインハルトの真剣な眼差しにエレオノーレは頷き彼の手を握りしめた。

「いつでも応援してるからね」

エレオノーレはそっとラインハルトに寄りかかり、ラインハルトはそれを優しく抱き留めた。



夕食を済ませ夜の帳が降りれば、冒険譚の時間がやってくる。
ラインハルトは新たな冒険譚を子供達に聞かせていた。
子供達はその話に夢中になり、目を輝かせながら聞いている。

「なんと、我輩の鎧にも負けぬ輝きをした黄金のカブトムシがいるではないか！その時である！」

ラインハルトが熱を込めて話すと、子供達は歓声をあげた。

「パパ、凄い！次はどんなお話が聞けるの！？」

トビアスは興奮気味に尋ねた。

「それはまた、次の機会のお楽しみだ！」

ラインハルトがそう答えると、トビアスは少し惜しいような気持ちを見せる。

「パパ、私も冒険者になりたい！」

メルセデスがラインハルトにそう告白すると、ラインハルトは嬉しそうに笑った後、神妙な面持ちになった。

「もちろん、我輩はそなたらの夢を尊重したい！だが一つだけ約束してくれ。」

「我輩より先に死ぬような、親不孝ものにはなってはならん。」

メルセデス、トビアス、アンネリーゼの三人は普段と違う父の真剣な表情に、少し驚きつつも耳を傾けた。

「我輩の父上……そなたらのお爺ちゃんに、我輩は自らを越える冒険者になってくれと託された。
我輩は父上の分の誇りも胸に冒険を続け、ママと出会い今がある。」

「我輩は、そなたらに我輩を越えろとは言わん。
ただそれは、決してそなたらに期待をしていないわけではないのだ。」

「我輩にとっては、そなたらがお爺ちゃんになってもお婆ちゃんになっても愛しい子供達なのだ。
人に迷惑をかけないのであれば好きなように生きて構わん。冒険者以外の道でもいい。
パパとママを悲しませるようなことだけは、絶対にしてはならんぞ。」

ラインハルトは父親としての責任を強く感じた。
子供達にはまだ少し早く、難しい話だったかもしれない。
だが父親の真意を汲み取れたのか、三人は深く頷いた。

「もちろん、冒険者を目指すなら我輩は全力で応援するぞ！
いつかは、我輩と共に冒険できる日が来ることを期待しておる！」

そう締めると、メルセデスとトビアスは明るい顔になった。
この二人は冒険者になりたいという願望が強いのだろう。

「では、そろそろ寝る時間だ。おやすみ、みんな。」

ラインハルトが優しく子供達に言った。
エレオノーレも隣に入り、家族全員で横になって眠る。
こうしてルービンシュタイン家の一日は終わりを告げる。

家族の絆と愛情で包まれた彼らの生活は、いつも穏やかで温かな時間に満ちていた。