観光地として名高い離島に、あるレネゲイドビーイングが潜んでいた。黒い蛇の姿をしたそれはジャームに堕ち、人を喰らい続け、大きく成長を続けていた。だが、大蛇の中に産まれた対抗種のレネゲイドもまた、まるで癌細胞のように育ち始めていた。
最初は微弱だった対抗種は犠牲になった人々の怨念と結合し、大蛇そのものを蝕んでいく。苦しんだ大蛇は自らを切り分け、対抗種とその遺志を森の中へと棄てた。
まだ小さく、自ら生き延びるだけの力を持たないレネゲイドの塊に過ぎなかった対抗種には、自身をその怨念で灼き尽くし、朽ち果てる運命しか残されていないはずだった。
彼を見付け、拾い上げたのは島に住む少年だった。小さく黒い蛇に血を分け、依代としてその存在を繋いだ。目の前のそれが何者かなど少年にとっては関係の無いことで、ただ失われかけている命を救わんとする、無償の慈悲がそこにあった。憎悪の器に新たに流し込まれたのは、そんな清らかな優しさだった。
やがて島を離れ、UGNに身を置くようになり世界を知ったヒトエは、ひとつの誓いを立てた。
“島の外には、数え切れないほど多くの人間がいる。吾は、それを守りたい。かつて自分がそうして貰ったように。そして、心に虚を開いた彼に伝えなければ。君は、心の無い怪物などではないのだと”

神皓ヒトエの産まれ持った能力。獣に転じるキュマイラの力を、レネゲイドビーイングの力で人の形を保っている。人の部位で置換出来ないために生じる翼には飛行能力こそ無いものの、自在に操り腕のように扱うことが可能。
また、｜晦《つきごもり》と名付けた不可視の蛇の尾は、強靭で、素早く振るうことで大段平の如き斬れ味で物体を両断する。