源遠矢の日記

UGNより離反したコウヤ率いるリベレーターズに潜入成功。失踪したUGNチルドレン、白銀アスカと接触した。
彼女はUGNエージェントの与儀という男から、感情を削る処置を受けていたらしい。
これが彼女にとって必要な措置だったことは理解している。同情しているわけではない。任務には関係ない。
……本当に関係ない。これは私情だ。サキさん、ごめん。僕は僕の理由で動きたい。


UGNチルドレンの金谷燐、UGN支部長の各務みやこ、そしてUGNエージェントの陽溜桜。
以上3名からの協力を得られた。リベレーターズの目論見は止める。任務として。
でも、私情として白銀アスカを助けたい。UGNが彼女をどう扱うかわからないけれど、できる限りのことをしたい。
彼女の身の安全のための助力を　ちがう　どうにかしたい



任務は終わった。彼女の身の安全は、UGN支部長各務みやこよって確保された。
彼女には感謝しなければ。
彼女のことは大人として信用できる。サキさんの次に、だけど。

それから、金谷燐にも助けられた。彼女はアスカを助けることに対して、最初に全面的に同意してくれた子だ。
陽溜桜には、戦闘面で何度も救われた。面目が立たない。追いつきたい。もっと早く。
でないと、アスカを守れない。

今回の件、僕1人では何もできなかったことを認めないといけない。
彼らがいなければ、僕はきっとなにもできなかった。それに、アスカのことだって失っていた。
強くならないと。あの子を守るために、もっと。


あれから、少し時間が過ぎた。
アスカは少しずつだけど、あの子自身の気持ちについて考えられるようになったみたいだ。
たぶん、そんな気がする。
僕としては、もう少しゆっくりでも構わないんじゃないかと思ってる。
無理矢理せき止められていたものを急に消化し始めて、あの子が壊れてしまわないか心配だ。
でも、アスカが自分で、自分のしたことや置かれていた境遇について、向き合うのなら僕は止めない。
それがあの子自身の意志なら、僕には止める権利はないから。

アスカはよく笑うようになった。想像していたより、表情が豊かで本当に驚いてる。
当たり前だ。だって普通の女の子だ。そんなの当たり前のことなのに。


アスカが決めたことを止めるつもりはいっさいないよ。ほんとにない。
でも、あのさ、そのこんなかわいい子が！接客業なんて！おかしな客に目をつけらないか僕は心配で！
どうしよう、すごくかわいい。制服似合ってる。こんなかわいいことがあっていいのか！？

彼女のサイコメトリーが、人間に効かなくてよかった。なにを考えてるのかバレたら僕は死んでしまう



僕と、アスカが、これからどうなっていくのか正直よくわからない
彼女はどこまでいってもUGNチルドレンであることは変わりないし、僕はきっと彼女のすべてを理解できない。
同じ立場に立つことはきっとできないんだろう。
口先だけならなんでもやるとは言えても、実際できることも、していいことにも限界がある。


ずっと一緒にいたい。離れたくない。危険な目に遭わせたくない


君のことは先に置いていかない。君が壊れるなら、僕は必ず君を仕留める。君がそれを望まなくても

　UGNで支部長への報告を終えた後、アスカが待合へ戻ると、ソファの背にもたれかかって眠るトオヤがいた。アスカが戻るのを待っているうちに寝落ちてしまったのだろう。腕を組んだまま眠る彼の、眼鏡がずり落ちそうになっている。それが少し子どもっぽいと思えたのは、彼女の心が成長したからなのか。
　彼は過保護にも、任務の後はかならず一緒に帰ると言って聞かなかった。そして、それはいつしか2人の間の約束に変わった。子どもの戯れのようなささやかな約束だ。
　アスカは彼を起こそうとはせず、トオヤの隣に腰かけて、そっと彼の肩に頭を預けた。長い髪が少年の肩に流れる。なぜそうしたのかアスカにもわからなかった。この行動に意味はないが、ただそうしてみたくなかった。目を閉じると、眠る彼の呼吸と鼓動の音がより鮮明に感じられた。
　生きていると、少女は思う。彼も、自分も

各務みやこのデスクの置き手紙より

支部長　各務みやこさんへ

突然連絡を絶ってすみません　
他にやりたいことができたので、しばらくUGNを離れようと思います
もし機会ができれば、燐さんと陽溜さんにもこのことを伝えてほしいです
よろしくお願いします

それから、ココアとお菓子、ありがとうございました
おいしかったです


追伸　そちらで働いている白銀アスカですが、近いうちに引き取りに行きます　　


源トオヤ