かつて、UGNとFHが共同で執り行っていた研究“プロジェクト･アダムカドモン”。ジャーム化する人間の回復を目的としていた筈のプロジェクトは、いつしか人体実験に成り代わり、被検体同士で殺し合い暴走の果てに闇に葬られた。だが、研究データはあるFHエージェントの手により流出した。そして、とあるFHセルにも流れ着き、狂気と衝動に侵された何者かの手により、新たな研究が進められた。
ダインスレイフの先にあるもの。確実に願いを叶えるが、やはり破滅に導く呪いから逃れえぬもの。人工の疑似人格“ティルヴィング”はかくして生み落とされ、一人の少女を受け皿に芽吹いた。

他の誰よりも“殺し”を得意とするのは当然だ。それは非情で冷酷であり、攻撃における最適解のみを選ぶのだから。
これは、自身に科せられた呪い。与えられた名に違わず、幾度の願いを叶えし後に、自身も魔剣に喰い尽くされるのだろう。けれど、ここで生き抜く為に、これは必要な力だった。だから、起動を躊躇いはしない。……少なくとも、今は。

正確に言えば、陽向の持つものは「遺産に限りなく近いもの」。特徴及び契約者に求める代償が限りなく“祈りの造花”に近かったため、便宜上遺産の一つであるとUGNには記録されている。
FHチルドレン訓練施設「プリズン」にて密かに行われていた疑似人格“ティルヴィング”を用いた人体実験。その被検体は陽向を含めそれなりに多く、中には陽向以上の戦闘能力が見られた者もいた。だが、その殆どはジャーム化するか死亡し、結果として陽向が戦闘くれんと称され葬ってきた。
彼女が持つ“祈りの造花”は、そうした被検体となった少女たちの想いの成れの果て。被検体同士による殺し合いで生き残った陽向の糧であると共に、選ばれた責務を果たせと囁く祈りと呪い。その覚悟を持っていなかった陽向は今までこれを手にしていながら、力を引き出すことが出来ていなかった。
だが、仲間達と共に施設を抜け、仇であり師でもあったセルリーダー“八重霞”を倒し、全てを受け入れ前に進む覚悟を得たことで覚醒。代償と共に、陽向に絶望に立ち向かう為の力を与える。