￤吸血事情￤
普段の血は、酒を飲んで意識を失った客から拝借したり、仕事場付近のケンカの仲裁の代価ということにして頂いたりしていた。正直うしろめたい。
血を得られるチャンスが不定期だったので一部を飴玉にしてストックしていた。
人脈がないので、夜職の中でもとにかく色んな人と関われそうなバーテンダーに就いた。

￤酒￤
バーテンをやってるわりに酒は酔えれば良いタイプ。
魔眼で相手の精氣を読んで好みに合わせたり揺らしたりで一応なんとかなっている。今のところは。

￤煙草・性￤
性交渉の経験はない。
元々女性とは無理だなと感じていたタイプ。トラウマも何もない。
「同性愛者には特別な経緯があるだろうと思われること自体がなーんかおれは納得いかないんだよな！」

煙草は吸うが、決まった銘柄を吸っているわけではない。酒と同じでなんでもいい。客が吸ってるのを話題作りで真似てみたりしている。
メンソール吸ってる時に「男のくせに」とか「ああネコなんだ」とか言われているかもしれない。
「上下なんざ知らねえよヤッたことねえよこちとら～～～！」

￤暴力￤
血を硬化させるタイプの血奏法。
革靴を硬化して蹴り飛ばすスタイル。
鍛えているわけではなく吸血鬼の身体能力と血奏法でなんとかしている。

愛媛県。山がいっぱい。車が必須。
伊兎が人間の頃はフリーターをしていた。
田舎を出ようかどうか悩んでいるうちにモラトリアムが終わってだらだら……。
吸血鬼になり、日光の関係で普通の生活ができなくなったのを自分への後押しとして、田舎を出る決意をする。ようやく。流されやすい彼にとっては、人外にでもならないとできないことだったらしい。

・地元の人たち
お隣さんが勝手に庭入り込んでて「あら～稲葉さん、雨降ってたから洗濯物取りこんどいたわよ」って言ってくるくらいの距離感。善意でやっているので、不法侵入とかプライバシーとかいう概念がない。

・両親
許容範囲が広いし深入りしない。ご近所さんのことも「あらまあ～」で流すし、伊兎のことも「色々やってみな～」で流す。
同性愛者も吸血鬼もカミングアウトはしていないが、まあ色々抱えてるんだろうし言いづらいんだろうなと察してはくれている感じ。
仲はいいが、伊兎側が普通にできない気おくれから変にぎこちなくなってしまう時がある。はよ言え。

・きょうだい
この環境で一人息子がここまでちゃらんぽらんさせてはくれなさそうな気がするので兄辺りがいるんだと思う。なんだかんだ甘ったれてる感じがするし。末っ子っぽ～い。

・伊兎が惚れてた男
惚れた当時は未婚。今は既婚。
伊兎は告白もしないまま失恋している。
彼の幸せ結婚生活がいやでも目に入ったり噂されてたりするのが辛くて地元を出たかった。

・トモダチ
源祖。
危なっかしいし放っておくのも忍びないしで、求めに応じてたまに血をやりつつかくまっていた。
伊兎からすると型に押し込めたり監視したりしてこないので、気持ちがすごく楽になれる相手。
唯一の友達。というか伊兎側の友達のハードルが高い。一般的には親友と呼ばれるレベルの関係を友達と認識しているのかも。

おれが吸血鬼ってこと言った時も男が好きって言った時も、そりゃびっくりはされたけど、そのまんま受け取ってくれた。ものすごい優しくてカッコイイ人だ。
でも本人に言っても真顔で受け止められて終わりそうで……うおお……そんな、焼き肉おごられるだけでいいのか！？　これから吸血でもお世話になるわけだし、俺もっとがんばるよ！？！？　いや、どうやってとかは、全然わかんねぇけど……。

すごく有能ですごく器用なのはわかる。覚悟決まってる、というより、覚悟決めらんないおれの代わりに先に腹くくってくれてた気もする。違うって言われそうだし、出穂ちゃんからしたら本気で違うんだろうけど！
この辺含め、たまーに頑なだと思う時がある。でも本人がわかってなさそう。
色んな意味で予想がつかなくて、うわー、もっと話してぇな！