今はブルライト地方がミラージ共和国連邦と呼ばれる場所。
ヤンゼが生まれたのは比較的南方に位置するメリアの集落だった。
ヤンゼの家族は貧しい暮らしを行っており、彼を育てる環境が整っていなかった。
また、その集落を領土とする領主には子供がいなかった。
両者はお互いに話し合いを重ねた上で、まだ自我を持たない程幼いヤンゼを領主の養子とした。

ヤンゼは領主の元ですくすくと育っていった。
義親の身分の影響できちんとした教育を学び、種族間の差から自分が養子である事もヤンゼは自覚していた。
上記の話を義父から聞いて、ある意味自分の命の恩人で今も愛情を注ぎ続けてくれている義父に報いたいと常日頃から思っていた。
そんな生活が崩れたのは、義父が妻を娶ってからの事だった。

爵位を持つ義父と、同じく高貴な家柄から嫁いできた義母。
彼らに恥じない存在で在りたいとヤンゼは日々努力を怠らなかったが、義母はそう捉えなかった。
義母が妊娠・出産を経てヤンゼとの義理の弟が誕生してから義母はヤンゼへの敵愾心を剥き出しにした。

───ヤンゼの努力は、義父を継いで自分と息子を家から追い出す為。
───ヤンゼの能力は、息子よりも有能である事を示して息子に劣等感を抱かせる為。
───ヤンゼの優しさは、自分と息子をいつか亡き者にすべく油断を誘う為。

ヤンゼは弟の誕生時点で自分が次期当主となる事など全く考えていなかった。
義父と義母が血の繋がった弟を溺愛するのは当然で。
貴族としての血を尊ぶ考えも理解していた、義父がそのように学習させたのだから。
故に、当主の座は弟が継ぎヤンゼは貴族の家系としての立場を返上して、使用人なんかの立場で親と弟に尽くせたら…と考えておりそれを義父にも伝えていた。
義父はヤンゼの考えを理解し、謝罪を混ぜつつそれを受け入れた。
しかし、義母はそれを許さなかった。

とある日、義父が留守にしていたものの本来は日常であるべき日だった。
昼食をこれから開始する、という段階で毒見役がそれを食べ倒れた。
その後の調査で毒が入っていたのは義母と弟の分だけで、ヤンゼの皿からは検出されなかった事がわかる。
義母は、自分たちの家を乗っ取る為にヤンゼが行った策謀であると主張し訴えた。

そのまま裁判が行われ、義父が領地に戻って来た時には既に全て決まった後だった。
裁判の間ヤンゼは自分が毒を混入した事を認める事は無かったが、していないとも明言しなかった。
彼が今回の騒動で一番恐れたのは自分に処される刑ではなく。
義父と、義父の愛する家族とその名に傷がつく事だったからだ。

ヤンゼは義父も、弟も、義母すらも愛している。
義母の工作が表に出て義父の顔に泥が塗られるくらいなら、この程度の貶めは軽いものだった。
ヤンゼは家族を守るために義母の策略を受け入れ、有罪となった。

得た家名を失う事になったヤンゼは、それでも義父の家を護りたい誇りを失うことなく彼らと他人になった。

・おとぎ話や寓話などの物語を読む事
・野菜のたっぷり入ったスープ

【経歴】

・罪を犯したことがある
・育ての親に拾われた
・大きな嘘をついている(いた)

【冒険に出た理由】

・なりゆき

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