ゆとシートⅡ for SW2.5 - ゆと工公式鯖

ピルス・ランディア - ゆとシートⅡ for SW2.5 - ゆと工公式鯖

氷雨夜の木漏れ月(アンディシンバー)ピルス・ランディア

プレイヤー:SubReader

何かお手伝いできることはありますか?

種族
メリア
年齢
13
性別
種族特徴
[繁茂する生命]
生まれ
森羅導師
信仰
“月神”シーン
ランク
ブロードソード
穢れ
0
6
7
16
4
4
3
10
4
5
成長
1
成長
2
成長
2
成長
9
成長
17
成長
10
器用度
11
敏捷度
12
筋力
12
生命力
26
知力
37
精神力
31
増強
増強
増強
増強
増強
2
増強
器用度
1
敏捷度
2
筋力
2
生命力
4
知力
6
精神力
5
生命抵抗
14
精神抵抗
15
HP
56
MP
91
冒険者レベル
10

経験点

使用
84,500
残り
5,350
総計
89,850

技能

プリースト(シーン)
10
ドルイド
10
レンジャー
9
エンハンサー
5
アルケミスト
5
セージ
2

一般技能

サージョン
3
コック
2
ドクター
5

戦闘特技

  • 《魔法拡大/数》
  • 《バイオレントキャストⅠ》
  • 《ターゲッティング》
  • 《魔力強化Ⅰ》
  • 《魔法拡大すべて》
  • 《サバイバビリティ》
  • 《不屈》
  • 《ポーションマスター》

秘伝

  • 《バーストマジック》
  • 《リミットオーバー》
  • 《戦域魔導術アンナマリーア》
  • 《戦域魔導術ベロニカ》
  • 《戦域魔導術トルクワート》

練技

  • 【ビートルスキン】
  • 【アンチボディ】
  • 【メディテーション】
  • 【ストロングブラッド】
  • 【スフィンクスノレッジ】

賦術

  • 【バークメイル】
  • 【ヒールスプレー】
  • 【クリティカルレイ】
  • 【パラライズミスト】
  • 【イニシアティブブースト】

判定パッケージ

レンジャー技能レベル9 技巧 10
運動 11
観察 15
セージ技能レベル2 知識 8
アルケミスト技能レベル5 知識 11
魔物知識
8
先制力
0
制限移動
3 m
移動力
12 m
全力移動
36 m

言語

会話読文
交易共通語
妖精語
魔動機文明語
神紀文明語
魔法文明語

魔法/賦術

魔力行使/賦術
基準値
ダメージ
上昇効果
専用
プリースト技能レベル10 神聖魔法 +2=18 18 +0 知力+2
ドルイド技能レベル10 森羅魔法 +2=18 18 +0 知力+2
アルケミスト技能レベル5 賦術 11
武器 用法 必筋 命中力 威力 C値 追加D 専用 備考
宿り木の棒杖 1H 0 0 ドルイド魔法
技能・特技 必筋
上限
回避力 防護点
技能なし 12 0
防具 必筋 回避力 防護点 専用 備考
ソフトレザー 7 3
ラウンドシールド 7 1
合計: すべて 0 4
装飾品 専用 効果
ひらめきメガネ 見識判定・探索判定に+1
聖印 三日月を形どった月神シーンの聖印
ロッセリーニの調声機 古モルガナンシン式戦域魔道術を行使可能にする
背中 勇者の証:心 成長の出目で5.6が出なかった場合、振り直しが行える。
右手 叡智の腕輪 知力+2
左手 叡智の腕輪 知力+2
グリーンベルト 自然環境にいる
ラルヴェイネのダウンルッカー 魔力+1、常に足場が悪い状態になる(飛行状態などで解除可能)
アルケミーキット
所持金
71,929 G
預金/借金
0 G / 0 G

所持品

冒険者アイテム

消耗品:
アイテム名個数効果
冒険者セット1背負い袋、水袋、毛布、たいまつx3、火口箱、ロープ10m、ナイフ
保存食4個数分の日数の食事
消費アイテム:
アイテム名個数効果
未加工の宿木2受益者のシンボルの作成に必要
受益者のシンボル1木彫りの犬(自身)
魔香水0レンジャー技能+知力B分のmpを回復
(5)点魔晶石0魔法行使時に1個砕くことができ、点数分のmp消費を肩代わりできる
月光の護符[+2]1精神抵抗時にこれを破くと、+値分精神抵抗を増強する

マテリアルカード

BASSS
2
10
2
名誉点
231
ランク
ブロードソード

名誉アイテム

点数
冒険者ランク100
秘伝100
『七色のマナ』特別魔法行使学50
聖印・専用化100
枝・専用化100
古モルガナンシン王域魔導術50
ロッセリーニの調声機30
ロッセリーニの魔導筆20

容姿・経歴・その他メモ

容姿:

ルビーのような赤目に艶々な白髪を三つ編みにしており、一見すると男の子なのか女の子なのか分からない中世的な見た目で、表情と花がコロコロ変わる見ていて飽きない140cmのメリアの少年。

性格:

メリアの長命種らしくゆったりと物事を考えるところはあるが、少年らしい無邪気さと思考を持っている。

言動:

一人称は「ボク」
若いのに柔らかい物腰、何よりその献身性から老若男女全てを虜にする。
相手に尽くし相手を喜ばすことに喜びを感じ、頼まれればどんな人にも手伝ってしまうその優しさから騙されないか心配している人が多い。 

 だが、自然の中で生きてきた彼にとって、無償の奉仕というものは存在しない。
ピルスはだれか/なにかを助けることが好きである。
しかしそれは、何かしら彼に得があるからだ。
逆に言えば、得がないと分かればもうそれ以上彼が関わることはない。

目的:

ユーシズに来た理由は、学園で勉強して森羅導師・神官として一流になることである。
養父、母に教わり勉強することも考えていたが、同年代と友達になりながら切磋琢磨した方が刺激になると考えた。
本来であれば成人していないので、七色のマナに入学する事はできないが、ある理由で推薦を貰い、組み分けテストなどを受けることなく入ることができた。

戦闘方法:

精霊達の力と神の力により味方を補助する魔法使い。
高い出力と膨大な魔力量によって多数の精霊を同時に使役し、神の権能と合わせて味方を守り敵を攻める。しかし、継戦能力は高いとはいえず、また彼が行う補助の多くは力の足りない者を戦えるようにする補助輪でしかない。もし、彼の力を理解し、また合わせる事の出来る者があったのであれば、その時にはこの世界を取り巻く全てが敵を襲う事になるだろう。

学園内にて:

ピルスは学園にて、森羅魔法学科に在籍している。
年齢の違いはあれど、導師を目指す者たちの精神性とピルスが持つ幼き故の好奇心とまっすぐな向上心が功を奏し、すぐに学科生と溶け込めた(しかし、授業で同席する他学科生からは陰口を叩かれている)
授業は必修授業の他にも多数履修しているが、良くも悪くも自身の興味の及ぶ範囲であり、広く学ぶ賢者になるつもりはないようだ。
現在は医薬を中心に学んでいる。

部活動は料理部「ふくよか魔女のシチュー」に所属している。
理由は、ピルスが月神シーンの神殿にて行う炊き出し技術の向上のためと大切な人に振る舞う料理のためだ。料理の手際や調理技術はお世辞にも良いとはいえないが、それでも温度管理や食べる人への配慮に関しては人一倍繊細であるようだ。

経歴:

前に立つ男らしい戦士を目指していたが、才能がなく諦めた。
現在は、憧れの人の背中をまもるために母と父の跡をつぎ、ドルイド、プリーストとして修行中。
小悪魔な姉に絡まれ邪魔される事もしばしばだが、真っ直ぐに成長しつつある。
アルボルの里でドルイドの勉強をしたのが功を奏し、ユーシズの学園に入学した。
学園での勉強の息抜きと生活費のために冒険をするようになった。

母子:

シナリオ「寄木」後

ピルスは、トレに連れられてハーヴェス王国へと赴いた。
村の外に出れる事、嬉しくないと言えば嘘になるが、それでも祖父母のことが心配であった。
トレはピルスの生みの親ではあるが、育ててくれたのは祖父母だったからだ。
また、トレが悪人ではないことは分かるが、祖父母を置いて行き寂しい思いをさせたことに対して少なからず怒りを覚えていた。
晴れない心の中、ピルスはトレについて行くと
「着いたわ。ここが、ハーヴェス王国よ」
「...!」
心を奪われた。
・色々な人族が行き交い、目新しいものが並ぶバザー
・綺麗に舗装された街道に、そこに沿うような形で並ぶ幾多の店や家
・空を覆ってしまいそうな大きな船
・地平線のどこまでも続いていそうな線路と列車

どれも村にはなかったものでピルスは目を輝かせ、気がつけば色々なところを見て回った。
「どうかしら?」
「!...ま、まぁまぁです。」
トレに感想を聞かれると、ピルスは我に帰りトレにツンとした態度で答えた。
しかし、首元に咲く花は満開であり、とても楽しんでいることが見てとれた。
「それより、流石に歩き疲れてしまいました。お家はどこでしょうか?」
ピルスは話題を逸らし、家に行きたいと言い出した。
その語気からは、おそらくこの街に家があるのであろうという期待が感じ取られた。
「...残念だけど、この街に私たちの家はないわ。」
「えっ、そうなんですか。」
と言うと、少し花が萎れ残念に思っていることが見てとれた。
「では、なぜここに来たんですか?」
「半分はお仕事よ。」
「...もう半分は?」
「貴方が好奇心旺盛ってお母さんが言ってたから、見せてあげようと思って」
「...いらないお節介です。」
「僕は外の世界をことを学ぶために村を出たんです。遊ぶために外に出たわけじゃないんですから。」
「そう...」
「......でも、ありがとうございます。」
ピルスは、外の世界に出ることを許してくれた祖父母を想い、真面目に外の世界のことを知ろうとしているとトレに伝えるとともに、自分のことを想いここに連れてきてくれたトレに感謝した。
「それでお仕事とは?はやく済ませてしまいましょう。」
「そうね、じゃあ行きましょう」
そう言うと、トレは手を差し出してくる。
ピルスは少し迷ったが、その手を繋いで歩いた。
トレに連れられて歩くと、王城に着いた。
絵本や物語でしか知らないお城に、ピルスは緊張しつつも興奮していた。
そのまま城の中を通され、絢爛な建物の中を眺めながら進むと一つの部屋に行き当たる。
トレが部屋をノックすると
「どうぞ」
と部屋から声が聞こえる。
「お帰りなさい。」
綺麗なドレスを着た女性が立っていた。

「ただいま、姫様。」
トレは友人のように姫に挨拶を返した。
「あら、その子は?また拾ってきたの?」
「いえ、この子は違うわ」
「見ての通り、私の子よ。」
トレはピルスの背中を押すと、
「初めまして、僕はピルス・ランディアと言います!」
少し声が裏返りつつも、ピルスは慌てて自己紹介をする。
「こちらこそ初めまして、私はアイリス・ハーヴェス、この国の王女よ」
と丁寧に返す。
「お、王女様?」
「ええ、そうよ。よろしくねピルス君」
アイリスはピルスに挨拶を返すと、トレの方に向き直る。
「トレ、貴女子どもがいたのね。」
「ええ、ちょっと色々あって」
「そう、それで今回の依頼はどうだったのかしら。」
「判断は保留するという解答でした。」
「まだ、ハーヴェス王国側からの接触しかないので、ユーシズからの接触を待ってからどちらにつくか決めると言われました。」
「そう、いい判断ね」
ピルスは、自分の村についての話だと子供ながら理解すると
「あの、僕たちの村をどうする気なんですか?」
不安に思い、話を聞こうとする。
「貴方の村はね、この国とユーシズという国の二つの国の境に位置しているの。」
「もし二つの国で何かトラブルが起きた時に、村の人たちを守ろうと思っているのよ。」
アイリスは、ピルスに優しく諭すように告げる。
「でも、そのために貴方たちの村がどちらに付くか知っておかないといけないの。」
「だから、貴方のお母さんとその仲間たちにお願いして、貴方たちの村に行ってもらったのよ。」
アイリスは、おそらくピルスが疑問に思っているだろうことを補足しつつ伝える。
「そうだったんですか。」

ピルスは少しショックであった。
もしかしたらトレは自分を想い、村に会いに来てくれたのだと少し期待していたからだ。
自分を外に連れ出したのは本当に義務感からだと分かり、悲しく思った。
そこでピルスは自身の内なる思いに気がついた。
(自分はトレに親子として愛してほしい)

そんな思いを抱くピルスをよそに、トレは依頼の報告を進め、それを終えると日が傾きつつあった。
「どうかしら?今日はここに泊まって行ったら?」
アイリスは、二人に提案すると、トレはこれを快く受け入れる。
ピルスは食べたこともない料理や飲み物を出され、喜びつつも気分は優れなかった。
用意された部屋で寝っ転がっていると、ノックされる。
「どなたでしょうか?」
「私よ」
ドアを開けるとそこには姫が立っていた。
「失礼しました、王女様」
「別にいいわ、それに今はアイリスでいいわよ。公務中じゃないから」
アイリスは気さくにピルスに話しかける。
「それで、何かようですか?」
「そうね、貴方何か悩んでいるんじゃない?」
「...だとしたら何ですか?」
ピルスは少し気分が悪そうに返すと
「...聞かせてもらえないかしら?」
「王女様に僕の悩みがわかるとは思えませんが?」
「それは聞いてみない事には分からないわ。」
「分かりますよ。だって貴女と僕は違いすぎますから。」
ピルスは拒絶するように返すと
「凄いわね、貴女は私と少ししか話した事ないのに、私のことが分かるの」
アイリスが煽るように返すと
「いえ、でも王女様と村の子ども。想像すれば分かることです。」
ピルスは拗ねた子どものように返す。

「そうね、確かに身分は違うし、生活も随分違うでしょうね。」
「でも、だからと言って分かり合えないという事にはならないわ。」
「なんでそんなに聞きたいんですか?」
「ただのお節介よ。」
「貴方たち親子が見てられないから手伝いたいの」
アイリスは笑顔で話すと、ピルスは悩みを伝えた。

「あの人とちゃんと親子になりたいんです。」
「でも、あの人のことや自分の心がよく分からなくて困っているんです。」
「僕は、あの人と会ったことがなくて、ずっとおじいちゃんとおばあちゃんに育てられていました。」
「あの人のことはおじいちゃんとおばあちゃんの話からしか知らなくて」
「それにおじいちゃんとおばあちゃんはあの人のことを話す時、とっても寂しそうな顔をしていたから」
「僕はおじいちゃんとおばあちゃんのことを傷つけたあの人のことを許せないって思ってました。」
「でも、実際に会って、話して、一緒に居て、あの人を母親として見る自分が居て、僕はどうしたらいいか分からないんです。」
アイリスは、ピルスの話をしっかり聞くと
「そう、難儀なことね」
と同情でも共感でもなく、聞き手として素直な感想を返した。

「おじいちゃんとおばあちゃんは、どうしてトレが家を出て行ったかは教えてくれた?」
「外から来たエルフに恋をして、おじいちゃんとおばあちゃんとまだ種子だった僕を置いて行ってしまったって」
「なら貴方はそのエルフに対しても怒っているの?」
「...分かりません。でもおじいちゃんとおばあちゃんを傷つけたのは事実なので、怒っているとは思います。」
アイリスはそのことを聞くと、笑い始めた。
ピルスは馬鹿にされていると思い、ムッとすると
「ごめんなさい。けれど貴方たち本当に似ていると思って」
「えっ?」
「貴方はとっても親切だって言っているのよ。あの人たちと同じように」
「貴方はおじいちゃんとおばあちゃんのために怒っているのよ」
「誰かのために怒れるってことは、それだけ貴方が他者を想える優しい子ってことじゃない」
アイリスは笑いながら言うとピルスは赤くなる。
外の世界の自分を知らない人間に褒められるなんて思ってもみなかった。
「何かしなくても貴方たちは親子として接し合えると思うわ。」
「でも、自分の思いを蔑ろにしないように気をつけて」
「それはきっと貴方を悲しませてしまうから。」

アイリスはピルスの相談に対して自分なりの答えを伝えると、
「はい、肝に銘じておきます。」
「それと、ひどいことを言ってすみませんでした。」
ピルスは少し胸を撫で下ろすとともに無礼なことを言ってしまったと思いアイリスに謝る。
「いいわ、でも一つお願いを聞いてくれるかしら?」
「なんでしょう?」
「トレを連れていったエルフと仲良くしてあげて」
「なるべくやってみます」
ピルスとアイリスが話し終えると、トレが部屋に入ってくる。
トレは、二人がどんな話をしたが聞きたがったが、二人はそれを秘密にし、アイリスは部屋を後にした。
明朝、まだ、日が上りきっていない時間にトレとピルスはアイリスに見送られて王城を後にした。

「お家は街からかなり離れた森の中にあるわ、しばらく歩くわよ。」
「そうなんですか。なぜ街に住まないんですか?」
「私はやっぱりメリアだから森の中の方が落ち着くの」
「それに、色々あって他の人たちとあまり仲良くできないのよ。」
「どういうことですか?」
「...あの村の常識と普通の人たちの常識が全然違うからよ。」
「この国は多くの種族が行き交っているから他の国に比べて差別というものは少ないわ。」
「それならいいんじゃないですか?」
「...この国の人たちは気持ちの移り変わりが激しく、また思ったことを正直に言うから喧嘩になりやすいの」
「それに蛮族を受け入れることは実際ほとんどないし、多くの人は同じ人族でも穢れを持っているだけでその者を嫌い傷つけるわ。」
「穢れですか。」
「簡単に言うと、蛮族に似ている人族のことね。」
「どうしてそんなことに...」
「分からないわ、けれど私や彼はそんな子たちを受け入れて助けていたから普通の人たちに嫌われた」
「そういうわけで、街には住みたくないの。」
「そうなんですか。」

自分たちを捨ててのうのうと生きていたわけではないとピルスは知るとともにもっとトレのことが知りたくなった。
「トレさん」
「何かしら?」
「その、もっと貴女のことを教えてもらえますか?」
「気になることでもあるの?」
「子どもが母親のことを知りたいと思うのはおかしいでしょうか?」
「...いいえ、おかしくないわ。」
トレは家に着くまでの間、自分の過去、ネスとの日々とソルムやベニグスたちの話を家に向かいながら伝えた。
家に着く頃には、ピルスは怒りよりも尊敬の念をトレたちに抱いていた。
そして、同時に疑問に思ったことをトレに質問した。

「どうして、僕も連れていってくれなかったんですか?」
「...ピルスはおじいちゃんやおばあちゃんはどうして私がネスと一緒に行くことを反対したと思う?」
「寂しいからじゃないんですか?」
「それもあるけれど、おじいちゃんとおばあちゃんは分かっていたの。」
「何をですか?」
「彼と一緒に歩くことはとっても辛いってことをよ。」
「彼はね、私やおじいちゃん達を巻き込まないように村を出たの。」
「おじいちゃん達ですら躊躇してしまうような事をしようとしていたから。」
「それは一体なんですか?」
「みんなが、あの村のように過ごせる世の中にすることよ」
「でも、お母さんはさっき普通の人はそんなこと思わないって」
「ええ、そう思う人は少ないわ。」
「だから、彼はほとんど報われなかったわ」
「彼に助けられた人は感謝こそすれど、彼が行おうとしている事を知ると、みんな彼から離れていったわ」
「そんなの息苦しいって言ってね」
「おじいちゃんたちはそうなるって分かっていたから、私が彼と歩む事を反対したの」
「私は、それでも彼と一緒にいることを諦めなかったから、おじいちゃんが折れてくれたけど、一つ条件を出されたわ。」
「どんな条件ですか?」
「貴方を村に置いて行くことよ」
「私や彼がどう生きるかは勝手だけど、生まれてくる子どもにそんな辛い生を押し付けるわけにはいかないって」
「私もそれには賛成していたし、実際にとっても辛い生活だったからこれまで貴方に会おうとは思わなかったわ。」
「...そうだったんですか。」

「でもね、最近は変わってきたの。」
「中心街に行った時、飛行船を見たでしょ?これからもっと多くの種族がハーヴェスを行き交うようになるわ。」
「それに、ラージャハの方にも鉄道が繋がって、蛮族もこの国に来るようになる。」
「この国の人たちの意識ももっと変わって、彼の理想に近づいてきているの」
「姫様も、彼の理想に共感を示してくれて、その意識改革に協力してくれているし」

そう語るトレの顔は笑顔であり、ピルスはここまで母に思われているネスに嫉妬した。
「ネスさんはとっても良いエルフなんですね。」
「貴方もきっと仲良くなれるわ」
「そうでしょうか?」
「ええ、だって貴方は私の子だもの」
「...そうですね」
ピルスは少し恥ずかしそうに顔を背けながらトレと一緒に手を繋ぎながら家へと向かう。

手を繋ぎ、歩幅を合わせて、歩いて行くその姿は母と子のようだった。

父子:

 ピルス達はゴダの森にある家へとたどり着くやいなや
「お帰りなさい!トレさん」
一人、駆け寄ってくる女の子がいた。
「その子は?」
「ただいま、ベニちゃん。」
「この子はピルス、私の子よ」
「こ、こんにちは」
「...?新しく家族になる子ってこと?」
「違うわ、血が繋がっているってことよ」
「いえ、これからこの子もここで生活するから、間違ってはないかしら」
「.....」
「あの?」
「ベニちゃん?」
次の瞬間、ベニグスは家の方に走って行くと一人の男を連れてくる。
「なんだ、ベニ慌てて」
「いいからいいから!ちょっと見てよ!!」
男は腕にまとわりつくベニグスを鬱陶しそうにしながら、ピルス達を見る。
「トレさん、帰ったのか」
「ええ、お仕事はとりあえず片付いたわ」
「その子は?」
「私の子よ」
「...は?」
「私の血のつながった子よ」
「えっと、こんにちは」
「...トレさん、子ども居たのか」
「ええ、そういえば二人には言ってなかったかしら?」
「聞いてねえよ!」「聞いてないよ!」
二人は息を合わせて声を荒げると、ピルスは隠れるようにトレの後ろへと移動した。
その様子をみた二人はハッとすると
「ごめんね、大声を出したりして」
「...悪い」
男は、屈んでピルスと目線を合わせながらそういうと、すくっと立ち上がり
「とりあえず、詳しい話は家で聞かせてもらえるか?」
と言い、家の方に向かった。
ピルスは、
(自分はこの人たちと仲良くできるのだろうか)
と不安に思っていた。

 家は質素な作りをしているものの、木の温かさを感じるような様子であった。
ところどころの家具は古く色褪せているものの、手入れが行き届いており素朴な匂いがピルスを落ち着けた。
4人は席に着くと、
「とりあえず自己紹介をしましょうか」
「私はベニグス、14歳のアルヴの女の子だよ」
「俺はソルム、見ての通りナイトメアだ。」
「初めまして、僕はピルス・ランディアです。」
「お二人のことは道すがらお母さんに聞きました。」
「とても優しい人たちだと」
ピルスがそういうとベニグスは顔を赤らめ、ソルムは露骨に目を逸らす。
「今日からピルスもこの家で生活させたいんだけど、二人はいいかしら?」
「構わないけど、フォレストさんはこのことを知ってるの?」
「いえ?でも彼なら許すでしょう」
「そういえば、そのフォレストさんはどちらにいらっしゃいますか?」
「家の裏手にため池があって、そこで水浴びしてるから待ってればそのうち帰ってくると思うよ」
「僕、挨拶に行ってきてもいいですか?」
「別に構わないと思うけど、急がなくてもいいんじゃない?」
「いえ、こういうのは早い方がいいので」
ピルスはそう言うと早足で家を出ていく。
「...居心地を悪くさせたな」
「私たちが困惑してるの、分かっている感じだったね」
「まぁ、これから慣れていけばいいのよ」
「いや、まずあんたは説明してくれ」
「え?説明するも何も、あの子は私の子で、これから一緒に暮らして行くってだけよ?」
「いや、そこじゃないよ!」
「あの子のお父さんは"誰"なの?」


ピルスは少なからず落胆していた。
トレから聞いて想像していた二人の対応とは大きく違っていたからだ。

(受け入れてくれるんじゃないの?)
話に聞いていた二人ならそのまま受け入れてくれると思った。けれど現実の二人はずっと彼に対して困惑したままだった。
(まぁ、いいや。期待しすぎただけだ)
そんなことを考えながら、目的の池に到達すると
ぷかぷか浮いているエルフを発見した。
「あの!」
ピルスが声をかけると、そのエルフは彼に近づいてくる。
「こんにちは」
そのエルフは池から上がりながらピルスに声をかける。
「こんにちは、あなたはフォレストさんですか?」
「うん、そうだよ。君は?」
「僕はピルス、ピルスランディアです」
「ランディアと言うと、トレの親戚かな?」
「はい、トレさんは僕のお母さんです」
「へぇ、トレに子どもが居たのか。知らなかった」
「僕もあの人が母親だって知ったのはつい先日です。」
「お母さんは僕を植えてすぐに貴方と一緒に村を出て行ってしまったから」
「...そうなんだ」
「今日からお世話になります」
「うん、よろしくね」
それ以上、二人は特に会話をしなかった。
ピルスはフォレストが着替え終わるのを待って、二人で家へと戻った。
---
二人が家に着くと、3人は
「おかえり」
と声をかけた。

家族:

ピルスが家へときてから数週間が経った。
ピルスの当初の懸念とは裏腹に彼とソルム、ベニグスとの仲はすぐに進展した。
ピルスは生来の好奇心と頑固さからしつこいほど二人についてまわり、二人はそんな彼を無碍にせずよく接した。
そうする事で互いに理解を深め、関係を深めて行った。
二人にとってピルスは、可愛い弟であり、ピルスに取って二人は尊敬する兄であり姉であった。
しかし、このまま全員との関係は滞りなく進展するものと思われたがそうはいかなかった。
「フォレストさん、街に行きたいのですが連れて行ってもらえますか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます。助かります」
ピルスはどこまでもフォレストに対してだけは他人行儀で接していた。
「ねぇ、どう思うトレさん?」
「まだ他人行儀よね、もう少し打ち解けられないかしら」
「私たちでなにかきっかけを作れないかな?」
「やめとけ、これは本人たちの問題だろ」
「そんなこと言いつつお兄だって心配してるじゃん!」
「さっきからリビングをうろちょろして、人のこと言える!?」
ピルスとフォレスト、それぞれと仲良くできている3人は、どうにか仲良くさせたいという気持ちと本人たちの関係に水をさすことに躊躇いの感情をもち、悶々とした日々を送っていた。
「まぁ、こういうのは時間が解決してくれるものよ」
「また、トレさんは気の長いことを言うー」
「ソルムも言ってたでしょ、本人たちの問題だって」
「それに、心配いらないわ。」
「だってあの2人は親子なんだから」
「...(いや血は繋がってないからまだ違うでしょ)そうだね」
「... (いや血は繋がってないからまだ違うだろ)結構似てるところあるしな」

トレはフォレストと正式な婚姻関係にあった訳ではないが、それでも現在に至るまで愛し合っている。
フォレストが"フォレスト"として、より精力的に活動し始めるまでは、恋人同士の関係であったと言っていい。
しかし、メリアであるトレは、本来エルフであるフォレストの子を宿すことはできない。
そのため、両親からの条件によって顔も知らぬ相手と夜を共にし、産まれたのがピルスであった。
にも関わらず、3人はピルスにどことなくフォレストではないフォレストらしさを感じていた。
「普段はすごい礼儀正しくて真面目な子って感じなんだけどね」
「時折見せる笑顔とか親切なところとか似てないはずなのに似てる感じがするんだよね」
「助ける、とか、救うって感じじゃないんだよな、あいつの優しさ。」
「あの人のよく言う正しさとも違う」
「うん、そうね」
「トレさんは分かるの?」
「ええ、分かるわ」
「本当に、親子だなって思う」
「「?」」



その日の午後、ハーヴェス王国は急な大雨に襲われた。
ソルムとベニグスは傘を持って2人を迎えに行き、森の入り口付近でピルスに叱責されるフォレストがいた。
「いい加減にしてください!」
ピルスの怒号が響く。
2人は、ピルスが怒る時は声を低くして、冷ややかな目で怒ることは知っていたが、
このように感情をむき出しで怒る姿を見たことがなかった。
ピルスは2人に気づいて、ハッとすると
「その、これは、えっと」
言葉を詰まらせた。
「えっと、何かあったの?」
ベニグスが戸惑いながらも尋ねると
「なんでもないよ、ただ僕がピルス君を怒らせちゃったんだ」
いつもの笑顔を浮かべつつフォレストは答えた。
笑顔を浮かべるフォレストに2人は安堵するが、その表情に対して睨むピルスにソルムは気づいていた。

その日からピルスは露骨にフォレストから距離を置き、今までは頼んでいたこともフォレストに対しては全く頼らなくなった。
今では、フォレストに会わないようにしているようだった。
トレとベニグスは流石に何か助け舟を出そうと画策してた。
しかし、ピルスは取り立ててフォレストを卑下したり罵倒したりせず、フォレストも特にピルスに対して何も言わなかったため、きっかけを作れずにいた。
そんな中、
「ピルス、ちょっといいか?」
「なんですか?ソルムさん」
「ちょっと来い」
ソルムはピルスを連れて散歩に出かけた。

「ピルス、お前はあの人のこと嫌いか?」
「フォレストさんの事ですか?なんですか急に」
「家族なんだから仲良くしろとか言うつもりですか?」
ピルスはこの話題に対して露骨に嫌がり捲し立てるように言う。
「...違う、そうじゃない」
「じゃあなんですか!別に喧嘩してるわけでもないんだしいいじゃないですか!」
「いいから聞け!」
ソルムはピルスを制止するように大きな声を出す。
「ピルス、嫌いなら嫌いでいい。」
「けどなんであの人のことを嫌うんだ?」
「どうしてあの人を避けるんだ?」
「そんなの決まってます!」
「あの人はおじいちゃんやおばあちゃんが寂しい思いをすることになった元凶です!」
「それに、この前から勉強の為に何個か神殿に行ったら、行った先々で言われたんです!」
「お前の父親はおかしいって!」
「そんな人を好きになれますか!」
ピルスはとても不満を溜めた顔でソルムに告げる。
ソルムは少し目を伏せながら
「なら、俺やベニグスのことはどう思ってる?」
「お二人のことはよく慕っていますよ」
「"ナイトメア"と"アルヴ"なのにか?」
「他の人たちがお二人のことはどう思っているのか知りませんが、少なくとも僕にとってお二人はとってもいい人です」
ピルスがそう告げるとソルムは悲しそうな顔をピルスに向けた。
「なんですか?」
「お前、賢いのかバカなのか分からねえな」
そう言うソルムの目は黄金に光り、角が伸びていた。
「なんで怒ってるんですか?」
ピルスは怯えながらそう言うと
「なんでキレてると思う?」
「...僕がフォレストさんの事を嫌っているから?」
「違うな」
「お前はなんでフォレストのことを嫌うんだ?」
「おじいちゃんやおばあちゃんが言ってたから、それに神殿の人たちも」
「なんで俺やベニグスのことは好きなんだ?」
「お二人がいい人だって....」
「気づいたか?」
「お前が最低な野郎だってことに」
「お前がやってたことは結局..
「やめてください!」
「...ちゃんと分かりましたから」
「そうか、ならよかった」


ピルスは目に涙を浮かべながら走り出す。
その日、ピルスは家に戻らなかった。
次の日もその次の日も戻らなかった。
もちろん探しに行こうとしていたが、それをソルムは止めた。
心配であったがソルムの言葉を信じ、しかし3日が経ち流石にまずいと思い探しに行こうとした時
「ただいま戻りました!」
元気な声で帰ってきた。
「フォレストさん!お時間ありますか!?」
「う、うん。今日は暇だけど」
「なら話を聞かせてください!」
「...神様の勉強をしたいってことかな?」
「違います!貴方のことを教えてください!」
「なら私たちは、」
「お母さんも一緒です!」
「あ、ソルムさんとベニグスさんもです!」
「皆さんのお話を聞かせてください!」
「話と言っても、何を話せばいいのかな?」
「皆さんの事です!」
「僕は、皆さんの事何も知りません!なので教えてください!」
「僕はちゃんと、皆さんと家族になりたいんです!」
ピルスがはっきりとそう言うと
「まずは僕から話します!」
ピルスはまず自分の生い立ちを話した。

・祖父母に育てられた

・母親(トレさん)がいる事は告げられていたが会ったことがないため、伝聞でしか知らなかった

・母親を連れて行ったエルフ(フォレスト)についても教えられていた

・好奇心が強く、同年代の友達と遊ぶよりも森の中を探検したり精霊たちと会話したり遊んだりすることを楽しんでいた。

・そしてつい先日、トレさんが会いにきてくれて連れ出してくれた。

ピルスは自分のことをひとしきり話すと今度はベニグス、次にソルムと続いていった。
2人が話終えると、今度はフォレストの番になった。

しかし、フォレストは
「話さなきゃダメかな?」
「何かやましいことでもあるの?」
「いや、そういうわけではないけど...」
フォレストは困りながらトレに目で助け舟を頼もうとすると
「フォレストさん、僕は貴方が嫌いです」
ピルスは唐突に静かに伝える。

「でも、この前まではなんで貴方が嫌いなのか分かっていませんでした。」
「最初は、おじいちゃんやおばあちゃんに貴方の事を聞いていたし、神殿の人たちから貴方の悪口を聞いたので、それが原因だと思ってました。」
「でも、それはあくまで"他の人"が貴方を嫌う理由であって、"僕"が貴方を嫌う理由じゃないって気づきました。」
ピルスはソルムを一瞥すると、すぐにフォレストを向いて話し続ける
「そのことに気づいて、僕はどうして貴方を嫌うのか、考えました。」
「それで分かったんです。」
「うん」
「貴方はいつも一歩引いたところにいる」
「僕に対してだけじゃなくて、ソルムさんやベニグスさんに対しても」
「前に貴方に怒った時も、あの時は神殿の人に貴方の悪口を言われた時でした」
「貴方は何も悪くないのに謝った」
「そして、貴方は僕にこう言った「仕方がない」って」
「僕はその一言にすごく怒りました」
「それは、貴方が"他人と分かりあう"事を諦めている事を表していたから」
「そして、貴方の態度はソルムさんやベニグスさんの時とその神殿の人に対して応対する時の同じだった。」
「もちろん、誰とも分かり合えるとは思わないです。」
「でも、ソルムさんやベニグスさんに対してはいいじゃないですか!」
「分かり合えることに期待しても!」
「...色々言いましたが、ともかく僕は、ソルムさんやベニグスさんに"受け入れられる事を期待しない"貴方が嫌いです!」
「"どうせ分かってもらえない"って思ってる貴方が大嫌いです!」
ピルスは熱くなりながら言いたい事を言った。

「ピルス、もういい。」
ソルムはピルスを止める。
今度は少し笑みを浮かべながら
「フォレスト、俺やベニグスはあんたが何かを隠してる事は知ってた」
「でも俺たちはそれを問いただすことはできなかった。」
「うん、だってそれを聞いてしまったら関係が変わってしまうような気がしてたから」
「でも、もういいよ。」
「私たちはちゃんと貴方やトレを見て育ったわ」
「きっと、ちゃんと受け止められるから」
「だから、今度は私たちを頼ってよ。」
ベニグスとソルムはフォレストに思いを告げる。

「...もういいんじゃない、ネス?」
「トレ」
「もう親代わりじゃなくても、もう普通を装うとしなくても」
「...全く、君といい姫様といい、最近の子たちはなんでこんなに心を揺さぶって来るのかな。」
ネスは涙を流す。
けれどその顔は笑っていた。
「...うん、正直に話すのはすごく怖いけど、またもう一度だけ期待してみようかな」
「ピルス」
「なんですか?」
「君にも...期待していいかな?」
「それは話して見たら分かるんじゃないですか?」
ピルスは笑顔でネスに告げる。
「うん、なら最初から話そうかな」

そこから告げられた内容はまさに嘘に塗れた人生であった。
・仲間に告げた嘘
・自分に対して吐き続けている嘘
・そしてソルムやベニグスに対して吐いている嘘
ネスとして見た今までの人生の話を初めて聞いた3人は少し唖然としていた。
それを見たネスは
「ごめんね」
「僕はとんでもない嘘吐きだってバレたくなかったんだ。」
「僕を慕ってくれる2人にはそのままでいて欲しかったから」
「それに、君たちを救った人が"異常"なやつだったと思って欲しくなかったから」
「君たちを救うのも"普通"の事だって思って欲しかったんだ。」
「ごめんね、騙して。」

「それは、「ネスさんって本当に凄い人なんですね」
ソルムが声を出そうとすると、ピルスが感嘆の声を上げる。
「えっ」
「だって、今までどんなに辛くても頑張って生きてきたんじゃないですか。」
「僕は貴方を尊敬します。」
「でも、僕は嘘をついていたし、そのせいで多くの人を傷つけたしみんなを騙してたんだよ?」
「でも、みんな救ってきたじゃないですか?」
「...やってきたことは事実として残ってますよ。」
「貴方が頑張って生きたから、ソルムさんやベニグスさんは救われました。お姫様もです。」
「それに、お母さんにまた生きる意味をくれました。」
「貴方は凄い人です!」
「僕も貴方みたいに強くて優しい人になりたいです!」
ピルスは笑いながらそれでいて真っ直ぐな視線をネスに向けながら告げる。

「言いたい事言われちゃったね、ソルム兄」
「ああ」
トレは尊敬の眼差しを送るピルスを見て、またそれを受けて嬉しそうに泣くネスを見て改めて思う

ああ、本当に親子なんだな と

学園へ

家族での生活が板につき、緑が芽吹き始めた頃、トレとソルム、ピルスはアイリス姫に呼ばれ城へと向かった。いつものによる連絡ではなく、正式な手続きをへての入城となり、それが全員にアイリス・ハーヴェス個人ではなく、ハーヴェス王国からの依頼であることを意識させた。
ピルスは冒険者ではなく、またアイリス姫の私兵でもないいわば独立した存在であり、このような招集は初めてのことだった。
緊張しソルムの裾を握るピルスに対し、ソルムはピルスの肩を抱き不安を拭った。
トレはノックをし、どうぞという声が部屋から告げられると部屋を開ける。
アイリスが席に座っている。表情は柔らかく見えるが、ピリついた気配を漂わせており、ピルスは気圧されてしまった。
「よく来てくれたわね、3人とも。早速で悪いのだけれど仕事の話をしましょう。」
「ああ、別にいいが、今回のはなんだ?いつものでもなければ、時々あるやつでもない。この稀なやつは?」
「その話をする前にピルスくん、大丈夫かしら?震えているわよ」
「は、はい!大丈夫です。すみません、緊張してしまって」
「いつもなら緊張しないでと言いたいところだけど、今回に限ってはそうは言えないわね。しっかりしてもらいたいわ」
アイリスはピルスの気持ちを理解しつつも冷たく言い放つ
「それにしてもピルスを指名するなんて、アイリス姫は何をお望みなのかしら?」
「そうね、率直に言えば貴方達からピルスを貰いたいってところかしら?」
「はぁ?なんの冗談だ?」
「えっ...?」
「...どういう事か説明願えるかしら?」
「簡単な話よ。ピルス君、貴方の村の件が進展したわ」
「あ、そうなんですか!それで?おじいちゃん達はどうするって?」
「結論から言えば保留。ハーヴェス王国にもユーシズ公国にも帰属しないと言っていたわ。」
「ふん?それで何故?」
「ユーシズはその対応に際して、「我が国に村民を預けてみないか?」と交渉を持ちかけたのよ。」
「優れた魔法の文化を持つあの国の魅力を見せることでこちらに帰属させようって狙いね」
「でも、村の人たちも馬鹿ではないわ。彼らはユーシズの汚点を知っていたからね」
「汚点...ですか?」
「ええ、昔、まだ蛮族があの国で悪さをしていた頃に蛮族たちをどうにか駆逐しようとした王さまが、リカントごと蛮族を国を追い出したの」
「何故リカントの人々が?」
「その時に暴れていたのがライカンスロープという一見するとリカントと見分けがつかない種族でね、人々を助けるためにリカント達を追い出したのよ。そして、そういった人々を吸収したのがハーヴェス王国なの」
「そんな過去が...それで?おじちゃん達は誰を行かせたんですか?」
「おい、まさか?」
「ええ、その危惧の通りよソルム。村での寄り合いによってピルス君、貴方が代表として選ばれたの」
「僕...ですか」
「ええ、だからあなたを貰いたいと言ったの。これはハーヴェスにとっても大事なことだから」
「そして、今日トレとソルムを呼んだのは別のわけよ」
「「?」」
「直観で答えて、ピルス君に魔法の才能はあるかしら?」
「「ある」」
二人は即答したのだった。
「そう。ならこれも渡しておくわ」
そう言うと、アイリス姫は一つの封筒を手渡した。
「姫さま、これは?」
「ユーシズの学園"七色のマナ"への推薦状よ」
「ピルス君、みんなが貴方を選ぶ際に貴方の森羅魔法の能力をユーシズの外交官に伝えたところ、それならと推薦状を頂けたみたいよ」
「けど、ここはユーシズの名門校。入学は出来ても卒業できるのはそうはいないエリート校よ。だから魔法の適正が分かる二人に来てもらったというわけ」
「なるほどな」
「学校、ベニちゃんは...だめかしら?」
「ダメね、ベニグスは解決されたとは言え数ヶ月前の魔神使い事件やキニスの街についてので警戒を強めているから」
「そう...」
「なんでネスには聞かないんだ?」
「あの人、神聖魔法以外はからっきしでしょ?」
「そういえばそうだな」
「学校...学校。僕、学校に行けるんですか!!?」
それぞれの思惑と疑問を超え、ピルスは驚きと喜びが入り混じったような顔でアイリスに告げる。
「ええ、そうよ。しっかり学んで来なさい。」
「わぁ...学校、夢だったんです」
ピルスは目を輝かせ、顔を綻ばせ喜んだ。
「でも一つ約束よ。ピルス君」
「はい、なんですか?校則は守る!とかでしょうか?」
「ふふふ、それも大事だけど、まずは家族に了承を取らないとね。ここからは通えないのだから」
「あ...そうか」
ピルスはユーシズの学園に通うには家を出ないと行けないと分かると肩を落とす。
「行っておいで、ピルス。外の世界の驚きがきっといっぱいあるわ」
「そうだな、色んな奴らに会ってこい。俺やベニグスだけじゃなく、色々とな」
「でも、僕はみなさんと一緒にいたいし、まだ学んでない事もいっぱいあります」
「それは、後でも出来る事だ。」
「でもこの機会を逃せば、学園には行けなくなるかもしれない」
「そうね、村がハーヴェスについた場合、今回のように入学が推薦とは行かなくなるわね」
「ピルス、貴方は外の世界を知るためにここに来たんでしょ?なら飛び込まなきゃ...あの時の心と今の好奇心を大切になさい」
それぞれがピルスに励ますような言葉を言うと、ピルスは俯きつつも
「はい、頑張ります」
と力強く言うのであった。
その日の夜、学園に入るという話が他の二人にも告げられると二人は
「「行っておいで」」
「でも、ピルスは可愛いんだから、悪い人に付いていったらダメだよ!きっと悪いことされちゃうから!」
「大丈夫です。僕はお姉ちゃんみたいな優しい人は分かりますから」
ピルスを心配するベニグスに対して、ピルスは明け透けにそう言うとベニグスはピルスにぎゅっと抱きしめる。
「ピルス、本当なら一緒に着いて行ってあげたいんだけど...」
「大丈夫ですよ。むしろ、ハーヴェスの英雄である皆が一緒に来たらユーシズの方は困っちゃいますから」
「そっか、なら旅立とうとする君に祝福を。そして神々の加護を祈ろう。」
「ありがとうございます。」
「それと、」
「?」
「父親として、君の成功を祈るよ」
「...はい!」
翌る日、ピルスは城へと呼び出され正式に入学の準備が行われた。これからは1人でできるようにアイリス姫から直接手解きを受け、そのままユーシズへと向かった。
直接、学園職員へと入学届を渡し一度祖父母のところへ戻ると手厚い歓迎を受けた。
村の人々も祖父母も強く喜んでくれているが、その反応は少しだけ作為を感じさせたがピルスは
「皆さんのおかげでユーシズの学園にお世話になることになりました。」と期待された言葉を告げた。例え、村のみんながピルスに役割を押し付けたとしても、ピルスにとって学びの機会を得られたのは大きなことであり、また出ていった村の人たちに喜ばれることは嬉しいことだったのである。
その日からしばらくの間、ピルスは祖父母の家に泊まり、学園の新学期を待った。祖父母はしきりにそれまでのピルスの生活を、いや主にネスとトレについてしつこく聞いてくるのであった。
いい親をしてくれているのか?、2人の関係はどうか?、喧嘩はしていないかなどピルスとトレを想う気持ちが感じられると共にネスに対する怒りのようなものも感じていた。
「まさか、トレという女がいながら人間の女を作るなんてなんてやつだ!」
「ですから、これには事情が」
「あるとしてもだ!どうせ子どもができたらトレやこの子を捨てるんだろ!」
「そんな事...「しませんよ、絶対」
ピルスは祖父母のやりとりの最中に口を挟む。
「お前は分かって「分かってないのはおじいちゃんの方です」
祖父がピルスを諌めようとすると、ピルスはその言葉を制して告げる。
「ネスさんはそんな人じゃないです。それに、ネスさんと懇意にされている方は何もネスさんだけに好意を向けているわけではなくて、お母さんも大切にしています。」
「2人とも、その方の事が大好きですし、その方も2人を愛しています」
「もちろん、おじいちゃんが不安になるのも分かります。けど、絶対にそうはなりません」
「僕のお父さんは、そんなことしません...!」
ピルスは毅然とした態度で、静かにしかしして力強く言うと祖父はそれ以上は何も言わなかった。
編入日の前日、ピルスは村を出てユーシズに向かおうとすると祖父に一本の枝を渡される
「おじいちゃん、これは?」
「これはお前の母が2度だけ使った宿木の棒杖だ。」
「1度目は森羅導師としての素質を見出された時...」
「もう1度目は?」
「2度目はエルフに心を救われ、もう一度森羅導師として生きようと決めた時だ。」
「...大切に使わせていただきます」
祖父にぺこりとお礼をすると、ピルスはユーシズへと歩き出す。
恐怖はある、寂しさも当然だ。
だが、胸に秘めた思い出と預かった枝がピルスを力強く励ますのだった。

家政夫:

ピルスが学園と神殿に通いつつ冒険者の仕事をこなしそれに慣れてきたころ、いつものように冒険者ギルドに向かうと見知った人を見つけた。癖のある銀髪を結び季節に合わない厚着をした女性
「エリカさん、こんにちは!今から依頼ですか?」
「あらピルス君、こんにちは。いい依頼が無いか今から確認するところよ」
「ご一緒してもいいですか?」
「ええ、いいわ」
ピルスはエリカのほうに近寄っていくと、服から香水の匂いに付随してつんとした臭いを感じた。
気になったピルスはケイナインチェイサーを詠唱すると、エリカの服から埃の臭いがしている事に気づいた。
「エリカさん、その、つかぬ事をお聞きしますが、お洋服は洗濯していますか?」
「ええ、もちろんよ?」
「そうですか...!あの!今日はお仕事は辞めにして、お部屋に行ってもいいですか?」
ピルスが意を決したようにエリカにそう発言すると、エリカは一瞬驚いたような顔をした後、冷ややかな目をしながら静かに口を開いた。
「…ピルス君、軽率に女性の部屋に行きたいだなって言うものではないわよ。」
「すいません、でもエリカさんのお部屋が気になって」
エリカはピルスに至極真っ当な意見としてそう告げると、ピルスは謝罪しつつも意見を曲げずに続けた。
「はぁ、何が気になっているのかは知らないけれど、少しだけよ。」
エリカは、ピルスのその表情を見て何かあるのだと察し、その提案を最終的に受け入れたのだった。

「ありがとうございます。あ、行く前に買っておきたいものがあるので雑貨屋に寄ってもいいですか?」
「ええ、手短にね」
ピルスはエリカに願い出ると、いくつかの品目を買いに雑貨屋へ向かった後エリカの部屋へと向かった。
エリカはピルスが何を買ったのか聞いてみると、ピルスはもしかしたら必要なものとだけ答えた。
二人はエリカの部屋につき、エリカが部屋を開けるとやはり埃の臭いがしてきた。
エリカの部屋は一人部屋にしては広く、炊事場や浴場もついた上等な部屋であった。
家具もオークの木を使ったものが大半で、寝具にはコットンがつかわれており、エリカが部屋のインテリアにも気を使っていることが見て取れる。
ピルスは、部屋に上がると、家具や板間、えりかの衣装棚などを確認していく。
「ちょっとピルス君!流石にデリカシーがないわよ」
勝手に衣装棚を開けたことにエリカは難色を示すが、ピルスはお構いなしに部屋を物色する。
ピルスは一通り部屋を調べ終わると
「エリカさん、ちゃんと掃除しましょう。全部埃っぽいです。」
と少し呆れるように言い、エリカに有無を言わせず準備を始めた。
ピルスは買ってきたものを入れた袋を開けると、そこには掃除用具が一式入っていた。
臭いから部屋が汚れていると考え、急遽買ってきたようだ。
ピルスは、エリカにエプロンと頭巾、布を口に巻き付けると自身もおなじようにした。
「まず、天井のほうから行きましょう。埃を下に落とすんです。」
ピルスがエリカに指示を与え、一つ一つ丁寧に埃を落としていく。
初めは天井、次に家具の隙間や、積んだ荷物や棚の中など、溜まりやすく見逃しやすい埃を見つけては、落とし集めて捨てていく。
「汚してないのに、埃ってたまるのね...」
エリカはその埃の量に驚いていると、ピルスは困ったように笑った。
家具一つ一つの埃を取り、服についてしまった埃の臭いを取るため服を洗いなおし、板間についた埃をこそぎ、箒で掃いたのち、濡れ布巾で家具と床を拭き終わる頃にはすっかり夜になってしまっていた。
「ふぅ、ようやく終わりました」
「ありがとう、ピルスくん。初めはどうしたものかと思ったのだけれど、掃除をしてくれて助かったわ」
「どういたしまして。でもエリカさん注意してくださいね」
エリカはピルスに感謝を告げると、ピルスはその感謝を受け入れると共に、一つエリカに告げる。

「お部屋にいるときは、たまに窓を開けて換気してください。あと、何もしなくても埃はたまっていくので、何日かに1回掃除してください。」
「分かった、と言いたいところだけれど、仕事でよく家を空けているし、手入れは難しいわ。ハウスキーパーでも雇おうかしら。」
ピルスは部屋の清潔を保つ方法についてエリカに告げると、エリカはその話を受け入れつつも現状の生活では難しいことを告げた。

「それなら、僕がやりましょうか?」
エリカの話を聞いて、ピルスがそう提案すると、エリカは少し困惑しつつもピルスのしっかりした瞳を確認する。
「ピルス君が?...そうね、貴方なら信頼できる事だし、お願いしてもいいかしら。」
「承りました!」
ピルスは元気よくそう告げると、エリカは少し笑みを含みながら彼を見る。
「なら、これを預けるわね」
エリカはそう言うとピルスにスペアの鍵を渡す。
ピルスはそれを受け取ると、受益者のシンボルに結び始めた。
少し体を振ったりして、鍵が外れてしまわないか確認し、しっかりとつながっている事が分かるとにっこりと笑う。
後日、エリカが仕事を終え部屋に戻ってくると、部屋は濡れているかのように輝き、洋服からはほのかにエリカが愛用する香水の匂いが香っていた。

文通:

エリカがピルスにハウスキーパーを頼むようになってしばらくしたある日、仕事が長引き大抵の食事処が閉じており、保存食で済ませようと部屋に戻ると、テーブルの上に布がかぶせてあった。エリカが布を取ると、食事と手紙が置いてあった。

エリカさん、余計なお世話かもしれませんがご飯を作ってみました。良かったら食べてください。
冷めてしまった場合、それぞれの料理を桶の上に置いた金網の上にのせて、着火した白炎玉を水の中に入れて3分待ってください。
P.S
外食もいいですが、栄養には気をつけてください。

エリカが手紙を読み終え、改めて用意された食事を見る。
野菜と穀物を水煮した粥、香辛料をかけて焼かれ一口大にカットされた豚肉、ミルクに蜂蜜を混ぜた飲み物。
そして水を入れられた桶と白炎玉が置かれていた。
エリカは手紙の通りにすると、水が火にかけられ湯気が料理を温める。
白炎玉が燃え終わる頃には、人肌程度に料理が温まっていた。
エリカは、ひとつひとつの料理を味わって食べる。
味は普段食べに行っているレストランと比べるまでもないが、それでも自身を想って作られた料理に胃と心を満たされた。

数日後、ピルスがエリカの部屋に向かうと、手紙が置かれていた。

拝啓ピルス君、料理美味しかったわ。また、作っておいて貰っても良いかしら?
P.S
ベッドの横に冷蔵ができるタンスを置いておきました。そこに料理は入れておいてください。炊事場で温めるくらい私にもできます。

ピルスは、ベッドの横の新しいタンスを調べると、中は防水性に加工されており、永久氷片が置かれタンスの中は低い温度で保たれていた。

その後もピルスとエリカは、お互いに手紙を書きあった。

家庭教師:

木々が葉を赤らめ始めたころ、ピルスが学園帰りに部屋に向かうと、エリカも部屋にいた。
「ピルス君、ご無沙汰ね。」
「エリカさん、お久しぶりです。今日は会えましたね」
二人は挨拶もそこそこに切り上げ、各々のやることをし始めた。
 エリカは最近買った魔導書を読み、ピルスは部屋の掃除をし、料理の準備をしつつ学園の課題をし始める。
「これは学園の課題かしら?見たところ、魔法文明語の授業の」
準備を終え、料理をし始めると、広げっぱなしの課題用紙と辞書と参考書を見て、エリカが尋ねる。
「そうです。学年も後半に差し掛かってきて課題が難しくて困ります。」
ふーん、と生返事をしつつ、エリカは課題を確認すると、確かに基礎的な内容ではなく応用の内容であることが分かった。
しかし、エリカからすれば数分もかけず解けるものばかりであった。
「何が難しいのかしら?こんなもの、基礎の文法と単語の語尾、語幹に注目すれば簡単でしょう?」
 エリカは、課題の解き方を指摘しつつ、1問をさっと解いて見せた。
それは先ほどまでピルスが分からずうなっていた問題だった。
「魔法文明語は、語彙とその多くに派生形があって、一つ一つ覚えていたらきりがないわ。語幹を覚えて、語尾によってどのような意味に変形するか覚えるほうがよほど効率的よ。学園では勉強の仕方も教わってないのかしら?」
エリカは、饒舌にそして的確に魔法文明語の単語の覚え方を語りつつ、次に文法の話をしようとするとふと思い出す。
 それはまだエリカが学園の生徒であったころ、操霊術の講義に行き詰った同級生にやり方とコツを教えると、

「私にマウント取って気持ち良い?あんたみたいな高慢な女に教わることなんてないわよ!」

エリカは至って真面目に教えているつもりだが、相手からすれば上から目線で教えてやっているように感じられ、罵声を浴びせられた事があった。エリカは不安になりピルスの顔を見ると、ピルスは料理の手を止め、エリカの顔を真剣に見ていた。
「それで文法のほうはどうやるんですか?気になります」
「えっ...ええ、文法のほうはまず、最小の意味の文章を作るの。修飾された語彙を抜いても意味が通る文章をね。その後に、その修飾があるとより分かりやすくなるように文を構成していくの。文法はそのやり方のことを言うのよ。」
「へぇ~目から鱗が落ちるようです。それで他には?」
エリカはピルスの反応に少し面食らいつつも、話を続ける。コツを話し終えるとピルスはエリカに感想を述べつつ、更なる話を聞こうとする。

「…ピルス君、ご飯を作ってもらえるかしら?」
「ああすいません、つい聞き入ってしまって、今作りますね」
ピルスは手を止めていた料理を再開し始める。
どうやら、本当に聞き入っていたようだった。
「…その、ピルス君」
「何ですか。」
「私の教え方、どうだったかしら?」
エリカは過去の経験から少し不安になり、そう聞くと
「率直でわかりやすかったです。なんで自分が気付かなかったのかちょっと恥じ入る気持ちです。一生懸命勉強する気持ちはありましたが、やり方も一生懸命考えなきゃって思いました。」
ピルスはにっこり笑いながらこう返した。
「そう。」
エリカはその返答に心を撫で下ろした。

「エリカさん、これからまた時間があるときに色々教えてもらえないでしょうか。」
ピルスはエリカにそう言うと、エリカは少し呆れたような顔をする。
「...私は厳しいわよ」
わざと、少し脅すようにエリカがそう告げると、ピルスはキョトンした顔をする。
「そうですか?優しいと思いますが、なにはともあれよろしくお願いします。エリカさん」
ピルスはどこまでも明け透けにエリカへ語ると、
「分かったわ、ピルス君」
エリカはピルスから顔を背けながら了承するのだった。

その日からピルスは、3日に一度、掃除を終えた時にエリカから勉強を教わるようになった。
エリカの物言いは率直であり、聞くものによってはプライドを傷つけられるが、ピルスからするとエリカの言葉は飾らずに事実を教えてくれるため、ユーシズで彼に物を教えた誰よりも誠実で優しいと感じられるものだった。

ごめんなさい:

月が日の大部分を包み込み、息を白く染め始めた頃
七色のマナでは行事の大部分を終え、狭間の期間に入りました。あとの行事は年の暮れに行われる星見祭と、年始に控える進級試験です。
とはいえ、今急いで勉強する必要もなく、いつものように、部活動と神殿での奉仕活動、空いた時間で冒険者活動とエリカさんとの勉強を行いました。
そして、今日は冒険者活動の日でした。
偶然、エリカさんと冒険者ギルドに向かう時間が合い、2人で同じ依頼を受けました。
その日は、コロロポッカの森にあると言われる魔動機兵の残骸の調査をしました。運良く、状態の良い残骸を見つけてそれを提出すると、依頼者は大層喜び依頼料に色をつけてくれました。
するとエリカさんが
「最近、ピルスくんも良く頑張っているようだし少し奮発しましょうか。」
と、外食を提案してくれました。
最近、エリカさんはいつも以上にピリピリとした雰囲気を出していましたが、今日は特に穏やかな空気を纏っていました。なにかいいことがあったのでしょうか。エリカさんに手を引かれて、2人で南区の料理屋を巡ります。女性特有の体温の高さと柔らかな手の感触、なにより先ほどから見せてくれる柔らかな表情はこちらの心をほころばせます。
「ここよ」
エリカさんにそう告げられお店を確認すると、学園にいる貴族の方たちの間でも話題とされる料理屋さんでした。
2人でお店の中に入っていくと、ウェイターさんに案内され個室へと通されます。
店内は夜の闇を保ちつつ、マギスフィアからの光源が辺りを照らし様子が確認できます。そこには、テーブル席で黙々とご飯をいただく恰幅の良い男性、腕を組む身なりの良いカップル、同じように個室へと案内されるどこかで見たような方々、複数の女性に囲まれた会計を済ませる初老の男性など、ここがいつもご飯をいただく場所とは一線を画す場所なのを意識させます。
僕は渡されたメニューを眺めますが頭に入りません。混乱していると、
「おすすめは何かしら?」
「今の季節ですと、根菜と魚介から出汁をとったスープ、香味野菜とスパイスを使った特製のサラダがございます。」
「ではその二つと〜〜」
エリカさんは雰囲気に呑まれる事なく注文を続け、余裕のない僕の代わりにも注文をしてくれました。
ウェイターが部屋を後にすると、エリカさんは僕の様子を確認し
「緊張しているの?」
と声をかけてくれました。
「お恥ずかしながら、こういったところは縁遠くて...」
「そう。これから学園の貴族子息たちと交友を考えるのなら、この程度は慣れておかないと失笑を買うわよ?」
「...頑張ります...」
エリカさんの至極真っ当な指摘は僕に突き刺さりました。でも、エリカさん以外にそういった方と交友を持つでしょうか?
そんな疑問を持っていると、料理が運ばれてきます。それは先ほどお勧めされたスープでした。
さっそくスプーンで一口戴くと、芳醇な香りと旨みが口の中を奔ります。料理に感嘆の息を漏らし、ふとエリカさんの方を向くと
「ふぅ...ふぅ...」
エリカさんは髪をかきあげ、息を吹きかけてスプーンの中のスープを、音を立てず口の中へと迎え入れる。
「...ピルスくん、あまりそのように凝視されると、流石に食べづらいのだけれど」
「す、すいません」
一つ一つの所作の美しさに思わず見惚れて、食べるのを忘れてしまっていました。
そのまま食事に戻ろうとしますが、エリカさんの所作に目が離せません。テーブルマナーは習いましたが、このように"当たり前"にそれをなしているのは、学園でも見たことがありませんでしたから。
出された料理に舌鼓を打ちつつも、その一つ一つに対するエリカさんの所作に心を奪われ、なんだかドキドキさせられてしまいました。
「美味しかったわね」
「は、はい」
「...あ、あの!」
料理も食べ終え、エリカさんも満足したように話しかけてきました。
この店の雰囲気に背中を押され、僕はある提案をしました。
「そろそろ学園で星見祭の時期なんですが、もし良かったら一緒にどうですか?」
「それは、エスコートしてくれるということかしら?」
「...はい」
我ながらとんでもない提案だと思いますが、こうなってしまったらあとは流れに任せるのみです
「僕は冬季休みは、都合があって家には帰らないんです。それで、学園の方で年を越すので、もしエリカさんが良かったら、一緒に見たいなって」
「そう、いつがよろしいのかしら?」
「ちょうど、おかえり星が来るのがこの日で、1番よく見えるのがこの日だと言うのです。だからこの日に一緒にどうですか?」
「その日は...」
エリカさんは日にちを告げると、途端に険しい顔になってしまいました。先ほどの柔和な雰囲気はどこえやら、気まずそうにしていました。
「ごめんなさいピルスくん、誘いは嬉しいのだけれど、先約があって」
「そう、ですか」
どうやら、エリカさんはすでに星見祭に誘われているようなのです。一体誰が?と思いましたが、詮索するのも良くありません。
「本当に申し訳ないわ」
「エリカさんが謝ることじゃないですよ」
なんだかいたたまれない気持ちになりましたが、なんとかとりなします。
そのままの雰囲気で、2人でお会計を済ませ帰路に着きます。
「じゃあ、ピルスくん。またね」
「はい」
中央区へと着き、別れの挨拶をします。
「エリカさん」
「何かしら?」
このまま別れるべきだったのかもしれません。でも、せめて言いたかったんです。
「その人と上手くいくといいですね。僕、エリカさんが上手くいくように応援してます」
「...ええ、応援感謝するわ」
寮への帰路に着きながら、言いようのない喪失感を味わいました。きっと僕はエリカさんの事が...


エリカさんのためにするべき事は変わりません。僕ができる事、それを成して、せめてエリカさんが幸せになれるように努力するだけです。

関係性:
エリカさん一番最初に親切にしてくれた強くて気配りのできる優しいお姉さん、そばで支えたいです。
チェスターさん頼りになるお兄さん!僕のお願い事を叶えてくれたいい人です!
秋葉さん不思議な雰囲気を持つお姉さん、かっこよさに憧れてます。
シュヴァルツさん怪しげな雰囲気の女性。なんでしょう?あの感じ
ホルス君何だかうるさいバイクを持っている勝ち気な人、もう少し落ち着きを持って欲しいです。
ホルンさん危険な雰囲気のする生徒さん、なぜか僕の名前を知っていたり、他人にあまり関心がない危うい感じのする人、精霊たちも気をつけるように言っているので要注意です。
メルヴィンさん恐ろしい大人、見敵必殺も時と場合を考えて欲しいです。
レーナさん面白い人、廃墟で爆弾を投げ続けた時は倒壊しないかちょっと不安でした。
名前:

「名前ですか?ヤマナシという木から来ているみたいです!」

信仰:

ピルスが神託を得て、プリーストとなったのはここ最近の話である。
学園での学びにおいて、神々の歴史を知ったピルスは中でもダリオンの話が気になり、神殿に通いダリオンについての話を聞いていた。
しかし、彼にダリオンからの神託は訪れなかった。
それはピルスが、ダリオンの話に興味を持ったのであって、ダリオンの教義は興味がなかった。
ダリオンの教義は自然と共に暮らしていたピルスにとって当たり前のことであったからだ。

ある日、ピルスが神殿に向かおうとすると、別の神殿の催しものに目を惹かれた。
ピルスはまるで導かれるようにその神殿に入っていくと、神殿内の人々はピルスを見る。
ピルスは少し萎縮するが、人々はピルスを孤児や迷子だと思い優しく扱った。
ピルスは警戒心を解き、人々に話を聞くと

・ここは月神シーンの神殿
・やっている催しはフリーマーケットであり、ここでの利益は、貧民救済のために使われる
・シーンの信徒は、弱者救済のために日々を過ごしている
ということがわかった。

ピルスはこのような人々に感心すると共に尊敬し、「このような人たちになりたい」
と強く思った。
ピルスは、その日からシーンの信徒たちに混ざって活動するようになった。
その時、ピルスはプリーストとしての力は持ってなかったが、そんなことはピルスにはどうでもよかった。
大事なのは、それがピルスにとってやりたいことであり、また正しいと信じられることであったからだ。
そんな日々の積み重ねが彼に力をもたらした。
プリーストとしての力を扱えるようになったのである。

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 ガメル 名誉点 成長 GM 参加者
キャラクター作成 2,000 1,200 0
キャラクター作成ミス 1,000
1 ウルフ駆逐 1,170 1,022 11 知力
ルンバ エリカチェスターホルス秋葉
2 地下水道の影 1,610 1,252 13 生命
ルンバ 秋葉ホルンメルヴィン
アビスシャード6個
3 稀によくある大量発生(がくしゅうそうち) 1,420 1,320 15 知力
知力
GM回
"月神"シーンに改宗
4 騒然!コロロポッカの森 1,980 2,820 20 精神
GM回
5 敗北の味 3,060 1,000 15 敏捷
知力
ルンバ アホホルンメルヴィンアンシェラ
6 廃墟の亡霊 4,000 4,560 27 筋力
精神
知力
たけニキ ピルスエリカレーナ
7 アイエーニンジャナンデ!? 3,500 3,000 27 知力
ミザエル
8 バルバロッサハウス 5,710 9,458 62 精神
知力
知力
ルンバ
9 胎動する蛮族たち 6,520+50 10,531 60 知力
精神
筋力
生命
GM回
アビスシャード12個
10 ジリ貧ファイト 7,850 11,200 99 生命
生命
生命
ミザエル
11 魔導公のお膝元 9,100 16,900 128 精神
精神
精神
器用
敏捷
ルンバ
12 迷い込んだ"ネズミ"たち 8,630+250 16,763 50 知力
知力
生命
知力
GM回
権利行使1回
13 森の民 10,610 20,000 145 生命
知力
生命
生命
知力
精神
ルンバ れーなエリカアンシェラメア
アビスシャード9個
14 森の洞窟v 10,710 19,800+9,713 109 知力
知力
知力
精神
精神
たけニキ エリカメルヴィンピルス
権利行使2回、権利回数0
宝石たちの家 4,000 13,000
大魔闘技場 3,000+3,000+530+150 25,000+3,300
チェスターへの代金 -5,000
取得総計 89,850 166,839 781 41

収支履歴

冒険者セット::-100
聖印::-100
宿り木の棒杖::-100
保存食3日分::-30
ソフトレザー::-150
ラウンドシールド::-100
魔晶石(5点)::-500
未加工の宿木3本::-300
魔香水2個::-1200
勇者の証:心::-10000
グリーンベルト::-35000

魔香水2個::-1200
未加工の宿木3本::-300

ひらめきメガネ::-4000
叡智の腕輪2個::-1000*2
5点魔晶石4個::-2000
保存食3日分::-30
魔香水2個::-1200
アルケミーキット::-200

魔香水4個::-600*4
月光の護符[+2]::-1500
マテリアルカード
緑A6枚::-200*6

ロッセリーニの調声機::-2000
ロッセリーニの魔導筆::-1000
ロッセリーニの印形絵の具3個::-100*3
ラルヴェイネのダウンルッカー::-28000

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