・血縁者と死別したことがある
お母さんは私を産んだ時に死んだ。多大な負担が掛かるナイトメアの出産に耐えられなかったらしい。お父さんはその次の日に自殺した。信心深かったお父さんは自分の子供が穢れ持ちとして産まれてきたことに耐えられなったらしい。だから私は産まれて直ぐに2人の人間を殺したことになる。

・命を助けられたことがある
私には命の恩人が2人いる。1人はお祖母ちゃんだ。お母さんとお父さんを殺した私のことを見捨てずに育ててくれた。お祖母ちゃんがいなかったらきっと私は直ぐに死んでいたと思う。ナイトメアの世話なんてこんな田舎の村の人間じゃ誰もやりたがらなかっただろうから。だからお祖母ちゃんには本当に感謝している。お祖母ちゃんが亡くなった日のことは今でも夢に見る。
もう1人の恩人は『彼』だ。お祖母ちゃんが亡くなった日、私は後を追うために1人で森に入った。1人で死のうとしても意気地のない私じゃどうせできないだろうから、魔物に殺してもらおうと考えていた。想定通り魔物に襲われ、これで家族と同じ場所に逝けると思っていた時、『彼』が目の前に現れた。『彼』は魔物を蹴散らし、倒れた私に手を差し伸べてくれた。『彼』の手を取った瞬間、私はそれまで感じたことのない感情を覚えた。今思えば一目惚れだったのだと思う。それから『彼』に連れられ2人で一緒に村に戻った。『彼』はそのあとも村での生活に馴染めない私の手助けをしてくれた。村人の信頼を得るために力仕事は積極的に引き受けたし、村が狼や盗賊に襲われた時は二度と悪さできないようにしてあげるなど、『彼』の言う通りに行動した。『彼』は命を助けてくれただけでなく、村での生き方も教えてくれた。

・未だ叶わない夢がある
『彼』と結婚すること。それが私の夢だ。ただ、どういうわけか『彼』は私以外には見えていないようだ。周りに認めさせるにはどうにかして『彼』の体を工面しないといけない。その方法を色々と探したが見つかることはなかった。偶々村に立ち寄った冒険者に操霊魔法のことを教わったこともあるけど、私の頭じゃ簡単なものしか理解できなかった。

・探しているものがある
成人した日、私は勇気を出して『彼』にプロポーズした。『彼』は了承してくれたけど、結婚するためには何処かにある魔剣が必要だと言った。どうやらそれがあれば『彼』はちゃんとした体を得ることができるのだという。今まで大事なことは『彼』から教えられていたのに何故尋ねなかったのだろう。本当に私は馬鹿だと思う。それから私は魔剣を探す冒険に出るために準備を始めた。纏まったお金を用意するのに2年もかかっちゃったけど、ようやく『彼』のために動けると思うとワクワクする。