容姿

　『アイネス・グラムガルト』。艶のある髪を一つに纏め、瞳の内に鮮やかな紅を宿した彼女は、冒険者でありながら、あろうことか蛮族──それも上位蛮族である『ドレイク』の血筋を受け継いだ少女である。ただし、＂元＂という言葉が付くが。

経歴

人物像

　威風堂々、泰然自若。所謂カリスマのあるタイプだが、ちょっとでも褒められると照れてフードで自分の顔を隠してしまうなど、少々初心で乙女らしい一面もある。
　また、冒険者になる前に体験した〝あること〟から『人間を守りたい』と思うようになり、人々から嫌われることを覚悟しながらも人々のために戦う、という蛮族としてはイレギュラーな性格をしている。
　現在はギルド〈漆烏の庭籠〉にてひっそりと活動している。

　元々、アイネスの手には生来より一本の魔剣が握られていた。彼女はそれを用いて人族の街を襲撃し、領地を広げ、力をつけ、蛮族社会での地位を確立しようとしていたが──とある冒険者達の手によってその計略は防がれ、彼女は魔剣諸共打ち滅ぼされてしまった。
　しかしその最期の瞬間、彼女は魔剣の能力を解放することで何とか一命を取り留めることに成功した。だが結局のところ魔剣は冒険者達により砕かれ、自分はその力の大半を失うこととなる。
　その翼は小さく萎び、尊厳は形も残さず粉々に砕かれ、傲慢な性格も何か夢から覚めたかのように穏やかに──否、最早弱気と言っても差し支えない程になってしまった。
　力と心を失った彼女には、蛮族社会で生きていくための術はもう一つとして残されていない。かと言って人に見つかれば確実に捕まり、死んだ方が遥かにマシだと思える程の拷問を受けることだろう。
　出来ることと言えば、人にも蛮族にも見つからずに何処かの小さな村でひっそりと1000年を超える天命を全うするだけ。
　それか、自害だ。
　絶望の渦へと呑まれかけた彼女は、外套を羽織って頭まで隠し、そこから逃げるようにして森の中へと駆け込んだ。

　走る。走る。走る。
　逃げる。逃げる。逃げる。

　気が付けば彼女は森を抜け、一つの街へと辿り着いていた。
　……そこで、彼女は人の営みを見た。
　種族を問わず、身分を問わず、その街では誰もが前を向いて働き、自らの街の復興のために共に汗を垂らし続けていた。
　ふと、背後から自分を呼ぶ声が聞こえた。振り向いてみれば、そこには林檎の籠を持った壮年の男がこちらに手招きをしているのが見える。
　恐怖から去ろうとしたのも束の間、彼女の腹から大きな音が鳴った。森の中をずっと走り続けていたからか、今更になって酷い空腹感が彼女を襲ったのである。
　逡巡する間も無く、男は笑顔で彼女の手に林檎を一つ握らせた。返そうにも腹の音は大きくなるばかり。
　……仕方なく、一口齧る。爽やかな甘味が口に広がり、腹がもう一口寄越せと叫びを上げた。
　欲望に沿って二口目を齧る。甘味が幸福感へと変わり、腹と心を満たしていく。

　──いつしか、彼女の眼からは大粒の涙が滴り始めていた。
　自分が滅ぼそうとした、弱いと思っていたはずの街の人間が、これほどまでに優しい笑顔を浮かべている。自分が負けそうになった深い絶望に抗い、前を向いて歩み続けている。
　幸福か、感謝か、罪悪感か、自己嫌悪か。あるいは全てかもしれない。
　その全てを味わい尽くすよう果実を貪る彼女に、果実屋の男は相も変わらず幸福そうな笑顔を浮かべていた。

　その日、彼女は三つのことを知った。
　それは、優しさ。角を隠していたとはいえ、敵であったはずの自分にすらも差し伸べてくれたあの皺のある手の感触。
　それは、強さ。恐怖による弾圧でもなく、かといって実力ともまた違う、どれだけ絶望に苛まれても前を向いて進んでいく力。
　それは、罪。その全てを蔑ろにし、嘲笑い滅ぼそうとしていた自分自身への罪。


　そして──彼女は、剣を取ることを決意した。
　人の優しさを守るために。
　人の強さに殉じるために。
　そして、自らの罪を贖うために。

　どれだけ人の為に戦おうとも、その罪が消えることはない。それは彼女も理解しているし、赦してもらう気もなかった。
　だが──例えどれだけ厭われようとも、この身がまだ朽ちていないのなら。
　どれだけ蔑まれようとも、この手をまだ誰かに差し伸べてもいいのなら。
　その無限の罪を償う為に、彼女は人のために戦い続けるだろう。

※魔物知識の内訳は（知名度／弱点）。魔物知識判定に成功していない場合は（ー／ー）とする。
※参照は基本的にモンストラスロアのページを表記

所持成長Pt

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