１　少しでも興味のあることは、とにかくやってみること。
２　迷った時は、自分で自分を信じられる方を選ぶこと。
３　自分の中で納得出来る理屈が通らない限り、誰も傷つけないこと。
４　選んだ"仲間"は誰も死なせず、自分も死なないこと。

　素敵なおじさま。大事な奥さんが居る。
　はじめてお話したギルドの人。

　ばっきりしてて元気なひと。
　飲み比べをしたよ。

　行き急いでる感じがする？
　幸せになってね。

　ぽやーんとしてる。
　おでんが好きらしいよ。

　からっとキラキラしてる人。
　ガンってかっこいいよね。

　明るくて身軽なひと。
　お師匠さんの話、聞いてみたいかな。

　真っすぐですこしあぶなっかしい子。
　だまされないか、ちょっと不安だなぁ。

　方言で喋る元気な子。
　そんなにお話しできなかったけど、明るくてあったかい感じ？

　凛とした、鋭い感じの子。
　根っこは優しいのかなぁって感じがしたかな。

　ここぞって時耐え忍ぶ、かっこいい人。
　バタバタしててあんまりきちんとお話しできなかったけど、ゆっくり普通の話をしてみたいな。

　大きくて、頼もしい人。
　ちょっと冷たい、のかな。真面目なだけかもしれない。

　よく分からない人。

　あんまりお話しできなかったけど、悪い人ではないと思う、かな？

　…………。

　生後間もなく親に捨てられるも、奇跡的に狼の群れに拾われることで生き延びた。
　5歳の頃、運悪く邂逅してしまった人族を狼共々撃退したところ「狼を率い人を襲うナイトメアの子供がいる」ということで討伐令が下りてしまい、自身の所属していた狼の群れが壊滅。ひとり生き残る。

　一人森で過ごしていた6歳の頃、元冒険者のメリアと出会う。
　長命種、銀木犀の花を持つ150歳の女性。
　メリアは「森のナイトメアをどうにかしてくれ」という依頼で彼女に会いに来たのだが、殺すでも森を追い出すでもなく、「私は君の生き方を否定しない。けれども、人族の大人の一人として、人族の子供に生き方の選択肢を提供する義務がある」と対話を求め、足しげく森へ通う。
　ここから漸く彼女の人生が"動物"から"人族"にシフトし始める。
　……今はまだ、何者でもない誰か、として。

　驚異的な速度で人族の言語や習慣を身に着けつつある8歳の頃、「このまま"動物"としてここで生きるか、ここを離れ"人族"として生きるか」の二択を提示され、後者を選ぶ。
　人族として生きることを選択した彼女にメリアが与えたのがNobodyを由来にした「Nody・Bellote」という名前。

　以降はメリアの口添えを受けダリオン神殿に身を置き、勉強や仕事をしながら過ごす。腐ってもナイトメアなので、忌避こそされなかったが歓迎されるでもなく、肝心のメリアは冒険者時代の縁で何かと方々に出かけがちだったので基本的には孤独だった。
　とはいえ、自身が本来どういう扱いを受ける種族なのかは身をもって理解しており、メリアもたまに帰って来ると旅先の話を聞かせてくれたり、魔法の手ほどきをしてくれたり何かと気にかけてくれていたので特に不満はなかった。
　むしろ唯一の友人として敬愛しており、「成人したらメリアの旅についていく」事を約束していたレベル。

　14歳。成人を目前にし、次の旅には必ずついていくと約束してメリアを見送った後。
　15歳。成人を迎えたその日の晩、渡されていた通話のピアスに着信があり応答したところ、内容は他愛のない近況報告だったのだが、最後の最後に「すまない」と、理由のわからない謝罪が加えられた。

　数週間後、旅先でメリアが亡くなったと言う連絡が神殿に届く。具体的にどこで、何があり"そうなった"のか。詳細が知らされることはなかったし、亡骸や遺品が神殿に届けられることもなかった。
　1年は、気持ちの整理に。1年は、思考と計画に。1年は、旅の準備に。
　3年の期間を経て、ノディは「友人の真実を探すため」神殿を出る。

　生きているなら、また会いたい。死んでしまったなら、きちんと傷つきたい。
　無力を嘆くのではなく。運命を恨むのでもなく。これからを生きるには、きちんとしたお別れと彼女への弔いが、どうしても必要だったから。