ダーレスブルグの貴族・エスクドルス家の娘。……なのであるが、実は彼女はヴァルキリーとナイトメアの双子としてこの世に生を受ける。
　妊娠中に光羽が出現したことで浮足立っていた両親は、この天文学的確率で発生した状況に驚きと戸惑いを隠せなかった。とりあえずナイトメアの方を捨てることで話がまとまった…はずであった、のだが、子供を連れていくよう命じられたメイドはなんとおっちょこちょいレベル16。背中とくるぶしに痣があったナイトメアの方をヴァルキリーと勘違いし、こっちを捨てに行ってしまう。とりあえず目につかないところへ。とは言われたものの、乳飲み子を変なところに捨てるわけにも…と良心が動いたのか、メイドはザイア神殿の近くに彼女を捨てた。この後、エスクドルス家では上から下への大騒ぎになるのだが、それは即行でクビを言い渡されてしまった彼女の知らない話である…。
　さて、捨てられた翌日のこと。ザイア神殿勤めの神官戦士である女性がいつものように早朝から鍛錬と礼拝のために神殿を訪れると、そこにはおくるみに包まれた女の赤子が。抱き上げてみれば、笑う赤子の声に応じるように光の羽が展開されるではないか。女性はザイア神殿の高司祭に事の次第を伝え、赤子の世話を任されることに。女性は赤子と一緒にくるまれていたハンケチーフに刺繍されていた『ルイハ』という名と、自分の姓であるヴァレリアを赤子に名前として贈る。
　ルイハはそうして、女騎士の元で健やかに育てられる。幼いころに神の声を聴いたルイハは、字の読み書きやこの世界の成り立ち、歴史について神殿の司祭たちからみっちり教育を受けたが、ルイハが一番興味を持ったのは馬の世話であった。馬と心を通わせる術を誰から学ぶことなく覚えたルイハを見て、養母の女騎士は馬術を彼女に教える。信者の中には「聖女様になんてことを」と異を唱える者もいたが、ここは騎士神ザイアの神殿。聖女たるもの、市民を守ることこそ務めである。と、司祭たちからの教育はさらに熱がこもっていく。
　やがて、15歳となり成人の日を迎えたルイハは思い立った。そうだ、冒険者になろう。と。市民を守る盾であり剣であるザイアの騎士道を心に、育ててくれた養母や神殿のみんなへの恩返しのために。あとは、ほんの少し胸騒ぎがして。外に出なければならない気がして。
　……でも、どこに行こう？

　ちなみに養母との関係については、10歳を迎えたころに直接聞いている。ちょっとショックは受けたけれど、自分にとっての母は養母に変わりないと思っている。養母の近頃の悩みは「娘が女性らしい口調で話してくれない」ことらしいが、ルイハからすれば「ママの影響だゾ」とのこと。