冒険：他に生き方がなくて。

　誰かが種子をそこに埋めたのか、はたまた風か動物かが運んできたかは定かではないが、ある日、学園の敷地内で芽吹いているところを学園の教師によって発見され、保護される。
しかし、表沙汰にはできない実験の対象として、保護とは名目だけの監禁状態とされていた。
教師は錬金術を研究しており、メリアの花や身体を使って実験していた。
そのような経験から、表に感情を出すのが苦手（ただしメリアの種族特徴として、肩に咲いている花は感情豊か）。
視界を塞がれること、花に触れられることには今でもトラウマが残っている。

　そんな生活が数か月ほど続いた頃、とある学生の尽力もあり監禁から救助される。
学園で産まれたことを考慮され、例外的な入学手続きを経て入学することとなった。
以降は自身を救ってくれた学生に憧れを抱き、風紀委員に所属しながら人を助けることを第一の目標として生活している。
睡眠が不要なのと、目を閉じること（視界を塞がれること）にトラウマがあるので、夜は寝ずに学園の見回りをしている。
今日も風紀委員として学園の平和を守る……はずだった。

　学園外の森での討伐任務、それ自体はさほど珍しいものではない。
学園に害をなす蛮族を討伐する、一年生の自分でも任されるほどの簡単なものだ。
友人とふたりで討伐に向かい、夕方には学園に帰投しているはずだった。
予定外の強力な蛮族の出現さえなければ……。

　不運にも緊急避難用の転移盤は故障、蛮族の攻撃から友人をかばい、彼女の記憶はそこで途切れる。

冒険者ギルドで給仕のアルバイトをしている。BCDでメイド服を気に入った。

メリアとして植物の知識が本能的にあるのかもしれない

１年時のプロムナードで、留学生のニィロウと共に舞台にあがり、バックダンサーとして踊った。

愛する私の娘へ


私の寿命はもうすぐ終わりを迎えるでしょう。
足先はすでに枯れ始め、ここから動くこともできません。

あなたが生まれてくる頃には、もうこの世にはいないでしょう。
だから、手紙を残します。
大人になってから読んでください。

元気にしていますか？体調は大丈夫ですか？
一人で寂しくないでしょうか？周りにはお友達はいますか？

ちゃんと暮らせていますか？部屋は綺麗にしていますか？
悪いことはしていないですか？勉強も頑張っていますか？

...本当はもっともっと書きたいことがあります。いえ、欲を言えば、直接あって話したい。
でも、それはきっと叶いません。

だから、あなたにこれだけは伝えたい。
あなたは決して、ひとりで生まれてきたんじゃない。愛されて生まれてきたんだってことを。

私からあなたに残せるもの、私が母から受け継いだ耳飾りを一緒にいれておきます。

確かに私たちの命は、他の者よりも短いかもしれない。
だけどどうか、あなただけの幸せを見つけてください。

それだけが私の祈りです。

お母さんへ

最近は天気も良くて、とても元気です。お母さんがくれた身体のおかげです。
たくさんの友達もできました。いつも一緒に冒険してくれる、頼りになる仲間たちです。
お部屋の掃除もしっかりしていますし、一人暮らしも慣れてきました。
悪いことは見過ごしません。学園の風紀を守るために頑張っています。
勉強も...、頑張ってはいます。

お母さんがくれた耳飾りを、みんなも褒めてくれました。
私の大切な宝物です。

今日もみんなと一緒に冒険にでかけます。
困っている人を助けるお仕事です。難しいことや危ないときもありますが、やりがいのある、いい仕事だと思っています。

たしかに私たちの命は短いかもしれない。
けれど私はいま、とても楽しいです。

どうか、見守っていてください。

ネアより

呼び方：サラさん

　とても優秀な妖精魔法使い。後衛の守り役となることも多く、とてもかっこいいし頼りになると思っている。
　王様と呼ばれているが、なぜ王様なのかはよく分かっていない。

　王様ではなくお姫様だったが重要なのはそこではなく、彼女がとても優秀な拳闘士であるということ。
　またいつか、再び拳を交えられる日がくることを楽しみにしている。

呼び方：チャンゴさん

　料理がとても上手で尊敬しているし、パーティーのプリーストとしてとても頼りになる存在。
　しかし、いざというときにドジなところがあり、それは心配なところ。

　死生観など、自分では想像できていなかったところもちゃんと考えている部分があり、その考え方はひとつの指針として彼女のなかに存在している。

呼び方：ハロルド

　他のメンバーよりも１年長い付き合いであり、大切な存在。
　目の前で倒れていく様を眺めていることしかできなかったのはトラウマもの。
　同時に、自身も彼に同じような思いをさせたのだろうことにも申し訳なさを感じている。
　もう二度と同じようなことは繰り返さないために研鑽に励んでいる一面もある。

　支えてくれる、とても頼りになる人。

　ついつい彼女の弱いところを見せてしまう。彼女自身、理由はまだわかっていない。

呼び方：ラーシュさん

　同じ前衛に立つものとして信頼している。
　また、魔法での支援も非常に頼りにしている。
　密かに敏捷では負けたくないと張り合っている。

　リーナと仲睦まじそうなところをニコニコしながら見ている。

呼び方：リビさん

　レプラカーンとはいえ、非常に小さなその体躯には庇護欲を掻き立てられている。
　しかし同時に、パーティーメンバーとして頼りになることも知っており、適材適所として頼りにしている。
　特に射撃の腕は尊敬の対象。自身が同じだけの時間を使って修練したとしても叶わないだろうとその実力を認めている。

呼び方：リーナさん

　内心では頼れるお姉さんとして見ており、自身のことも含め、女性に関する悩みごとはリーナについつい相談してしまう。
　騎獣を扱うというのは自身のスキルから遠く離れた技術であり、なにをしているのかもよく分かっていないが、騎獣と心を通わせて戦っているところはとても尊敬できる。

　ラーシュと仲睦まじそうなところをニコニコしながら見ている。

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　今回の依頼は、夢の世界で出会った〈ルミエル〉さんのお願いでした。どうやらハロルドが、また夢の世界でお願いされたみたいです。以前中に入った魔剣の迷宮だったものの奥によくないものが溜まっているらしく、それを排除してほしいとのことです。

　そういうことでしたら当然、私たちの出番です。

　それに、学園の皆さんの誕生日プレゼントがいつのまにかなくなっているという不思議な問題も、〈ルミエル〉さんが言うには関係しているとのことでした。



　いつものように準備を整え、魔剣の迷宮だったものに潜ることになりました。

　第二の剣に関連する神を信仰する祠や進行を阻む罠などがありましたが、特に大きな問題はなく奥地へたどり着くことはできました。

　そこにあったのは、とても言葉では形容しきれない澱んだなにかの集合体と、ひとりの女の子です。

　...わたしには彼女が、ただのひとりの女の子にしかみえませんでした。

　ですが、途中でみかけた祠やその様子から彼女がユーシズに潜んでいる、悪に連なる者であることは明白でした。

　これでもわたしは冒険者であることに誇りを持っていますし、街やみんなの平和を守る、正義を貫くことはわたしの信条でもあります。

　だからこそ、わたしはあの場で彼女を止める義務がありました。彼女を止めなければユーシズへの被害は拡大していたでしょう。外の蛮族たちから襲撃を受ける可能性だってあります。

　だけどそれでも考えてしまいます。彼女と和解する道はなかったのか、と。

　彼女の背後にあったたくさんのプレゼント、どうやら学園で起きていた問題も彼女が起こしていたようです。

　彼女がなぜプレゼントを集めていたのか、はっきりとした答えはもはや分かりません。

　ただ...、なんとなくですが、彼女はあの澱んだ魂たちに喜んでほしかったのだと、そう感じました。



　みなさんを守るために彼女を止めることは絶対に必要でした。ですが、だからといってその言葉を、命を奪った言い訳には使いたくないと思います。

　...わたしの拳が彼女の命を奪ったあの感覚を、わたしは一生覚えているのでしょう。

　彼女がしていたことは、間違いなく〈悪〉に分類される行為であると思いました。

　わたしの行った行動自体は、いままで蛮族たちの悪行を止めるためにしてきたこととまったく同じことです。

　ですが、これが自分勝手なことだとわかりながら、相手が〈人〉ならば和解の道もあったはずだと思わずにはいられません。



　...何度も同じことを書いてしまいます。

　彼女は悪いことをしました。それも、たくさんの人の命を危険にさらすほど、止めるために命を奪われても仕方ないと、そう判断されるほどのことを。

　ですがわたしは、彼女の命を奪った〈罪〉を忘れてはいけないと思います。

　それが善なれど悪なれど、信じるものがあってそのために行動する。その点に関しては彼女もわたしたちも違いはないとおもうのです。
　

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　先日、とても遠くの地から学園にはるばると講義をしにきてくださった講師の方がいました。名は「鍾離」先生。

　ユーシズからは本当に遠い地だそうで、たしかにわたしたちとは根元から雰囲気が違うような、そんな気がしました。そう感じた本当の理由は後にわかることになりますが...。

　講義の内容はとても興味深く、冒険者であるわたしたちにとって身近とも言える〈奈落〉とそこに生息する〈魔神〉についてのお話です。講義の内容については日記では割愛します。

　今回の依頼の始まりは、そんな「鍾離」先生から声をかけられたのがきっかけです。



　先生がいうには、昔この地の近くに忘れ物をしたらしく、それを回収したいとのことです。

　場所はあとで聞いたのですが、ユーシズを出て馬車で南に１日進んだ場所、オーラントレックの海域です。

　近く、と聞いていたのですが距離は離れているように思いました。遠くの地からきた先生にとっては近いということなのでしょうか？

　それにしても、海域の中心近くで忘れ物とはと思いましたが、その時はあまり深くは考えていませんでした。



　海辺まで馬車で移動し、そこからは船での移動です。進むうちに陸地が離れて見えなくなり、一面の水平線には小さいながらも感動を覚えていました。

　突然、鍾離先生がなにもない場所で船を止めましたが、そこには小さな小島と東西南北に４つの祠があり、それが鍵を開ける仕掛けになっているとのことです。

　やはりわたしも冒険者なのでしょう。広い海の中に沈んでいる地下迷宮（迷宮ではなかったのですが）や鍵の仕掛けと聞くと、つい気持ちは高ぶってしまいました。

　先日購入した「水蜘蛛のサンダル」を用いての水上歩行は初めての挑戦でしたが、うまくいってよかったです。

　鍵の向こうに広がっていたのは、水底に沈む街でした。

　ところどころに崩れそうな危険な場所はありましたが、なかには危険な動物たちや蛮族もおらず、わたしたちは鍾離先生の昔話を聞きながら奥へと進むことになりました。



　...鍾離先生が語ってくれたのは、３００年前に起きた蛮族の大侵攻《大破局(ディアボリック・トライアンフ)》の裏側で起きていた、歴史には記されていない魔神たちの代理戦争のことでした。

　わたしたち冒険者にとって、アルフレイム大陸の最北端に存在する〈奈落〉、そしてそこから現れる〈魔神〉は倒すべき敵です。それは当然、彼らがわたしたちに危害を加える存在であるからという理由が大きいです。

　しかし、鍾離先生にとっての〈魔神〉とは、わたしたちとなんら変わらない存在。アルフレイム大陸に生きるわたしたち、奈落に生きる魔神にはそう大きな差はないと話しました。

　奈落の穴を超えてこちらの世界にくる魔神には、大なり小なり侵略欲があると。そのために戦いは起きるのだと。

　ただ、中にはわたしたちが〈奈落の魔域(シャロウ・アビス)〉に巻き込まれるように、こちらの世界に迷い込み、そして帰り道を失った魔神も存在すると。

　人族の中にも善き心と悪しき心を持つ者がいるように、魔神にも善き心と悪しき心を持つ者がいるだけだと。



　...どうやらここは、そんな善き心をもった魔神のなかのひとりが当時の人々を守るために築きあげたひとつの海底都市のようでした。

　街は長い年月を経て劣化し、ほとんどの場所が崩れさっている様相でしたが、それでもこの街には「優しさ」が溢れているような気がしました。

　なんというのでしょうか、細かな部分ではありますが、手入れが行き届いているというか、この都市を作り上げた魔神が人々のことをしっかりと考えていたことがわかるというか...すみません、こういった知識には詳しくありませんので、ただなんとなくそう感じただけです。

　そんな都市を作り上げた魔神は、人々を戦いに巻き込むべきではないと戦いからは逃げ続け、襲われれば自身の肉体の一部を譲渡して許しを請い、そして最終的にはここに辿りついた。

　都市を探索している途中でその魔神が残した聖遺物を見つけました。少なくとも３００年は経過しているにも関わらず、２つの聖遺物のうち１つはまだその力を有しているようです。

　わたしにはどういったものかは分かりませんでしたが、どうやらそれは無限に塩を生み出す盃だそうです。塩といえばなので、ひとまずチャンゴさんが持つことになりました。もう片方の聖遺物は欠けた部分から魔力が漏れ出てしまっていたようで、すでにその力を失っていました。これは依頼後に鍾離先生が買い取ってくださることになりました。

　そして私たちはこの都市の中心、すでに海底であるはずのこの場所よりも下層に降りる大穴を見つけました。鍾離先生がいうには、この下が目的地だそうです。

　鍾離先生は不思議な魔法で大穴を降りていました。先生が足を踏み出した場所には壁から階段のようなものが自然と生えてくるのです。妖精魔法...のようですが、違うような気もします。

　ラーシュさんは先んじて下層の様子を調査しにいってくれました。サラさんは自身の妖精魔法で空中の階段を下りるように優雅に下っていきます。...こういうところを見ると、やっぱり魔法って良いなと思ってしまいますね。

　他の方たちと一緒にわたしはリーナさんの騎獣の背中に乗って降りていきます。

　しばらくすると、この都市の最深部に降り立つことになりました。



　そこにあったのは、多くの人型の塩の像...いや、魔神の力によって塩に変えられた、この街の人々でした。

　鍾離先生は続けてくれました。

　この都市を作り上げた魔神〈ヘウリア〉さんは確かに人族と比べれば大きな力を持っていた。けれど、《大破局》を戦えるほどの力ではなかった。

　戦いは終わらず、譲渡を繰り返した"彼女"はすでにその身のほとんどを失い、それでも民を守ろうとする様子に、民たちのほうが耐えられなかった。

　民たちは彼女を戦いから解放しようと、民たちの王は彼女の胸に剣をたて、彼女もまたそれを受け入れた。

　しかし、死する魔神が放つ力は、戦う力を持たぬものに耐えられるようなものではなく、彼らもまた彼女の力で塩に変えられた。



　...その話を聞きながら、わたしは背筋を撫でる危険を感じました。冒険者をしているうちにいつの間にか身についた力です。

　彼女が最後にいたであろう場所にある塩の山、そこに力が集まり、それは塩の魔神の残恵ともいえる存在となっていました。

　「魔神には魂の循環は起こらない。魔神が死ねば、魂は完全に消滅する。だがそれでもあえてこう言おう。彼女の魂を、解放してやってくれないか。」

　わたしたちは、鍾離先生の目的を理解しました。おそらく先生はずっと、彼女の魂をこの場所に置き去りにしてしまったような感覚に囚われていたのだと思います。

　戦いはわたしたちの本分です。苦戦はしましたが、特別書き連ねるようなことは起こりませんでした。



　崩れた彼女の残恵から、鍾離先生はひとつの勾玉を拾い上げました。と同時に、この空間を包んでいた澱みが消えたような、そんな気がしました。気のせいかもしれません。