アルフレイム大陸北東部ウルシラ地方の高山地帯にあるスノウエルフの隠れ里の出身。
排他的な傾向のあるスノウエルフの例に漏れず、カリナの故郷の里も年間を通して1人2人程度しか外の人間が訪れない程閉じた環境であり、たまに来る来訪者もハールーン魔術研究王国からやって来た寡黙な学者程度であった。

好奇心旺盛な子供だったカリナはいつか広大な世界に旅立ってみたいと思っていたが、外の世界を夢想するばかりで、実際に旅立つような踏ん切りがつくことはなかった。
里の大人達に言いつけられた通り古くからある遺跡を守ったり、相棒であるグリフォンの「フェイルーン」と共に狩りをする、そんな変わり映えのしない日々を送っていた。

そして彼女が14歳の頃、里の外から1人の風変わりな吟遊詩人が流れ着いた。
吟遊詩人はウルシラ地方では毛嫌いされている魔動機を背負っていた。
その魔動機の名は『マナギター』と言い、内部を循環するマナと弦を鳴らした時の振動を共鳴させることで特徴的な音を奏でる楽器なのだという。

里の大人達は魔動機を見ると怪訝そうな顔をしたが、元々外の世界に憧れのあったカリナは吟遊詩人に一曲弾いてくれと頼みこみ、吟遊詩人もそれに嬉しそうに頷いてくれた。
マナギターを用いた演奏は魂までも揺さぶるような荒々しいもので、カリナはあっという間にその音の虜となり、自分にもその楽器の扱い方を教えて欲しいと吟遊詩人に頼み込んで、弟子入りすることとなった。

だが里の大人たちはカリナが外の技術、それも魔動機の扱いを学ぶようなことを快く思わない。
カリナもそれは分かっていたため、狩りや遺跡の警護の合間にこっそり里の外でマナギターの扱いや作曲など吟遊詩人の持つ色々な技術を教えてもらっていた。

しかし吟遊詩人に師事して1年程が経った頃、カリナがこっそりと芸事の練習をしていたところを目撃されてしまった。
里の大人達はそのことにとても怒り、里を出るか吟遊詩人に学んだことの全てを忘れるかどちらかを選べとカリナに迫った。
大人達はカリナが村に留まることを選ぶと思っていたが、カリナは殆ど悩む素振りも見せずに里を出ることを選んだ。

こうしてカリナは吟遊詩人諸共スノウエルフの隠れ里を追い出され、明日をも知れぬ身となった。
吟遊詩人とはハールーン魔術研究王国までは旅路を共にしたが、「ここからは君1人で世界を見て回り、そして1人でも多くの人を私の教えた音で笑顔にして欲しい」と言われ、別れることとなった。
吟遊詩人は餞別としてカリナ専用のマナギターを渡し、何処かへと旅立っていった。

吟遊詩人と別れたカリナはその言いつけ通り、より多くの人を自分の音楽で笑顔にすることを胸に誓い、フェイルーンの背に乗って駆け出した。

2年が経ち、冒険者をしながら旅を続けていたアルフレイム大陸最南端、ハーヴェス王国まで辿り着いた。
なんでもこの街にはかの邪神討伐の英雄や、海を越えた異文化の島の人々など様々な人が行き交っているらしい。
しばらくはこの街に留まり、そういった人々と交流をしてみるのもいいかもしれない。

魔動機文明時代に制作された楽器。
内部に空気中のマナを取り込んでそれを弦に通す機構が組み込まれており、呪歌の心得のある者がこれを使って演奏することで一般的な楽器とは一味違った音を出すことが出来る。
カリナが師匠から譲り受けたこの品はカリナのために特別な調整がされており、演奏することで周囲にいる妖精を呼び寄せ、演出に協力してくれるという機能が追加されている。

師匠が言うにはこの楽器にはまだカリナが使いこなせていない機能や、アタッチメントパーツがあるという話だ。
それらは異なる音を同時に奏でるとか、魂無きものにも音を届けるとか……眉唾物ばかりだ。
旅を続ける中でそれらの隠された機能を引き出すこともカリナの目的である。