キョーサクの生まれ育ったドワーフの里には、ある不文律があった。それは、「ドワーフの男は鍛冶の技術を磨いて武具を作ってこそ一人前」というもの。
しかしキョーサクの家系はなぜか代々鍛冶の才に恵まれず……周囲からDo little(ろくでなし)と呼ばれ続け、いつしかそれが家名になった。
しかし彼らは折れなかった。彼らは鍛冶の才に愛されなかった代わりに、里に比肩するものの無いほどの手先の器用さを持っていたのだ。彼らはその天賦の器用さを活かし、工芸品や装飾品を作り続けることでどうにか里での地位を確保していた。
鍛冶の神(グレンダール)ではなく知識と技術の神(ミルタバル)を信仰していることも、彼らの里での立場を異質なものとしていた。キョーサクの父が作る装飾品の価値は非常に高く、わざわざ遠くの国から商人が買い付けに来ることもあるほどだ。しかし、そんな優れた職人である父も、里の中ではろくでなし扱い。道行く子供に石を投げられることすら珍しくなかった。
ある時、キョーサクは父に尋ねた。どうしてこんな扱いを受けて平気でいられるのか、と。父は嫌な顔一つせず、鷹揚とした態度で答えた。
「俺は心が強ぇからよ」
それに、と父は続ける。
「俺の作る装飾品は、たしかにこの里じゃあLittle(大したことないもの)かもしれねえ。でもただのリトルじゃねぇぞ……たとえ小さくたって大きな思いが込められて、もらった人を幸せにする。ド級のリトル、ドリトルだ！」
この言葉はキョーサクにとって人生の指針となった。
父は言った。
「キョーサク、お前はまだ若い。世界を見ろ。色々なものを見て、知って、お前がやりたいこと、お前にしかできないことを探すんだ。大丈夫、お前は俺と同じで心が強ぇからな。どんな困難だって乗り越えられるさ」

父の言葉に従い、キョーサクは里を飛び出し、冒険者になった。これから先、どんな苦難が待ち受けていようとも……何度倒れても、彼は持ち前の心の強さで立ち上がり、前に進むことだろう。
「俺はキョーサク・ドリトル！ただのワーフじゃねぇぞ……ド級のワーフ、ドワーフだ！」