右額の傷は、現在の同居人が巻き込まれたトラブルによって出来た。
どうやら【異界変異】という現象から生まれたらしいその傷は、レネゲイドの治癒力を以てしても塞がっていない。
また同じく【異界変異】現象にて、視界の焦点が昔より合いにくくなった。
エンハイ能力も関係して、昔から視野補正で眼鏡をかけていたため「まあ特に変わらん」と本人は呑気に考えている。

……【異界変異】の代償である【忘却】として、自分の過去についての要素を忘れ去っている。
厳密には『実の両親から受けていた虐待の詳細』と。
『本当の母親だと思う声がする夢』の２つである。

とはいえ、過去については『自分が受けていた虐待の記憶』が抜けているのみである。
「【死】をもって自分がオーヴァード覚醒した」という事実は、忘れていない。

更に、オーヴァード覚醒したきっかけは、秘密裏にレネゲイド研究をしていた、実の両親がもたらしたという記憶もある。
彼らが自分を捨てている事実と、愛情を注がれた記憶は元から皆無で、消えた感覚すらも一切ない事。
何より、自分自身が水面下に調べ続けていたらしい、ある“研究センター”の解体末路についての記録。
……顔も忘れ、何モノかもしっかりと覚えていない家族へ、警戒や敵愾心は向け続けている様子。

長らく、自分自身を認められていなかった。

「にいさんの手は、昔から変わらへんねえ」
共に在れるようになった彼女が、こちらの手を撫でて言う。
興味津々に頭上へかざして、手のひらと指の間からこちらを眺める。

されるがままに、そうか？と首を傾げて返す。
彼女と大切な者同士になる前から、出会う前から。様々なことがあった。
あの薄暗い部屋から始まって。
否定されたことを否定して、後悔されたぶん後悔して。
苦しめるものを苦しめた。

その何もかもが嫌になって、すべて切り捨てて隠しても。
いつまでも、同じような事を繰り返しているだけの手だ。

「そうやて。……人のこと一番に考えて、支えようって考えとるもの。優しい手や」
「暗い部屋によく逃げとったうちの事も、いつも見つけてくれた」

「光の溢れる、優しい手やね」

やさしい声と無邪気に笑う様子に、両目を閉じて。彼女の手を握り返した日の夜。

夢だと、悪夢だと言い切るには、既視感しかない記憶。
それでいて、何もかもを覚えていない内容。
脳内誤差をものともせず、レネゲイドが、ざわりと波打って。

「……！！」
そして、起き上がった部屋の中。
差し込んだ朝日のもとでも、はっきりと見える光が、手のひらから指先へと伝っていた。

「認めたのか。……今になって」
自分自身へ、呆れるように呟いた言葉。
気の抜けた笑みが浮かんだ部屋のドア向こうで、彼女が呼んでいる。

いつも通りに仕事へ赴いてから。
いつも通りに付き合っていたこの光を、解明しに行かねばならないだろう。

／Dロイス「ライトブリンガー」取得経緯の記録

※この辺になると蛇足に近い※

読まずともよきよきかな、勝手気ままに生やした自創作です。
更に詳しくはURL先へ順次まとめ予定、お時間空いてお暇な方のみどうぞ。
https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/dx3rd/?id=eqU4pn (兵頭禊◆すっぴんデータ)

カラーコード↓
#2b2b2b　黒
#727171　鈍色
#7f1414 ネクタイ
#7daed4　参考キャラより

『永遠の不在証明』/東京事変　『幽栖』/悒うつぼ
初任務の後：『婆心古狸』/悒うつぼ

一つ一つはこぶし大サイズ、瞼と眼球がある文字通りの魔眼。
本人の身長を覆えるくらいの個数と質量があり、無数の波打つような闇の塊にも見える。

バランスボールサイズまでスライムのようにまとめられる。まとめるとバランスボール三つ分。
日常ではあまり外には表れておらず、本人の影に擬態している。大人しい寄りの挙動。
発現エフェクトがエンハイ寄りなのもあり、当人もあまり意識していない様子。

魔眼の虹彩の色は金目のほか、黒、灰、暗い緑など暗色ベース。
エンハイエフェクトを使うと、光の当たり具合で青～水色の寒色系に見えたりする。
また、一個だけ紫の目の魔眼がいる。

明暗は英語で「Light and dark」
＋くよくよする、の「sick」にdarkを変える
＝ライトアンドシック
＝早口で読むと音の流れが「Lethargic(無気力)」に、似てる、気がする！

…名付けた当時の彼の厨二心が偲ばれるコードネームである。
過去から来る無意識な自虐と、これからオーヴァードとして生き抜かなければならないことへの自暴自棄が透けて見える。
現在の彼は、何だかんだ「俺のキャラには合ってんだろ、もう歳だし渋くいきてえもんだ」などと開き直っているが、霧谷氏などの上層部に呼ばれると、当時の苦労や不貞腐れていた心境とか厨二心()を思い出して、なんとも言えない面映ゆい気持ちになるようだ。