はっきりいって、彼女はオーヴァードとしては落第者と評価せざるを得ない。ブラム=ストーカー、サラマンダー、モルフェウスのトライブリードではあるが、彼女にできることは凍らせることだけである。長時間凍結を維持できず、凍らせる範囲も限られている。どいうわけか、有機物を凍らすことができない。つまり、敵が機械でもない限り、相手を凍結させることはできない。例外は自分の血のみ。
　それ以外のレネゲイド能力は皆無だ。
　発熱・燃焼させることも一切できない。
　だが、彼女は恐ろしいオーヴァードだ。己が不才であると認識し研鑽を重ねに重ねた者は強い。
　エフェクトは補助的に使い、殺傷力は剣術・抜刀術を磨くことで、彼女は自分の欠点を補ったのだ。
　特筆すべきは刀全体を氷で覆って槍やウォーピック、槌など別の武器に変えて攻撃を繰り出すことだ。この技のために刀以外にも様々な武器を学び、実戦で扱えるようになるまで訓練を積んでいる。14歳という若さで、だ。
　彼女の技はこれからも成長していくだろう。

　姉妹たちは燃えている部屋の隅でうずくまっていた。当時、彼女は3歳で、1歳の妹とともに6歳の姉の腕の中に抱かれていた。すぐに保護されたのちにオーヴァードであることが認められ、UGNの施設で暮らす事となった。

赤砂邸内であちこちを燃料物無しに発火させるジャームらしき人物を、偶然UGNエージェントが目撃した。すぐさま突入した彼によると、そのジャームは赤砂莉紗の父親だった。父親はすでに使用人、莉紗の祖父母や母親を殺害していた。自身の娘たちを標的に探し回っていたところをエージェントが交戦。父親は敗北し、死亡が確認された。ジャーム化した経緯は不明。調査も行ったが徒労に終わった。わかったのは、莉紗は背中を父親に切りつけられたこと。その後、母親が彼女を妹たちと一緒に匿ったことだけだ。

　某企業に勤める科学者の父と短歌を詠む歌人の母との間に産まれた。姉の莉沙、妹の來治がいる。姉妹たちとは生活を共にしており、彼女らといる時は冷酷なFROST BLOODではなく、朗らかに笑って姉妹との時を過ごす赤砂氷凪だ。彼女は姉妹を非常に気にかけており、ある事件で莉沙が心の傷を負った時も、來治がエフェクトを使うたびに副作用で自身の記憶が消えていくことが発覚したときも、彼女が一番をケアを行っていた。彼女が2人の支えになってることは間違いない。今は亡き両親との記憶はほぼない。