ある少年は日常に疑問を感じていた。

優しい母、尊敬できる警察官である父親。いい両親に恵まれていた。
学校もいたって平凡で平和で、周りの人にもいい人が多い。
近所の人とも良好で、趣味も生活も充実していて…何の問題もない、変わっていない生活が続いている。

…本当に？本当に【何も問題は起きていない】のか？起きていないのだとしたら…この、違和感は、喪失感は、一体？

その疑問は少年が力に目覚めたことで…UGNの記憶操作が及ばない存在になったことで、答えを得ることになった。

妹がいた。優しくて、明るくて、ちょっといたずらで。それでも、一番大事な妹だった。

ある時、家族は謎の男たちに襲撃され、謎の実験室に囚われることになった。…どうやら警察官である父の捜査手腕が邪魔になったようだった。そんな謎の男たち…FHにとって邪魔な人々を、まとめて処分するための実験体扱いだったらしい。

そして実験を受けさせられて、限界を迎えたのが妹だった。
両親や自分の抵抗むなしく、実験体となった妹は。その力を覚醒させると同時に暴走を起こし、大きな衝撃波を周りにまき散らした。それは周りで実験行っていたもの達に…そして、家族も、他の実験体たちも巻き込んで、全てを吹き飛ばした。

被害者も加害者も、全部巻き込んで。機械も人も関係なく。全ては風の刃に切り裂かれた。即死して助からないものもいた。自分も家族も血だらけで。…それを見て、絶望の表情を浮かべる妹に、手を伸ばせずに。視界は闇に呑まれた。

UGNが後処理をする中で、妹はUGNチルドレンになることを希望したらしい。そして、家族の全ての記録と記憶から、自分の存在を消したようだった。…己という怪物を、近付けたくない、と。そして、裏に、汚れ仕事に身を投じて行った。


…許せない
実験を施したFHも、戦力が増えるからと妹をチルドレンとして受け入れたUGNも、オーヴァードを異物として隠し続ける世界も。…妹の存在も忘れて、のうのうと世界を生きる自分達家族も。
全部全部全部許せない――！

少年はただの少年であることを捨てた
家族との平穏も、持っていた良識も、自分を表す名前と姿も。全部全部捨てた。少年の繋がり全てを断ち切った。

ここにいるのは「世界を変える」という野望と、あらゆるものへの憎悪で狂った、ただの怪物だ
己から妹を奪った全てに報復し、妹の存在を世界が認めるようになるまで…全ての邪魔する存在を喰らってやる

名前の由来
苗字：ケルベロスが文献によって、竜の尾と蛇で構成された鬣を持つとされるところから
名前：ケルベロスが一説では獅子とも呼ばれるところから

本名ではない。戸籍としては消息不明として扱われている

妹は現在はこんな感じ
チルドレン時代は監査・潜入捜査等を行っており、一時はジャーム化寸前まで行っている

メンタルケアを怠った上司も兄の復讐対象である