あらゆる意味で頑丈な身体を持つ異能。
　覚醒をパスし、FHの装備適合実験に耐え、攻撃を弾き、変貌から回帰し、破片から再生する。
　切り札は体組成を爆薬に置換して火を点ける人間花火。

　覚醒はサービスだが、仕事の手配料は差し引かれ、FHアイテムは実費購入で月賦払いである。

　父子家庭で育てられる。
　母は死別したと聞かされていたが、中学に上がった時に出ていったと教えられた。
　その事について思う所は特にない。町工場を経営しながら子育てもこなした父・釣鐘に感謝しているし、尊敬もしていた。

　ある日、FHセル"バードファイナンス"代表を名乗る男、鶏立刷創に接触を受けた。
　父は彼に借金があるそうだ。当初は経営苦で手を付けた現実的な額であったが、複利が膨れ上がり一千億円とのこと。
　んなわけがあるかいと確認してみると、なんともどうやら真実らしい。

　その後。通報やら破産やら、そういった賢そうな手段が如何に賢くないかと知らしめる諸々の出来事があった後、鶏立は岡音に言った。
　「複利の加算は凍結する。父親への取立も一時停止する。その代わり、お前に返済する手段を与えてしまおう」
　と。

　熟考の末に話を受け、見込み通り人為覚醒。計画に従いUGNの『保護』を受け、イリーガル登録を果たした。
　以降、時折UGNの仕事をこなしながら、鶏立に情報を流している。
　その時にUGNへ泣きつかなかった理由は父の身を案じ、役に立ちたかったというのが一つ。
　大切なお金を裏切ってはならないというのがもう一つ。

　それはそれとしてちゃんと嫌な気分だし、借金を早く返して自由になりたい。

　不幸中の幸いは、元本から非現実的なまでに膨れ上がっていた事だと考える。
　でなければ、もっとありふれた悲劇で回収を終えられていただろうから。
　こうして、仮初の平和を満喫することも無かっただろうから。

・特技はお得なお買い物。5円で焼きそばが作れるという噂まである。

・趣味は建物の観察。建築系の大学に行きたいが、無理だし贅沢かなと思っている。

・怖い事は返済の可能性が途絶えた時に起こる何か。

・妙な笑い方は『あっし』のチューニング。『間の抜けた雑な人間』のリセットボタン。

・命は一番大事。でも優先順位がまずは自分、次にロイス対象、その他と続きます。

・両利き。

・親父に教えられて酒好き。変な飲み方をする・させられる前に教えておこうの親心ではある。一応。

・海水浴が苦手。巨大な人食い鮫に追いかけられた事がある。
　同級生「サメ映画がさぁｗ」「冗談じゃねんだって、ホントに！！」

　今日の仕事はなんだろな。FHの運営する地下娼館の壊滅。
　支部長サンはデータの回収もするらしいけど、それは仕事に入ってねーや。

　さっくり制圧して地下の調査に赴けば、想定以上の地獄絵図。
　向いてない『おねーさん』をチルドレンの子にやりながら、なんとか地上に返ってくる。

　保護した子の家族は、地球の何処かにいるらしい。
　それもまた、請け負っていないお仕事。
　でもまあ、すみちゃんの食べていたドーナツが妙に美味しそうだったから、それで雇われてみる事にした。
　
　ちょっと貸しやら資産やらを削りながら、ほんのちょっとだけ温かいデブリーフィングを済ませた。
　現実は、寒々しい空を舞うコウモリなんだけどね。

　今日の仕事はなんだろな。海洋レネゲイド汚染研究施設『トリトン』汚染生物対策室室長-イシュベル・メルヴィルに以前の仕事の縁から呼び出しを受け、所在地近隣で観測された高レネゲイドについて調査を依頼された。
　受諾した直後、なんだか様子のおかしいイシュベルに不安を覚えたものの、前金を貰ったからにはやり遂げるしかない。
　同施設はUGN系列であり、同様に手配された（ように見えた）エージェントたちと轡を並べて事態に当たるべく合流する。

　神城に連なる支部長とチームを組む事となり美味い飯くらいにはありつけるかとはしゃいだのも束の間。UGNエージェント・アカツキの思わせぶりな発言────十中八九正体を見透かされているであろう牽制により、個人的な進退についての立ち回りもタスクに追加された。
　地域の勢力図はそれとなく把握できてきた翌日のこと。暴れる人喰い魚・それらを纏めて飲み込む巨大な鮫・人智を超えたサイズの白鯨と釣瓶打ちに対峙し、海にそこそこ大きなトラウマを抱える事になる。

　イシュベル室長の目的、白鯨の正体と対策、レネゲイド励起の原因を突き止め、事件に当たる姿勢を確固たる物としながら、最後のピースである暗躍するFHセル『テスタメント』に接触を図る。
　上手いこと調整しようかとも思ったが、同行者達の圧倒的暴力によりその隙も無かったりしながら無事に情報を確保。
　後処理までの僅かな時間で、保身についても達成するべく賭けに出る。神城支部長に対し己の身分を明かし、FHの情報を売る事で利用価値を担保しようと交渉を持ちかけた。一応好感触の反応を貰ったは良いものの、利よりも情で受け入れてくれた事にペースを狂わされ、悪しからぬ思いを抱えさせられたりしながら仕事の仕上げにかかる。

　紆余曲折を経て受諾した追加のお仕事は、迫り来る大型魚類からオブジェクトを護り抜く事。護衛と来れば盾役の十八番。未だ新鮮な恐怖に襲われはしたのものの、無事任務を完遂し、一応の終結を迎える事になる。
　それからイシュベル室長が半ばすれ違いにより憎み合った仇敵をパーティに招いたり、案の定喧嘩になったり、喧嘩の助力を請け負ったり、脅かされた意趣返しを含め大騒ぎを起こしたりしたが、丸く収まったのだから万事良しとしよう。
　ちょっと本気になりかけてた相手が彼女持ちだと判明したりはしたが、継続的な卸先を手に入れ、身の安全まで配慮してくれると言うのだから文句のつけようもない結果である。誰がなんと言おうと、これ以上無い、最良の結末である。

　今日の仕事はなんだろな。UGNイリーガルとして支部に訪れた岡音を迎えたのはオーヴァードに占拠された食堂であった。
　これの鎮圧が任務かと思いきやどうやら突発的なイレギュラーのよう。追加報酬の確約を貰い、ウキウキでメガホンを手に取る。

　続きも盛り沢山。暴走バスを止めたり、職務放棄したチルドレンに懐柔されかけたり。展望台占拠犯を排除しようとしたり。
　その犯人が顔見知りのマスターエージェントを捉えていたり。
　……捉えていたり！？！？
　妹が12人いる異常者とか、それを操っているのもFHだったとかこの際関係ない。
　あの一騎当千モンスターをどう爆発させずに納めるか。それだけに心を砕いていた。

　その最中、肩を並べた"ローレライ"の美貌に狂わされて行動指針がブレたり。
　3000万円という個人的報酬をチラつかされて自爆したりしたが、この際それはいいだろう。
　結局巻き込んだビル修繕費で今回の仕事の報酬ごと飛んだりしたが、まあ、いいだろう。
　命の次にお金が大事だが、やはり命あっての物種なのだから。

　雇い主のおかげで良いお酒が飲めたのだ。それで十分じゃないか。
　帰り道で屋台をやっているアルフレッド・J・コードウェルとも会えたし。
　…………
　……会えたし！？！？