頑丈な身体を十全に扱う異能。
　攻撃に耐える程度のものだと説明しているが、実は爆心地にいても再生できるレベル。

　覚醒はサービスだが、仕事の手配料は差し引かれ、FHアイテムは実費購入で月賦払いである。

　父子家庭で育てられる。
　母は死別したと聞かされていたが、中学に上がった時に出ていったと教えられた。
　その事について思う所は特にない。町工場を経営しながら子育てもこなした父に感謝しているし、尊敬もしていた。

　ある日、FHセル"バードファイナンス"代表を名乗る男、鶏立に接触を受けた。
　父は彼に借金があるそうだ。当初は経営苦で手を付けた現実的な額であったが、複利が膨れ上がり一千億円とのこと。
　んなわけがあるかいと確認してみると、なんともどうやら真実らしい。

　その後。通報やら破産やら、そういった賢そうな手段が如何に賢くないかと知らしめる諸々の出来事があった後、鶏立は岡音に言った。
　「複利の加算は凍結する。父親への取立も一時停止する。その代わり、お前に返済する手段を与えてやる」
　と。

　熟考の末に話を受け、見込み通り人為覚醒。計画に従いUGNの『保護』を受け、イリーガル登録を果たした。
　以降、時折UGNの仕事をこなしながら、鶏立に情報を流している。
　その時に泣きつかなかった理由は父の身を案じ、役に立ちたかったというのが一つ。
　大切なお金を裏切ってはならないというのがもう一つ。

　それはそれとしてちゃんと嫌な気分だし、借金を早く返して自由になりたい。

　不幸中の幸いは、元本から非現実的なまでに膨れ上がっていた事だと考える。
　でなければ、もっとありふれた悲劇で回収を終えられていただろうから。
　こうして、仮初の平和を満喫することも無かっただろうから。