金柴 刀理とは生まれた時からずっと一緒だった。
父親同士が親友でさらにいえばオーヴァード同士、家も隣、母親同士も仲が良く、それでいて同年代の子供たち。この条件が揃えば、よほど子供たちの相性が悪くない限り家族ぐるみの付き合いが多くなるのは当たり前のことだった。
彼の父親が亡くなり、兎和の父親も仕事と称し今はほとんど家にいないが、母親同士や彼と兎和の縁は続いている。
そんな兎和には秘密があった。
それは、金柴 刀理に恋をしていることだ。

彼に恋をした時のことは、いまだによく覚えている。
白藤兎和は生まれながらに珍しい髪色と目の色をしていた。さらにはその中性的な顔立ちもあり、外を歩けば人の視線を集め、時には心無い言葉を投げ掛けられた。
"ビサイド"の協力もあり早い段階からオーヴァードの力を使いをこなしていたが、それ故に自分は普通の人とは違うということも理解しており、その力が使い方を間違えれば人を傷付けるものだということも理解していた。
だからこそ、そうした普通の人から向けられた悪意への対処法が分からず、心を閉ざしかけた兎和を救ってくれたのが彼という存在だった。
兎和の髪と目の色をうさぎのようで可愛いと言い、この髪の色と目の色が好きだと頭を撫でてくれた。一緒にいる時に兎和の悪口を言う人がいれば、庇い守ってくれた。自分と同じでまだ幼いのに、それでも、相手が大人であっても兎和の為に立ち向かってくれるその背に心奪われ、そして、彼への恋心を自覚したのだ。
その日から彼の存在は兎和の世界の中心となった。

彼と共にいたい。彼が自分を守ってくれたように、自分も彼を守りたい。彼が嬉しい時も、辛い時も、悲しい時も。どんな時でも彼のそばにいたい。
そうした気持ちを抱いてからは、それこそ必死だったように思う。
そんなある日、何を血迷ったか母親が似合うからという理由で兎和に女の子の格好をさせた。母親がそうした奇行に走るのは初めてのことではない。兎和は諦めたようにただその時間が過ぎるのを待っていた。その時に、彼が兎和を遊びに誘いに来たのだ。
彼は女の子の格好をした兎和をバカにすることはなく、むしろかすかに頬を赤く染めたような気がした。今思えばそれは気のせいだったのかもしれない。しかし、当時の兎和にはそう見えた。
それがきっかけで、兎和は常日頃から女の子の格好をするようになった。
なお、母親は「私、娘も欲しかったからちょうどいいわ」と受け入れている。父親も「兎和は何を着ても似合うな」と止めるつもりは無いらしい。

父親からUGNチルドレンにならないかと言われた時も、彼と離れたくなくて必死に抵抗した。
普段はわがままも言わない物静かな息子のその態度は両親を酷く驚かせたが、UGNチルドレンとなったことで彼と共にいられる時間が少なくなること、そしてしばらくの間は彼と離れて暮らさないといけなくなるという事実を受け入れることは到底できなかったのだ。
しかし、父親は自分の息子が優秀なUGNチルドレンになるだろうという予想をしていた。
どうしても息子をUGNチルドレンにしたかった父親は、上層部へと掛け合い、協議を重ねった結果、『自宅からUGNチルドレン育成施設へ通う、通う日は固定にせず兎和が行っても良いと思える時だけ』などの破格の条件をとりつけることで兎和をUGNチルドレンにすることができた。
父親の予想通り、兎和は優秀なUGNチルドレンとなった。それもそのはずだ。UGNという組織に関わる前から、"ビサイド"という優秀な先生と関わっていたのだから。
特別待遇を受ける兎和という存在は、同期のUGNチルドレンにとっては異質でしかなかったことだろう。故にほかのUGNチルドレンとは良好な関係を築くことはできなかったが、それでも良かった。
彼と、そして"ビサイド"がいてくれれば、兎和には何も必要なかったのだ。

そうした努力(？)の甲斐もあり、兎和は彼の幼馴染兼親友として、今も彼の隣に立っている。
彼がオーヴァードとして覚醒した時も、お互い成長して様々な環境が変わっても、それでも彼のそばを離れなかった。
彼に少しでも綺麗だと思ってもらいたくて美容には気を使った。
特に彼が好きだと言って褒めてくれた髪は大切にしている。
彼に可愛いと思われたくて、私生活でもいまだに可愛い服を着ている。
朝に弱い彼を起こして共に学校に行く。
彼には栄養のある物を食べて欲しくて、母親から料理も習った。特に彼の好物の作り方を覚えるのに必死だった。その甲斐もあり、彼の口に合う料理を作れるようになり、今ではどんなに忙しくても彼にお弁当を作って渡す日々だ。それを嫌がることなく受け取り、残さずにいつも完食してくれることが嬉しい。
しかし、成長したからこそ分かる。この日々がずっと続くわけではないということが。
彼は自分と違い異性愛者だろう。聞いたことは無いが。いつしか誰か、異性と恋をして、そして……。
そんな日が訪れないことを願いながらも、彼が幸せならばその時は、友人として祝福しよう。笑顔で彼を送り出し、そして離れようと考えている。

ちなみに三つ編みに使っているヘアゴムは彼から貰った物であり宝物。

ロイス:横瀬敬吾(✓P執着/N殺意)
FHエージェント、"リッパー"横瀬敬吾。
任務よりも殺しを優先する最悪の男だ。
キミは戦場で何度か顔を合わせたことがあったが、これまで奴にとどめを刺す機会はなかった。
そして今回、FHの研究施設を襲撃したキミは横瀬と遭遇する。
今度こそ、逃がしはしない。

ロイス:伊澤亮也(P連帯感/N食傷)
伊澤亮也は、キミのクラスの文化祭委員だ。
キミは伊澤と協力してクラスの出し物の準備を進めた。
前日までに準備を終わらせることに成功し、とうとう開催当日の朝を迎えた……はずだった。
だが、学校に登校してみると、何故かまだ準備中。
昨日完成させたはずの看板まで塗りかけに戻っている！
一体、何が起きている！？

ロイス:ビサイド(P信頼/N不安)
ビサイドはキミが生まれたときから共に戦ってきた相棒だ。
しかし、戦ってきたハッチェリーセルのオーヴァードたちは、ビサイドは自分が作り出したものであると告げる。
キミの知らないビサイドの秘密、そこに何が隠されているのだろうか。

※本当に言うかはしらない。多分言うとしたらビサイド相手に言うことになると思います。
「僕の方がずっと昔から……、彼のことが好きだったのにね」
「最初から選ばれるなんて思ってない。でも、それでも良かったんだ。ただ傍にいることができるなら……そう、思っていたんだ」
「僕も彼女のように本当の女の子だったら……彼に選んでもらえたのかな」
「あーあ、やっぱり本当の女の子には敵わない、か。ほんと損な役回りだ」
「髪を切った人に失恋した？って聞く人がいるけど、髪を切ったら失恋って誰が言い出したんだろうね。……明日は噂の的になるかもしれないな」(悲し気に微笑みながら髪を切る)