牛戸にはかけがえない親友がいた。
　ウィスタリア・ロレーヌ・アルスノウァだ。

　牛戸がウロボロスシンドロームだと判明してすぐに担当医兼研究員として、彼女が付けられた(正確にはアルスノウァ自ら立候補したのだが)。
　元々あった戦闘時の暴走体質の改善とウロボロス研究のため、牛戸は頻繁に彼女の実験を受けていた。
　肉体・精神ともに負荷がかかるものが多かったものの、彼女の献身的なアフターフォローのおかげで実験の苦しさは紛れていたようだ。それどころか牛戸自身も彼女の期待に応えようと協力的だった。

　だが、アルスノウァのラボがゼノスに襲撃されたとき、命惜しさに真っ先に逃げてしまった。
　結局、彼女は死亡し自分だけ生き残ったことが彼に深い影を落としてる。

　ウィスタリア・ロレーヌ・アルスノウァを元に複製されたレネゲイドビーイング──ルーア・ハシャドに一方的に絡まれている。
　普段はウィスタリア・ロレーヌ・アルスノウァ
　牛戸にとっては不快な対象であり、嫌っている。すでに亡くなった親友を象っているというのは気分のいいものではないだろう。
　だが彼がルーア・ハシャドを拒絶するのはアルスノウァの死と向き合いたくない表れかもしれない……。

　彼の影から現れる蚊の大群。どうやら牛戸とは別に、この従者達自身が独自のエフェクトを発揮している。彼の弾丸が大抵の装甲を貫くのは、この従者達のおかげであるようだ。
　また、人語を解すようで蚊たちが密集して文字を作って応える、いわば筆談の形でコミュニケーションが取れる。基本的に人をバカにした態度である。私はハゲた頭のことをさんざんにバカにされた。
　この態度は牛戸に対しても同様だが、それでも牛戸の言うことだけは従う。代わりに血をもらうことで対価としているようだ。

回転式拳銃。いわゆるリボルバー。
戦闘時は彼の影から湧き出る従者達に覆われて銃全体がドス黒く染まり、尖ったフォルムに変化する。牛戸が握ると、シリンダー側面から手の動脈めがけて数本の鋭く黒い管を深く突き刺す。管から牛戸の血を吸うことでエフェクトを強力に引き出し、弾丸を強化する。血が供給されるとフォルムに沿って数本の赤く蛍光する線が走る。

ペスティレンス→「黒死病(ペスト)、害悪」の意味。
ペスティレント→「致命的な、感染した、有害な」の意味。
ウィスタリア・ロレーヌ・アルスノウァ
→レメゲトンという５部構成の魔導書、その一部がアルスノウァ。ちなみに有名な「ゴエティア(ソロモン72柱の悪魔の初出)」もこのレメゲトンの中の一つ。