ヴェロニカ。別の世界での、灰崎リンネの名だ。その世界でのリンネは、奴隷として囚われた過去を持つ少女だった。圧倒的な暴力に全てを奪われ、蹂躙され、阿るを強いられた過去のリンネは、別の世界を夢想していた。何も奪われずただ平和に、ささやかな幸福を享受して生きられる、そんな異世界を。
やがて少女は永い旅路と多大な犠牲の果て、世界を渡る術を手に入れ、その世界での生を終えた。
再び目を覚ましたこの世界は、リンネの理想とは遠い場所だった。やはり人は戦いをやめられない。戦いの手段もまた、尽きることは無い。そしてこの身は、戦うための能力を持って生まれてきてしまった。
独り、呆然と旅を続けた果て、気付けばUGNの一員として再び戦いに身を投じていた。
​───────もう、夢は終わりだ。世界を渡ってまで探し求めた理想郷は、きっとどこにも無いのだろう。払った犠牲に見合う答えを得られず、ただ時と共に朽ち去ることを、かつて｜灰《ラウム》と呼ばれた少女は選んだ。

オーヴァードに覚醒し、親元を離れざるを得なくなった不幸な少女、ヴェロニカ･ルーべルシア=宝生。
彼女との出会いは、戦いの中で死を待つだけだったリンネの人生に新たな火を灯した。
間違いない。この子は“この世界の私”なんだ。同じ顔と名を持つ少女との邂逅によって、リンネはひとつの仮説を立てた。
｜世界《ステージ》ごとに同じ｜登場人物《キャラクター》が存在する。
そしてリンネは、ある誓いを秘めた。ヴェロニカを、いつか家族の元に帰してやること。この少女の孤独な運命を変えてやりたい。それがきっと、私の過去の清算。世界を渡り歩いた意味になるはずだ。
世界の理不尽に全てを奪われるのは、もうたくさんだから。彼女を私にしないために、私は彼女を守り抜きたい、と。