ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

鏑木 氷華 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

戦場の深紅レッドライン鏑木 氷華かぶらぎ ひょうか

プレイヤー:ぺん

…………了解

年齢
性別
星座
身長
160
体重
血液型
ワークス
UGNチルドレンC
カヴァー
ブリード
クロスブリード
シンドローム
ノイマン
ウロボロス
HP最大値
30
常備化ポイント
12
財産ポイント
3
行動値
10
戦闘移動
15
全力移動
30

経験点

消費
+50
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 FHの実験によって生まれた誰かの複製体 誰がベースなのかは本人は知らない
天涯孤独
経験 UGNに保護されてチルドレンとして育てられた
実験体
邂逅 大切な人にここまで導いてもらった。
恩人
覚醒 侵蝕値 ベースの人間に誰かの遺伝子を組み込んで作られたらしい
感染 14
衝動 侵蝕値 指定通り、殺す
殺戮 18
侵蝕率基本値32

能力値

肉体1 感覚1 精神8 社会1
シンドローム0+1 シンドローム0+1 シンドローム3+2 シンドローム1+0
ワークス ワークス ワークス1 ワークス
成長 成長 成長2 成長
その他修正 その他修正 その他修正 その他修正
白兵 射撃 RC2 交渉
回避1 知覚 意志1 調達5
情報:UGN1

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 複製体デュプリケイト ハンティングスタイル取得
コンちゃんさん 親近感 隔意
一さん 信頼 恐怖

メモリー

関係名前感情
メモリー 鏑木 風花かぶらぎ ふうか 遺志

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(LV)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
軍神の一手 1 イニシアチブ 自動成功 自身 至近 5 80%
追加行動エフェクト 攻撃はできない シナリオ1回
原初の赤:解放の雷 1 メジャーアクション 〈RC〉 自動成功 単体 視界 5
対象の次の判定 C値-1(下限値6) 攻+LV×2
ハンティングスタイル 1 マイナーアクション 自動成功 自身 至近 3
戦闘移動を行う 離脱可能エンゲージ無視 シーンLV回
ポルターガイスト 1 マイナーアクション 自動成功 自身 至近 4 100%
シーン中攻撃力+所持してる武器の攻撃力する その武器は破壊される。
コンセントレイト:ウロボロス 3 メジャーアクション シンドローム 2
EA129 C値-LV(下限値7)
無形の影 1 メジャーアクション 効果参照 4
EA124 あらゆる判定と組み合わせ可 判定を精神で振れる ラウンド1回
朧の弾丸 1 メジャーアクション 〈白兵〉〈射撃〉 対決 武器 2
装甲無視 同一エンゲージ不可
混色の反乱 1 メジャーアクション シンドローム 範囲(選択) 2
≪原初の●≫を組み合わせた対象を範囲(選択)に変更 シナリオLV回
原初の白:オーバーロード 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 3 80%
命中判定直前使用 攻撃力+使用してる武器ひとつの攻撃力する メインプロセス終了時にその武器は破壊される。

コンボ

一点狙撃ワンポイント・ショット

組み合わせ
コンセントレイト:ウロボロス 無形の影 朧の弾丸
タイミング
メジャーアクション
技能
射撃
難易度
対決
対象
単体
射程
武器
侵蝕値
8
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
~99%
8
7
0
100%~159%
8
7
0
160%~
8
7
0

道を切り開く一撃ブレイクスルー・ライン

組み合わせ
コンセントレイト:ウロボロス 無形の影 朧の弾丸 混色の反乱
タイミング
メジャーアクション
技能
射撃
難易度
対決
対象
範囲(選択)
射程
武器
侵蝕値
10
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
~99%
8
7
0
100%~159%
8
7
0
160%~
8
7
0

武器常備化経験点種別技能命中攻撃力ガード
射程解説
アンチマテリアルライフル 射撃 〈射撃〉 0 20 - 300m ガード不可 カバーリング時ガード計算不可 両手持ち 至近不可(購入予定)購/常:35/24
一般アイテム常備化経験点種別技能解説
特異体 20 エンブレム/一般 ポルターガイスト取得
ウェポンケース×6 6 一般 いつでも使用できる 武器を装備する。購/常:18/1
コネ:手配師 1 コネ 〈調達〉 ダイス+3 シナリオ1回
思い出の一品 2 その他 ライフル用のスコープ。武器には取り付けてない。
〈意志〉達成値+1

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
20 10 115 20 15 180 0/180
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

詳細
5年前

XXXX年XX月XX日
UGNによるFH研究施設の突入任務が行われた。
あるセルで非人道的な実験をしているという情報を入手したUGNがこれ以上の実験阻止のため本部及び支部5つを動員して行なった強襲実験である
報告書によればそこで行われていた中でも最も危険と判断された人口賢者の石レネゲイドクリスタル作成、適合実験含め様々な人体実験の悉くをUGNは永久凍結まで追い込んだ上に様々な装備、資源を回収するという多大な成果をUGNは出した。それは実験体なども含めて。
多数いた産まれたばかりの実験体にUGNは様々な措置を行ったがUGNチルドレンとして引き取った例も少なくはなかった。
これはその内の一体の話。

1日目

氷華、私の名前、2年前にFHから保護された実験体。コードネームは氷の引き金アイストリガー
名前はUGNに保護されてから付けられたらしい、実験番号の末尾が148だったからって聞いた。
所謂デザイナーベイビーというやつで誰かの複製体として生成された内の一体らしい。
同じ人物が元になった個体は複数体居たらしいがUGNに回収された際にバラバラになったため会ったことはない。
正直興味は薄い。
UGNに保護されてからはチルドレンとして訓練をしている。

そして今日から新しい支部に配属されることになった。

「へぇ、あの時のベビーちゃんの一人かぁ」

そんな風に話しかけてきたのは鏑木 風花(かぶらぎ ふうか)と名乗ったUGNエージェントだ。
コードネームは戦場の深紅レッドライン、白い髪が特徴的な女性だ。歳は……20代後半くらいだろうか。
どうやら私が回収された際の任務に参加していたらしい。

「って訳で私が氷華ちゃんの指導役って訳、よろしくねっ!氷華と風花で名前も似てるし戦い方なんかも結構似てるから仲良くしよっ!」

「…………ご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします。」

「あはっ、いいのいいの、固くならないでー、私の事はお姉ちゃんだと思ってくれればいいから!」
「…あ、もしかしてお母さん?」

よくわからない事を言う人だ、名前が似てるのはただの偶然だし姉でも母でもない。
そもそも培養槽で産まれ育った私にそんな人間はいない。

「いえ、上司に対してその様な態度はできません。」

「えー気にしなくて良いのにー」
「それじゃあもうちょっと仲良くなってからかな」

「…………」

なんと言うか……調子が狂う、距離をすごく詰めてくるし、今まで関わってきたことのないタイプだ。
まあその内諦めるだろう。

1日目-2

最初の任務は、ただの索敵任務だった。
戦闘はなし。特に異常があれば連絡して引き上げる、そんな予定だった。

支部に配属されたその日、私は最初の任務に出た。
指示された通りの手順を確認し、携行武器のチェックを済ませ、整備された視界の良いビルの屋上に陣取る。
無風。気温は平年並み。視界、良好。
まるで訓練の延長のようだった。

その時、通信に入った声が空気を揺らす。

「じゃーん、作戦名“ご近所パトロール大作戦”!」

耳に入ってきたのは、呑気すぎる声だった。私は思わず目を瞬かせる。

「……その言い方は正しくないと思います」

通信の先でクスクスと笑う気配がした。

「ほら、ヒョーカちゃんも楽しそうに言ってみて?」

「……作戦名ご近所パトロール大作戦……」

「うん、いい感じ!」

何が“いい感じ”なのかはわからなかった。
けれど、それを口に出すと鏑木さんは、いつもより少し柔らかい笑い方をした。


任務は平穏だった。特に動きはなく、風もなく、空は青く澄んでいた。
私は屋上で照準スコープ越しに通りを眺めていた。誰もいない交差点。時折通る車。決められたルートを通るパトロールの影。

通信越しに聞こえる鏑木さんの声は軽くて、どこか浮いていた。

「お、カフェに可愛い犬がいるよ。見える? あっ、見てる見てる〜。ほら、しっぽ振ってる」

「……今の任務は問題がないかの確認作業です。ただの犬を観察することではありません」

「そっかー、でもその顔、ちょっと笑ってる気がする」

私は一瞬、答えを迷った。
そんなはずはない、と思った。いや、もしかすると少しだけ、ほんの少しだけ口角が上がっていたかもしれない偶然だ。

だが、その「偶然」にどう応答すればよいかが分からなかった。
沈黙が数秒、通信に流れる。

「ヒョーカちゃんって、そういうとこあるんだね」

そう言って、鏑木さんは笑った。

私は、ただ視線をスコープに戻した。画面の中の犬が、しっぽを振っていた。

3日目

「ヒョーカちゃん、今日もちゃんと“おはよう”って言えたね」

鏑木さんにそう言われたのは、任務に出る前の朝だった。
支部の廊下で出会い、何となく口にした挨拶に、彼女はとても嬉しそうな顔をした。

「それが……普通のことでは?」

私はそう返した。挨拶は社会的行動の一つであり、業務円滑化のために必要な最低限の手順。
それを“嬉しい”と言われる理由がわからなかった。

「うん。でもヒョーカちゃんが言ってくれると、ちょっと嬉しいの」

その言葉を、私は何度も心の中で繰り返していた。
なぜ“ちょっと”がつくのか、なぜそれが“嬉しい”のか。

正直、理解には程遠かったが、それでも私の中に何かが残った。
それは味の残滓のように、時間が経っても消えなかった。

1週間

支部の訓練場は、夕方になると少しだけ温度が下がる。
天井の照明は白く、壁に取り付けられた時計がカチカチと音を立てている。
無機質な空間。銃声が反響するたび、空気が緊張に染まる。

私は静かに銃を構えていた。ターゲットは50メートル先の動く標的。
無風。光量、安定。体内のリズムも整っている。
照準を合わせて、呼吸を調整し、引き金を引いた。

乾いた音が訓練場に響く。

「はい、ナイスショット〜。いつも通り、ど真ん中ね」

鏑木さんの声が、少し離れた観察スペースから届いた。

「……標準的な精度です」

「ううん、違うんだよなあ。氷華ちゃんの狙撃って、なんていうか……“無駄がない”のよね。機械みたいに正確なんだけど、それだけじゃないの」

私は彼女を振り返る。風花さんは、見慣れた赤い髪を揺らして笑っていた。

「ちょっと色気あるっていうか、線が綺麗。迷いがないから、余計に目を奪われる」

「……褒められる理由がわかりません」

「わかんなくていいよ。でも、そういうのって大事なの」

鏑木さんは訓練用のセンサーを片手に、私の成績を見ながら首を傾げた。

「ヒョーカちゃんってさ、誰に教わったの?狙撃」

「基本戦術はUGNで。」

「そっか。じゃあ、誰かに『こうやって撃つんだ』って、見せてもらったりは?」

「ありません」

「……ふーん。じゃあ、これからは私が見せる役にならなきゃだね」

彼女は笑ってそう言った。
冗談のようで、本気のようだった。

「私、氷華ちゃんに、色んな“撃ち方”教えてあげたいな。撃つって、守るためにも、伝えるためにも使えるからさ」

その意味がよく分からなかった。

でも私は、返す言葉を探しながら、そっと銃のボルトを引いた。


2ヶ月

任務の後、鏑木さんは毎回のように言った。

「ヒョーカちゃん、何か食べよっか〜」

私は最初、それが単なる習慣的な発言だと思っていた。もしくはエネルギー補給の一環。生体の維持。あるいはチームビルディング。

だが、違った。

鏑木さんは本当に「一緒に食べること」を楽しみにしているようだった。
私に選択肢を与え、好みを探り、時には手を引いて店に連れて行った。

「ヒョーカちゃんはあんこ派?カスタード派?」

その問いかけの意味がわからなかった。

「……どちらでも構いません」

そう答えると、鏑木さんは満面の笑みを浮かべて言った。

「じゃあ両方買って分けっこしよっか」

意味があるのか、と思った。
同じような焼き菓子をふたつ買い、分け合うという行為に効率はなかった。

けれど、渡された半分の焼き菓子はほんのり温かくて、包装の紙袋に指先がじんわりと温まったのを覚えている。

私は黙ってそれを受け取った。
それが「断らない」ということだと気づいたのは、食べ終わったあとだった。

「美味しかった?」

「……甘かったです」

鏑木さんはそれを“正解”とでも言うように頷いた。

次から、私は「何を食べたいか」を少しだけ考えるようになった。

3ヶ月

休日の午後。鏑木さんは、買い物に行くと言って私を誘った。

「ヒョーカちゃん、今日ヒマ?街、行かない?」

「買い出しならUGN支給で間に合います」

「そういうことじゃなくてさ〜、たまには日光浴びよ? ちゃんと地上歩かないと、狙撃手って地面の感覚鈍るんだよ〜?」

理屈に合っているようで合っていないその言い訳に、私は一度口をつぐんでから頷いた。

街は思ったより人が多かった。
駅前では期間限定のマルシェが開かれていて、露店には焼き菓子、手作りアクセサリー、観葉植物、見慣れない瓶詰めのジャムなどが並んでいた。

「こういうの、好き?」

風花さんは、透明な小瓶を手に取って訊いてきた。

「……使用目的が不明です。食料としてなら……甘いと思います」

「そうだねー、すっごく甘いよ。ほら、林檎のはちみつ漬けとか」

試供品から香る匂いは、確かに甘かった。
私は無言でそれを眺めていた。

「ヒョーカちゃん、食べ物の“美味しそう”って、どうやって判断してるの?」

「成分と色彩、保存状態と調理方法。平均的嗜好データに基づいて……」

「じゃなくて、感覚的に“食べたいな”って思う瞬間、ある?」

私は答えに詰まった。

鏑木さんは笑って、瓶をレジに持っていった。
あとで、それをヨーグルトに入れてくれて、私はそれを“美味しい”と思った。
まだ「感覚的に」とは言えないかもしれなかったが、言葉にせずとも、次の週にもまたあの瓶が支部の冷蔵庫にあった。

3ヶ月-2

買い物帰りのバス停で、小さなトラブルが起きた。

駅前のバスロータリーで、男の子が転んで泣いていた。
親の姿は見えなかった。
周囲の人も遠巻きに見ているだけだった。

鏑木さんが、ひょいとしゃがんで、ティッシュを取り出した。

「大丈夫? 痛かったね」

彼女は迷いなく、まるで昔からそうしていたかのように子どもに声をかけていた。

私は少しだけ離れた場所からそれを見ていた。
何をすればいいかわからなかった。

鏑木さんは振り返って、私に手を振った。

「ヒョーカちゃん、お水持ってる?」

私は無言で、カバンの中から小型ボトルを差し出した。

それを子どもに渡した鏑木さんは、にっこり笑って、

「ありがとうって、ちゃんと言ってね?」

そう言って、私の方を見た。

男の子の「ありがとう」という声は、なぜか私の胸に深く刺さった。

何かをしたわけではない。なのに、誰かが私に礼を言った。
それは初めての感覚だった。

「……どうしてああいうとき、迷わず声をかけられるのですか」

帰り道、私は訊いた。

「うーん……慣れ、かな?」

そう言って鏑木さんは笑った。

「でもね、誰かが困ってるとき、何もしないより“間違えてでも動く”ほうが、きっと後悔が少ないって思ってる」

その言葉は、ずっと後になって、私の中に残ることになる。

3ヶ月-3

夜の支部は静かだった。

訓練場の照明は落とされ、廊下の自販機が微かに唸っている。
書類を捌く音も止み、警備端末の表示ランプだけが規則正しく明滅を繰り返していた。

私は共用ラウンジのソファに座り、手入れを終えた銃のボルトを弄っていた。

「……あれ、それって整備終わったやつでしょ? なんでまた分解してるの」

鏑木さんが、片手に紙コップを持ってやってきた。
コーヒーの匂いがふわりと漂う。

「……手が勝手に動いていました」

「ふふ、それって職業病だね」

彼女は私の隣に腰を下ろし、カップをテーブルに置いた。

「眠れないの?」

「寝付けません。今日は特に音が静かすぎて」

「わかるなー。静かすぎると、かえって落ち着かないってやつ?」

私は少しだけ頷いた。

「昔ね、私も眠れない日があったの」

風花さんがぽつりと話し始めた。

「UGNに来たばかりの頃。まだ任務も慣れてなくて、同期も少なくてさ。夜中、眠れなくて、ずっとこのラウンジのソファでぼーっとしてた」

「……怖かったのですか」

「うん。怖かったよ。ミスったら誰かが死ぬかもって考えるとさ。自分の価値とか、重さとか、急に実感しちゃってさ」

その言葉は、私の中で引っかかった。

「……私は、自分の価値について考えたことがありません」

「そうだね。きっとまだ、そんなこと考えなくていい時期だったんだと思う」

風花さんはテーブルの縁を指でなぞるようにして、話を続けた。

「でも、ヒョーカちゃんは“これから”の人だからさ。自分が何を守って、何に守られてるかを、ゆっくり見つけていけばいいと思うよ」

その“ゆっくり”が、どういう速さなのかはわからなかった。

「……鏑木さんは、今は怖くないんですか」

「うーん、怖くないって言ったら嘘になるけど、でもね。怖さって、自分が何かを持ってる証だと思うの」

「証……」

「うん。何もない人は、失うこともないから怖がらない。怖いって思えるのは、ちゃんと何かを手に入れてるってことだよ」

私はその言葉を反芻した。

風花さんの声は落ち着いていて、どこか懐かしいような、遠い火のような温かさがあった。

その夜の会話を、私はしばらく忘れないでいようと思った。

半年

今回の任務は、いつもよりも少しだけ危険だった。

対象は元UGNのジャーム。潜伏していた廃ビルに向かう。
建物は老朽化が進んでおり、足音一つで床が軋むような場所だった。

鏑木さんは現場に入る前、私の肩をぽんと叩いた。

「緊張してる?」

「していません」

即答だった。でも、それは正確には事実ではなかった。

「そっか。でも、怖かったら逃げてもいいんだよ」

その言葉に、私は一瞬だけ思考を止めた。
“命令”ではない言葉。選択肢を与えられるということ。
それは、私にとっては未経験の感覚だった。

私はうなずかなかった。だが、ほんの少しだけ、胸が軽くなった気がした。



戦闘は短かった。

私は遠距離からの狙撃を担当し、鏑木さんは前衛として突入。
彼女は流れるように動き、私はそれを支援するように一発ずつ確実に撃ち抜いた。

「今だよ、ヒョーカちゃん!」

その声に合わせて引き金を引いた。敵の腕が吹き飛び、鏑木さんが懐に飛び込む。
無駄のない動き。無言の連携。
たぶん、彼女はそれを“信頼”と呼んでいたのだと思う。

戦闘後、鏑木さんは振り返って言った。

「やっぱり、ヒョーカちゃんの狙撃って綺麗だね。音が心地いい」

「一般的な型番です。それに同じ銃を使っているわけでもありません」

「それでもだよ」

銃声にそんな感想を抱く人がいるとは思わなかった。
けれど、それを言われて悪い気はしなかった。

その時、私はほんの少しだけ、自分の“撃つ”という行為に意味を持ち始めていた。

1年

私は以前よりも多く話すようになっていた。
必要最低限の会話に、少しだけ無駄が混じるようになっていた。

「今朝、犬がしっぽ振ってました」

「うんうん、それって可愛いねって思ったってこと?」

「……はい。たぶん」

私がそう返すと、風花さんは笑った。

その笑いは、前より少しだけ“自然”だった。
私がそう感じただけかもしれない。
けれど、それを否定しようとは思わなかった。

私の言葉に、誰かが笑う。
その事実を、私は少しずつ肯定できるようになっていた。

1年2ヶ月

「……ひとつ、訊いてもいいですか」

ある日の任務帰り、夜の支部のエントランスで、私は風花さんに問いかけた。
自販機の横で、彼女は缶コーヒーを取り出したばかりだった。

「なあに?」

「……コードネーム、戦場の真紅レッドライン。どうして、そう名乗っているんですか」

風花さんは少し驚いた顔をした。
けれど、それはすぐにいつもの笑みに変わった。

「へえ……ヒョーカちゃんがそういうこと、気にするようになるなんて、ちょっと感慨深いね」

「……興味が湧いただけです」

「ふふ、そういうとこも可愛いよ」

彼女は缶を片手に、隣のベンチに腰を下ろした。
私も黙って隣に座る。少しだけ、缶の中の甘い香りが鼻をかすめた。

「“戦場の真紅(レッドライン)”ってね、最初に名乗ったのは私じゃないんだ」

「……?」

「昔の先輩がいたの。すごく遠距離戦が得意で、射線が赤く見えるって噂されてた人。彼が戦場でラインを引くと、敵がそれを超えられなかった。だから仲間内で、そう呼ばれてたんだって」

「あなたが、継いだんですね」

「うん。ある日、その人が私の前で倒れてね。私を庇って」

その言葉に、私は息をのんだ。

風花さんは、それでも笑っていた。

「その人が死ぬ間際に言ったの。“君はこれから先、誰かに線を引ける人になる”って。……それがどんな意味なのか、最初はわからなかったけどね」

彼女は缶を持ち上げ、一口飲んだ。

「でも、今はちょっとだけわかる気がする。たとえば、ヒョーカちゃんみたいな子が、自分の足で立てるように、誰かが“ここまでは来ていいよ”って線を引いてあげるんだって」

私は、その言葉の意味を、すぐには理解できなかった。
けれど、どこか胸の奥に、それが優しさだと感じる部分があった。

「だから、“ライン”なんですか」

「うん。その線を引くのは、私の役目だって思ってる」

風花さんの視線は、遠くを見ていた。
私は隣で、そっと彼女の言葉を胸に刻んでいた。

1年半

それは、ある意味で終わりの始まりだった。

私と風花さんの最期の任務は、当初の想定よりも過酷だった。
敵の数は多く、エリアは分断され、情報の精度も低かった。

混乱の中、私は一瞬、判断を誤った。

狙撃位置を見誤り、視界にいた敵を見逃した。
銃口が私に向いていた。
発砲音が耳を撃つよりも先に、風花さんの叫び声が届いた。

「ヒョーカちゃん、下がって!」

次の瞬間、赤が飛び散った。

赤い髪が、血にまみれて揺れていた。

「なんで——」

言葉にならなかった。

風花さんの表情は、どこまでも優しかった。
痛みも、苦しみも、その瞳には映っていなかった。

「ちゃんと、生きてね。私の……道、託すから」

その言葉の意味を、私はすぐには理解できなかった。

でも、風花さんの手が、私の手を強く握っていた。

私の手は冷たく、彼女の手はもう温かくなかった。



風花さんは亡くなった。

葬儀は静かに行われた。
多くの者が涙を流したが、私は泣かなかった。
泣けなかったのではなく、涙の出し方がわからなかった。

当時の支部長から、静かに訊かれた。

「……名を、継ぐか?」

私は少しだけ迷った。

けれど、答えは決まっていた。
彼女は私にとって姉であり母だった。今になってからの認識にどれほどの意味があるかも判らない、だけど

「……鏑木、氷華。コードネーム、《戦場の真紅(レッドライン)》」

それが、私の答えだった。

1年1ヶ月

風花さんがいなくなったあとの支部は、異様なほど静かだった。

人の数も、任務の量も、以前と何も変わっていないはずなのに。
彼女の声が響かないだけで、世界の音がひとつ減ったような感覚だった。

私はいつものように訓練場に向かい、いつものようにスコープを覗いた。

だけど、トリガーを引く指先が、ほんの少しだけ、鈍っていた。

標的のど真ん中に当たっているのに、評価は“合格”なのに、風花さんが何も言わない。
「ナイスショット〜」も、「線が綺麗だね」もない。

その沈黙が、胸に鉛のように重たかった。

訓練後、私は一人で備品庫を開き、風花さんが使っていたスコープを取り出した。

手入れが行き届いていて、埃一つない。
レンズは、私の指先を映すほど綺麗だった。

「……あなたが、見ていた世界」

私は独り言のように呟いた。
スコープ越しに見る風景は、変わらないはずだった。
でも、そこに映るものは、少しだけ違って見えた。

それから、私は風花さんの残したデータファイルを開いた。
任務報告書、訓練記録、雑多なメモ。

その中に、短いコメントがあった。

> “ヒョーカちゃん、最近ちょっと笑うようになったかも”

その一文を読んだとき、私ははじめて、喉の奥がつまるような感覚を覚えた。

それは涙ではなかった。
でも、それはきっと、涙の代わりに流れるものだった。

その後、支部長に頼みスコープを頂けることになった。

2年

「すみません、鏑木さん。ひとつ聞いてもいいですか?」

任務帰り、支部の武器庫で装備を返却していると、背後から声がかかった。

声の主は、最近配属されたばかりの新人チルドレンだった。まだあどけなさの残る顔に、真剣な眼差しだけが浮いている。

「……どうぞ」

「鏑木さんのコードネーム、“戦場の真紅《レッドライン》”って……どういう意味なんですか?」

その問いは、予想していなかった。

私は手にしていたマガジンをそっと返却ボックスに入れたあと、答えた。

「……道であり導きの線です」

「え?」

「その人が、自分の足で立てるように、違わぬように誰かが“ここまでは来ていい”と線を引く」

私はそれだけ言って、そっと彼に背を向けた。

けれど、新人は小さく呟いた。

「かっこいいですね」

私は、その言葉を否定しなかった。

2年-2

夜、私は風花さんのスコープを拭いていた。
使われなくなった道具は劣化する。定期的なメンテナンスが必要だ。

訪れた支部の屋上でスコープを磨く。

ふと、スコープ越しに覗いた街中に、小さな犬が映った。

あの日、カフェの前で見かけたあの犬に、少し似ていた。

「……どうでもよくは、ないかもしれません」

私は、誰にともなくそう呟いた。

2年-3

シナリオの1年前
別の支部に異動することになった。
底出小町という町、今いる所と比べると田舎といって差し支えないと思う。
私はかけがえのない思い出のあるこの支部を去る。
同僚……感謝している。
支部長……とても感謝している。
風花さん……言葉じゃとても言い表せない。
受け取ったものを大切に持って、一人の人間として、これからも生きていく。

名前

私の名前は、鏑木氷華。
コードネームは、戦場の真紅レッドライン

かつて、私に道を示してくれた人がいた。
私はその背中を見て、生き残った。

だからこそいつか私は、今度は誰かの“道”になろうと思う。

それが、私に残された“ライン”の意味だと信じている。



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アンチマテリアルライフルをな、いっぱい買ってな、一発ごとに壊していくんじゃよ

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 50

チャットパレット