UGNエージェント時代


『鑑賞者』"アプリシエーター"と行動を共にする元UGNエージェント。
自分の喪ったモノへの渇望と、その苦しみから逃れる為にFHの手を取った。

仲間に対しては飄々とした兄貴分。
納得すれば目上の言葉も素直に聞き入れるし、目下の者の面倒も見る。
唯、敵と認識した相手には極度に情を失い、残忍かつ狡猾な一面を見せる。
…情を失う、というよりは『記憶』として認識しなくなると言った方が正しいだろうか。
誰だか良く分からないが、敵なら殺す。
その程度の、もの。

UGNからそのまま強奪した『遺産』を利用する。
クロスボウ型のソレは本来遠距離で使うべき武器であるが、何故か的場は敵に接近しての
白兵戦染みた戦いを好む。零距離からの保身なき一射。それが『無謀なる射手』の戦い方である。
『まるで、死にたがっている様だ』との有城の言葉からCNが名付けられた。

FHテロに巻き込まれた時、的場は恋人であり同僚の女性と行動を共にしていた。
警察官として、ジャームと化したFHエージェントを止めようと拳銃を向けて――放った弾丸は、恋人の胸を貫いた。
運良く。或いは、運悪く。その一瞬を誰も見ていなかった。監視カメラも無く、観測した者もいなかった。
UGNが現場に辿り着いた時、其処にいたのは暴走寸前の状態でジャームをぐちゃぐちゃに引き裂いている的場の姿。
戦闘の余波で巻き込まれた市民の遺体も激しく損傷した結果、的場が誰を殺してしまったのか。
知っているのは、的場だけ。失われた的場の記憶だけである。
この時のトラウマで、極度に『誤射』を怖れる様になる。また『拳銃』に対しても激しい嫌悪感を見せる。
誤射を怖れる的場に適合した遺産が『必中』を司るモノなのは、何と言う皮肉だろうか。

…とはいえ、それは全て過去の話。
今の的場は、拳銃も恐れないし誤射も躊躇わない。
そんなものは、全て忘れてしまった。
尤も、彼はその遺産とエフェクトの力によって『必中』という呪いを与えられている。
もし、本当に誤射した時。彼は――

元来の戦闘能力の高さと、根が真面目な性格だった事が『災い』した。
的場はFHエージェントとして多くの任務をこなし、多くの人を殺し、多くの"元"同僚をその手にかけた。
仲間であるFHメンバーには、今迄の様に気の良い兄貴分でありながら、敵に対しては全く情けをかける事が無い。
しかし――任務の度に、記憶が剥がれ落ちていく。
まるで自分自身を守る為かの様に、ボロボロと記憶が壊れていく。
今の的場は、何の為に自分がFHの手を取ったのかすら思い出せない。
喪った『ナニカ』を得る為に、彼は今日も、引き金を引き続ける。