産まれて数か月の頃、指先から炎が出た彼を気味悪がった親に捨てられ、養護施設へ入所する。
幸いにも施設内にUGNと繋がりを持つ職員がおり、そのままUGNへ引き渡されチルドレンとして育てられる。

"彼は素直で此方の指示をよく聞くうえ、流石はレネゲイドの申し子といったところだろうか、攻撃力にも優れており非常に使えるチルドレンであった。奪われてしまったのがとても残念だ。またいつか取り戻してみせよう。"

という記述が今はもう無いチルドレン施設のパソコンから見つかっている。
この内容からある程度察せる通り、この施設と他の施設をかなりの頻度で行き来させられており、その過程で彼の中の何かがおかしくなってしまったと思われる。

その施設はもう無いが、彼自身の希望により未だに3ヶ月周期で異動を繰り返している。

現在は通信制大学に在籍しながらエージェントとして活動している。

彼は記憶障害ではない。何らかの原因により"そういう振る舞い"をしていると思われる。
再び自殺未遂を繰り返さないよう、丁寧な経過観察を行うこと。

「どーも初めまして。どうせ少しの間だけどヨロシクね。」
「首の傷だけ何回リザレクトしても消えないんだわ。困ったモンだよ」

「...忘れられたら、どれだけ楽なんだろうな」

『あそこ』が潰れたと聞いた時には、心の底から嬉しかった。もうどこにも行かなくて済むんだと思った。
色んなチルドレンの仲間と、関わりを持った。友達が欲しかった。独りには飽き飽きだった。

...こいつらに俺の何が分かる？

最低だと、思った。こんなことを一瞬でも考えてしまった自分が、嫌いで仕方なかった。

ああ、そうか！終わりにしてしまえばいいんだ！俺は天才だ！
包丁を首に向け、震える手も恐怖に流れる汗も知らないふりをして、俺はそのままそれを首に突き刺した。

これで終わりだと、思っていた。

気づけば俺の身体は、病院のベッドの上だった。
思いっきりビンタされた。何十分も叱られた。聞けば俺の持つ『凍結保存』とかいうヤツのせいで、血が凍って助かったらしい。

どこまでも諦めの悪い自分が本当に気持ち悪かった。こんな自分は、友達なんか作ってはいけないのだろうと思った。

それなら、独りになろう。今まで通り。飽きるほどに慣れているのだから、今更どうってことはない。
今までのことは、忘れよう。あの眩しい笑顔も、寂しそうな横顔も、全部忘れてしまおう。

そうすればほら、また一からやり直しだ。

少しの間だけどヨロシクね。


どうせまた、"忘れる"から。