指先から衝撃波を放つ異能。
　奇抜な言動で機先を制し、的確な急所に叩き込む技は経験による所が大きい。
　本当は指先から出さなくてもいい。

　契機はわからない。
　しばらくは超人たる自覚もなかった程に長期間をかけて馴染み、平凡な田舎娘の身体は不老長寿の存在へと変わっていた。
　5年は老いを知らない事を喜んでいた。
　10年経てばその不気味さを噂された。
　20年を目前に庇っていてくれた人の悪行を暴いてしまい、焼かれ、炭と灰の山から這い出し。名前と住居を変えながら転々と過ごしていた。

　現在から20年程前のレネゲイド拡散の頃には方々伝手ができており、耳に入る研究成果の数々は絶望するに十分足るものであった。
　海溝と雪山のどちらで死ぬか迷っている時、街頭で胡乱な言説を声高に叫ぶ宇宙友愛協会の遊説員と出会う。
　人類がレネゲイドにより不可逆の変貌を遂げ秩序を失う未来より、レネゲイド星人の宇宙船を叩き特効薬を奪い取る話に心が踊ったのだ。

　以降、死に場所は宇宙と決め、一応は事情を知る身としてUGNに協会が潰されないギリギリを探りつつ、歪んだ万年筆で希望を書き連ねている。

　『楽園を目指す』と標榜し、レネゲイド事件を起こす教団の調査及び壊滅任務。UGNイリーガルとして参戦。
　教団の主《楽園への夜明け》と数度相まみえながら辿り着いた真実。楽園とは遺産の中に築かれた仮想空間であり、精神を抽出して住まわせる代わり、肉体のエネルギーを吸い尽くす物であった。

　《楽園への夜明け》に単身接触し、聞いた言葉は『私も遺産も止まれない。全ては間違いであった。殺してくれ』というもの。
　
　そりゃもうキレた。面白い夢を持つ男がいたと思ったら挫折していて、しかも情けない事を言うのだから。

　鏡の稼働を腕っぷしで半壊しにして止めて一段落。
　別口で『楽園』へのアクセスをし、完成させ。向こうでのほほんとやっている奴と信者に一泡吹かせてやる。というサイドクエストが人生に追加された。

　理想郷に行くため現世を諦めねばならない、などという理屈は普通すぎる。何一つ面白くないので無視してやると決めたのだ。

　とあるホテルの一室に宿泊した客が、相次いで行方不明となっているそうだ。
　宿主から代金の取り立てを依頼された萩荘たちが件の部屋を調査していると、異世界に飛ばされた。

　その空間を作り上げたFH研究員をなんやかんでボコり、幽閉されていた少年を保護。
　FH、UGNの両側から追われる存在であったが知り合いの支部に話をつけ、一応の一件落着とした。
　あとは彼がどういう人生を選ぶか次第である