裕福な家庭の次男。両親、兄、自分の四人家族。
兄との年が12歳差と離れており、そのせいもあってか家族からは、家のことは兄に任せるからと言われ続け、特に期待もされず自由にされている。
期待されて家に縛られる兄を見ているので、自由であることを有難いと思う反面、期待されることもない自分が家族にとってはいてもいなくても同じ、と感じている。表に出してはいないが、家族に対して居心地の悪さを覚えている。

表面上の家族仲はよく見える。いてもいなくても同じでも、面と向かっていらないと言われるのが怖くて、対外的にはまともな家族の一員と見てもらえるように振舞っている。

そうした振る舞いからか、性格は明るく前向き、ポジティブな言動が多い。トラブルが起きても、何とかなる、とあまり気にしない。
当たって砕けろの精神性だが、あまり自分自身に価値を見いだせていない為、実際にそれで当たって砕けてもいいくらいのつもりでいるが、自殺願望や自傷癖があるわけではない。
（主体性があるように見せかけてあまり主体性がないかもしれない）

何事に対しても何とかなる、と思うように至ったのは、何かと運が良かったからもある。
家族関係に恵まれているとは言い難いが、それ以外は順風満帆。友人には恵まれ、クラスメイトもいい人ばかり。
中学の時に修学旅行で乗ったバスが横転する事故に巻き込まれた時は座席の間に運よく挟まってかすり傷で済み、出かけた先の銀行で立てこもり事件が起きた時は偶々犯人から見えない位置にいたので見つかることもなく無事だった。
自分が何かをしたわけではないが、何もしなくてもうまくいく。自分から動いて悪くなったこともない。だから、何に対しても「何とかなる」と思っている。

自分が自分で、自らの居場所を見いだせていないことを自覚している。
その為、自分のように居場所を見つけられない人の助けになる方法を考えており、その一環でカウンセラーの知識を勉強している。
元々弾けていたが、カウンセラーの勉強中にヒーリングの一種で利用できると思い、ピアノは嗜んでいる。

幼い頃に入院していたことがある。
子どもたちで乗ったバスが事故に遭い、横転し、炎上し、爆発して、誰もが大怪我を負い、誰かは亡くなった。
その中で彼だけは、ほんの小さな掠り傷一つで助け出された。座席の隙間に挟まった小さな体は、熱風から彼を守った。

だが、病院に運ばれた先で彼は一ヵ月、目覚めなかった。ずっとただ静かに眠り続けて、そうしてある日、唐突に目覚めた。
両親と兄は大いに彼を心配したが、彼自身は首を傾げるばかりで、治ってしまった掠り傷に事故に遭ったことすら朧気だった。

ただ漠然と分かったのは、自分が助かったのは、自分の傍らに感じ取れる、家族の誰にも、病院の誰にも見えない『彼』がいたからなのだろうと。
そして、この先も『彼』は自分を守るのだろうと、耳に聞こえる嗤い声に思った。

自分自身の運が良かったのか、それとも、彼がいたから運が良かったのか。
目覚めたから彼が感じられるようになったのか、それとも、彼が傍らに立ったから目覚めたのか。

それはどちらにも分からず、ただ、自身が彼の『素体』に選ばれたのだけは、理解している。

◆トレーラー
天才ピアニストの少年に届いた犯行予告
探偵事務所の扉は開き、事件は音もなく動き出す
非日常を排除する役目は負うのは誰よりも非日常な存在であり、
それ知る者はたったひとり孤独に立ち尽くすしかない
さあ、物語の幕を開けるのはいったい誰？

ダブルクロス the 3rd Edition
「Detective's Damned Day」
探偵――それは全てを解き明かす者

◆Nハンドアウト
PCには、以下の設定が付く。
PC①：探偵、あるいは探偵に準ずる役割を持つ
PC②：PC①の友人、あるいは助手である

NハンドアウトPC①
ワークス/カヴァー：指定なし/探偵
ロイス：春川遥　推奨感情：　庇護/隔意
キミは探偵だ。ある日、オーヴァードであるキミを頼って、探偵事務所に春川遥という少年とその父親が尋ねてきた。彼は天才ピアニストであり、いくつもの演奏会を抱えているらしい。そんな遥がキミに見せたのは、切り抜き文字で書かれた誘拐の脅迫状だった。