「こちらが、今回の事件の資料になります。写真からのように、○○駅のこの4ヶ所に爆弾が仕掛けられていました。犯人の声明が確かなら、あと2駅。××駅と△△駅にも同様に爆弾が仕掛けられるものと思われます。我々『R.E.D』としましては、コレを未然に防ぐべく、爆弾設置日常予測し、部隊を配置するのが的確かと考えています。」

「初めまして。警視庁生活安全局生活安全企画課・特殊防犯対策室の八弦なつです。私の所属部隊は『R.E.D』と呼ばれています。私たちの仕事は、あらゆる事件の“兆を摘むこと”。事件を未然に防ぐことこそが、最高の防犯というのを信念に活動しています。…堅い？そりゃ取材するからまずは自己紹介を、なんていわれたらこんな感じに…」

なつの容姿は細身で小柄。すとんとしたその体からは少年をも連想させる。
さらさらとしたボブを後ろでちょこんと２つ。ストレートのおさげにしている。だからうなじのあたりに出来るやわらかいカーブや、その童顔さから、やわらかな少女を思わせる。
性格はとてもまじめで、彼女の所属する部隊『R.E.D』の中で、なつはみんなのまとめ役。また部隊の中では頭脳派で、主に犯人や被害者との交渉の場に赴くことが多い。
総じて、彼女を見たものは、「理知的な優等生」といった印象を持つだろう。

　下記は、以前に彼女に取材を行った際の記事の抜粋である。女性警官でありながら弁護士資格も持つという異例なキャリアをもつ彼女に、前々から親交があったという零が取材をお願いしたところ、「オーヴァードのことを皆さんにより知っていただくために」と、快諾してくれたという。そんな彼女の素顔・経歴を見ていこう。　　月刊警察 第〇×号 見出し「今月の女性警官」　記者 H.N 零　より抜粋

　なつは生まれながらにして異様な才能を持っていた。爆発的な力、異常なまでの反応速度、常軌を逸した生存能力。それに加えてなつは、相手の弱点を即座に洗い、次の行動を予測して相対するのだ。それ故、異様な才に嫉妬し、憎み、なつが小柄だからと見くびり襲い掛かってきたゴロツキどもを、なつ自身がたった１回転する間に５人すべてを片付けて見せたという。そんな彼女を人々は『未来予知』と呼び、ウワサし、忌み嫌った。なつはこれを聞くと、「私のコレは決して“予知”なんてものではありません。あくまで“予測”の域を超えないのです…」と、いかにも優等生な回答をした…

　そんななつを”スカウト”したものがいる。なつの上官、神代（かみしろ）警視正だ。彼はなつを、彼が持つ直属の特殊部隊『R.E.D』に加え、その力を“巨悪を討つ”ために使ってほしいと願った。そしてその対価に、彼女の血の渇望を抑制するとも。なつにとってはこの上ない喜びだったが、もう一つ。なつと同じ能力をもつ“仲間”がいたのだ。なつは、いままで抱えていた孤独感を忘れ去ることが出来た。また、ともに任務を遂行していくうちに、自分がこの仲間たちの“委員長的存在”になっていることも自覚していた。しかしこの感覚は決して嫌なものではなかった…
　『R.E.D』の中でのなつの立ち位置は“法律家”。主に重要参考人や犯人との交渉が彼女の任務だ。そしてそれは、なつのもつ“未来予測”がとても役立つ分野でもあった。彼女の功績をあげたらきりがないだろう。東海リニア新幹線爆破テロの阻止、官房長官汚職事件での交渉、さらには、フランスでの日本人誘拐事件の交渉に至るまで。これでもほんの一部ではあるのだが…

「初めまして。警視庁特殊防犯対策二課の八弦なつと申します。本日はよろしくお願いします。」
「よろしくね。とりあえず1杯どう？」
「いや。遠慮しておきます。」
「まぁ、そう言わずに。ここはバーなのよ？」
「…それでは1杯だけ。」

話に花が咲き、脱線しながらも時は流れ…

「…どう？参考になることはあったかしら？」
「ええ、次から取り入れたいと思います。本日はありがとうございました。お代はこちらで？」
「今日はいいわよ。その代わり、今度あなたのお仲間さん連れていらっしゃいね」
「そうですか。ではお言葉に甘えて。失礼致します。」

　先の話題で出た日本人誘拐事件。この事件中で得たものが、情報で１つ、モノで１つあるという。情報は、その犯人がなつたちと同じ『オーヴァード』であること。なつの仲間が同類である以上、他にもいることは理解していたが、まさか敵対するとは考えてもみなかったという。得たモノは、なつがいつも右手人差し指に嵌めている『ルビーのリング』だ。なつの交渉能力のゆえなのか、あるいは同族の血がそうさせたのか、はたまた相手が全てを見透かしていたのか…なんにせよ相手が降伏し、なつに全面協力すると誓った際にその相手から渡されたものだ。なつ曰く「これは誓いであり、彼女の意思(意志)なんです。私はこの誓いを、意思を、背負ってこれから生きて行くのです」と。こんなことを言って、相手から受け取ったリングを嵌めるのは、『R.E.D』の中ではなつだけだろう。