ごくごく一般の家庭に暮らす、ごくごく一般の高校生──だと思い込んできた、ある人間を模して作りだされた人工の複製体。そのオリジナルは複製時にジャーム化してしまっており、既にこの世にはいない。

　彼のオリジナルは、彼が現在生活している家庭の一人息子だ。そのオリジナルが、ある時オーヴァードに覚醒したためにFHに研究対象として誘拐されてしまう。行われた実験は、複製体の作成。その結果としてオリジナルはジャームとなってしまい、FHエージェントに「処理」されてしまった。複製体である彼は、後にRBの英雄、新宮 京真に助け出され、周囲は誰も彼が複製体だと知らないまま、オリジナルになり替わって日常生活に戻っていった。

　彼が複製体であることで発生するはずであった齟齬は、オリジナルが幼かったことやオリジナルが誘拐されていたことによるショック症状として処理されたことで、記憶の欠落が起こりうることとして処理され、表出することがなかった。更に、彼が無意識にオーヴァードであること、ひいては複製体のRBであることを隠匿していた故に、殆ど誰も気が付くことが出来ず、彼自身もオーヴァードとしての力を一切知らずに生きてきた。

　自身が赤岸遥人のニセモノである。豪華客船アルゴノーツでの事件にて、RBの『同輩』であるN.N.sによりそれを思い出すことになる。それを受け入れ、その上で自分を育ててくれた両親に、せめて少しでも本来の日常を体験させてあげられるように、と、あくまで『一般人の赤岸遥人』として生きていくことを決めた。
　T市に帰還した後、自身がRBであることを認知したことにより、近くに住むあさひの置かれている状況の異常性と、彼女もまたRBであることに気付く。N.N.sから聞いて、彼女が『R.I.P.』によって生み出された、『同輩』を超えた『同類』であると知り、彼女を気にかけていた。後、異変に巻き込まれて覚醒したあさひを見て、それぞれの在り方の違いというものを実感する。そして、どうあるにせよ、自分達は自由にあり方を選択できなければならないのだ、と考え、それを『後輩』に助言として告げたのだ。

　人への願いはぶつかり合って、邪魔し合うから、願いはいつでも自己完結できるものでなければならない、と彼は言う。彼が願う両親の幸せは、赤岸家の普通の日常は、確かに彼自身の主観によるもので、レネゲイドビーイングだと露見することなく共に暮らす以上のことを行おうとしていない。だからこそ、不必要に誰かと敵対することを「面倒だ」と評するのだ。
　しかし、面倒だからと言って避けられないこともある。人付き合いは重要だと考えているから友達に頼まれれば手伝うし、何よりも自分のことを知っている可能性のある相手をそのまま放置することはできないからだ。嫌が応にも巻き込まれる事件に、報酬をもらえる立ち位置で居続けることを選択し、面倒ごとに如何にして価値を生み出すかを考えるようにしている。

命名:おまじな大饗宴

助けてくれた人→新宮 京真