凧をあげよう
常に携帯している日傘を仕込み銃に変える。
さよならを言うのはもう少し後。

愛しきキティ
瞬間的に思い出を手繰り、負けられない理由を思い返すことでリミッターを外す。
どうか私(アニィ)のために、大きな心の支えと慰めになってくださいね。

白銀のかかと
〈凧を上げよう〉と〈愛しきキティ〉を同時に展開し、瞬時に臨戦態勢を整える。
死地に赴く。死んで果てるためではなく、生きて帰るため。

いつの日か《サム・デイ》
一弾一弾の弾道を微調整し効果的な箇所へとたたき込む。
虹の向こうの空は青く、信じた夢は現実となる。

2歳年下の妹、可能子。地方のリンゴ農家である両親は忙しく、もっぱらアメリが妹の世話を焼いていた。

妹は絵本を読んでもらうのが好きだった。
アメリはたくさんの本を仕入れ、読み聞かせたり、創作したお話を語って聞かせたりもした。
見た目は童女のままのアメリが泣きながら帰れば、妹は肩をいからせていじめた相手を懲らしめた。

そんな日々が続き、妹が中学校に上がる頃、本家の人間がやってくる。
親が言うには彼女の行きたい中学校は本家の近くにあるらしい。
なら応援してあげなくちゃ。アメリは手を振り、毎日手紙を書いた。
帰りたいと泣く妹、端々に滲む違和感。ああきっと、二人は嘘をついたのね。
私が大人になったら、あなたを逃がしてあげられるのに。もう少し、もう少しだけ待ってて。

絵本作家になる夢があったがかなぐり捨てた。妹が泣いている。それ以上の理由があろうか。
必死になって勉強し、本家の運営する会社に潜り込む。素知らぬ顔をして登りつめ、秘書まで漕ぎつけて。
やっと今日、あなたに会えるはずだったのよ、可能子。

死んでいた。妹は、殺されていたのだ。
あの子はずっと被害者で、何一つ悪いことなどしていないというのに。
どうしてこんな酷いことをするの？私に何も守らせてくれないの？
傷ついてきた私は、あの子は、ただただ翻弄されるだけのか弱いものでしかないとでも言うの？
ふつふつと湧き上がる怒りに、別の衝動が入り交じった。オーヴァードとして覚醒した瞬間である。

執念で事件について調べあげ、自力でオーヴァードやUGNの存在に気づく。
仇の情報が手に入り、妹のような被害者を減らせるのなら、と任務をこなすうちに支部長まで登り詰めていた。
……正直器じゃないなあと思っている。