スポーツマンタイプの姉に、おっとり穏やかな妹、と見られていた双子。
実際には、区別されないことが苦しくて可愛いものが好きなのを隠し始めた姉と、特に隠さないまま自分らしさをとった妹。ありふれた思春期の双子の姉妹。仲は良かった。

それがちぎれて、ばらばらになって、繋ぎ合わされた“わたし”。

空ろになった胸に強烈に「アタシのほうがさきに好きになったのに」と泣いている誰かの感情が焼き付いている。
それが本当に今の“わたし”のものなのか、わたしにはわからないけれど。

わたしが、アタシや私みたいな振る舞いをしては、きっと紫苑くんを混乱させるから。
どちらにも似ないよう、精一杯背伸びしてお姉さんぶっている。
13歳のまま成長しない少女の心を必死に押し込めて、バラバラの記憶を必死に継ぎ接いで、紫苑くんが重ねてしまわないよう、必要以上に苦しくならないよう、どちらでもない三人目として“それらしい”わたしでいよう。

だってほら、まぁ、大好きな人には頼られたいし、大好きな人の役には立ちたいよね。
それが誰の気持ちなのか、今はまだわからないってことでさ。

アジサイ科(ユキノシタ科)・ウツギ属
八重咲で、花弁の外側が淡い紅紫色になる。白から淡紅のグラデがかわいらしい花。

枝の中身が空洞で「空ろな木」という意味から空木（うつぎ）。
花言葉は「古風」、「風情」、「秘密」

ミツバウツギ科ミツバウツギ属
名はウツギであるが、実際は空木ではない。
小さな白い花。蕾が多いわりに花は全部咲くわけではなく閉鎖花も多い。
花言葉は「謙虚」