これまでの戦いで練度も4となり、強まったブラッドパスによって影響されたのか、戦闘になるとかなり好戦的な言動を行うようになった。3度の死線を超えた経験が、戦闘で自身が傷つくことを鈍麻にさせている節さえある。必要なら、レベッカのように徒手空拳で戦うことも厭わない。...まぁ、彼女のように腕の一振りで業血鬼の【息】を刈り取り、雑兵を一掃するなんて芸当は不可能だが。

かつての2度の戦いで育まれた絆を3度目に失いかけた経験は、柿谷の強固に見えるようで脆い【金】の呪いをあっさりと打ち払ってしまった。相変わらず他人には「金が大事」と言い張れるものの、娘にはもうそんなことは言えない。「お前と一緒に稼ぐのが大事」と称して、よりレベッカを気遣うようになった。まるで不器用な父親のように。

いまだに彼女が怪物に見えるが、「金のため」という上辺を打ち払われたせいで娘としての親愛も隠せなくなっており、板挟みに陥っている。出来ることならその頭を撫でてやりたいのに、出来ない。怖い、怖い自分が、情けないほどに娘が大事なのに。

世界一の金持ちになる。娘のために。

「ハッハハハハ！お前はもう死んでんだよ業血鬼！チェックメイトだ！」
「レベッカ、よくやった...ああ、お父さんの夢に、また近づけたよ。」

レベッカのカチューシャが壊れた。

いつの間に砕けていたのであろうそれはもはやどうすることもできないほどに粉々になっていて、それを必死にかき集める娘。
俺は無神経にも、ちょうどいいなんて、考えていたのかもしれない。
プレゼントにカチューシャを選んだのは失敗だったかもしれない。そんなことも頭によぎる。
彼女は…彼女のカチューシャは、彼女の家族からもらった、「代わりなんてないもの」だった。

そして俺は、そのことを何も知らなかった。
レベッカを、ただ家族の欲しい怪物だと思い込んでやってきていたんだ。
あいつには、亡くした家族を思う情も、思い出の品を喪ったときに嘆き悲しむ心もあるんだ。

あの日から、何も話はできていない。
まずいなと思いながらも、何もできない自分に嫌気がさす。
このままは嫌だ。でも、業血鬼事件は否が応にでもやってくる。生き残らなきゃならない。
…鍛え直す必要がある。アホみたいなバニー事件での失態、クリスマスの事件で、隣で見たあいつらの連携。
俺には加々知のようにレベッカを助けることはできない。ならせめて、隣に立ち続ける力を。

武器類、応急処置キット、血液アンプル4本、包装されたカチューシャ