水無月流の特徴として皆月流から派生した様々な流派の技を取り入れているのがあげられる。彼もその例に漏れず、正眼、八相、霞の3つの構えに加え、座頭市じみた抜刀術までもを柔軟に切り替えることで幅広い状況に対応できる。とはいえ好みや得手不得手はあるようで、正眼の防御的な構えを好み、八相の攻撃的な構えは苦手としている。

水無月家自体は皆月流からの派生と共に生まれた家であり、その流派の特性上ほとんど派生や分家は生まれずに今日まで血を継いできた。派生の開祖たる水無月　無満（ミチズと読む）の意向、「水無月、斬るための術にあらず。満つるための術にあり。」を現代に至るまで守っており、水無月家はこれまでその術を門外不出とし、血統に連綿と伝えるのみとし、吸血鬼との戦いでは完全に不干渉を貫くほどの徹底ぶりであった。業血鬼の出現までは。

特区if。吸血鬼と人間が共存する世界を見てきた。
確かにそれは事実だった。吸血鬼と人間が、互いの弱点や種の違いという垣根を越えて同じ箱庭で共存している世界。
でもそれは、決して理想郷などではなかった。

人々は確かに吸血鬼と共存していたけれど、それでも、人の世の愚かな面というものは一切消えないのだ。
そこに吸血鬼が混じるだけで、人の世は変わらない。
僕はただ、幼稚に理想郷を求めていただけだったのかもしれない。

相方の母親は、問題のある人物だったといえる。彼女は家族ではなく夫を愛していた。
その愛ゆえに業血鬼となり果てるほどに。
だから、僕たちで殺した。

彼女は一人で決着をつけたがっていたけど、僕には命を捨てるだけにしか思えなかった。
それでも自分の命をどうとも思っていないような物言いばかりで、なぜかとてつもなく怒ってしまった。
彼女が命を捨てるのを、本当に疎ましく思ったんだ。
僕は彼女の意思を無視して、親殺しに加担した。
でもこれは僕の罪だ。彼女には背負わさせない。