容姿・経歴・その他メモ

・街で育つ／裏社会
・的当てが得意
・センスは磨かれた（ターゲッティング）
・7歳の時は奴隷であった
・7歳以降、自分or家族が「奈落（シャロウアビス）」へ
・他に生き方がなくて

・叶えたい事　　　　　　　　　：なし
・迷宮「静謐の王宮」へ行く理由：好奇心

・ギルド「女神の微笑み亭」所属



　13歳、両性のグラスランナー。一人称は「ボク」。性自認が定まっていない為、呼び捨てで「フレア」と呼ばれる事を好む。
　人の名前や地名など、固有名詞を覚える事が苦手。

　孤児院で育つ。院長は「顔を隠した者が預けていった」と語っているが、それがどこまで本当かは分からない。この孤児院は裏社会と密接に結び付いており、様々な後ろ暗い事に手を染めていた。だから、適当な場所から攫われた可能性もあるだろう。その頃の彼の名前は「GY」。髪と瞳の色から取られたものであり、その孤児院の者は皆同じ様に呼ばれていた。彼は当時から自身の置かれた状況を悲観せず、「面白ければ良い」というくらいで生きていた為、院の子供で唯一明るい子だった。院内の雑用、盗みを初めとした軽犯罪、的当てを利用した暗殺の訓練。どれも彼にとっては、人生のスパイスに過ぎなかった。

　暫くして、奴隷として貴族の屋敷に出荷される事となる。当たり前の様に受け入れ、屋敷での仕事に従事し始めた。両性であるという珍しさから引き取られたものと思い込み、初日は性接待の準備に勤しんだが、彼を呼び出した屋敷の主人は、ただ優しく彼に語り掛けた。
「名前は？」　揺らめく炎。その儚く柔軟な在り方が好きだったから、「フレア」と名乗った。
「歳は？」　多分、7歳。
「両性と言っていたね。不便はないかい？」　寧ろ自由で快適だ。性別に縛られないって素晴らしい。
「孤児院の様子はどうだった？」　思い出せる限りを答える。
　主人の顔色が悪くなった。痛みを堪える様な表情でフレアを抱き締めた。灼けそうに温かかった。
「ここでは、使用人としての立場が保障される。邸内の雑用のいくらかと、私の子供の遊び相手を務めてくれないかな」
　否やはなかった。

　後で聞いた話だが、主人は一帯の取り締まりを行う立場にあるらしい。フレアを引き取ったのも、あの孤児院の暗部を語る証人として、という事だと。何故自分だったのか、と聞くと、「一番聡明で快活そうだったからね」と返された。
　屋敷での生活は快適だった。朝起きて、朝食の用意の手伝い。終わったら洗濯場を手伝う。これでおおよその仕事は終わり。主人は子供の遊び相手を、と言っていたものの、その子供は既に12歳の少年だった。寧ろフレアの方が遊んでもらっている立場。特技の的当てを披露すると、少年はとても喜んで、歌を歌ってくれた。澄み切った声の美しさに聞き惚れていると、「一緒に歌おう」と誘ってくれた。それから、彼と一緒に的当てと歌の練習をする事がフレアの日課になった。
　いつも忙しそうな主人だったが、時に休みが取れると、妻と子供、それから使用人全員を連れて外出した。ピクニックであったり、他の土地の視察を兼ねた旅行であったり。使用人は皆遠慮したが、いつも「全員連れて行っても20人にもならないから大丈夫」と言って聞かなかった。出かける為に様々な準備をするのはフレアの仕事だった。今思えば、外の世界を教えてくれていたのだろう。時には旅程を決めさせてもらえる事もあった。

　屋敷に来て3年が経った。
　偶然いつもより早く起きてしまった為、邸内の中庭を散歩していると、北の空に美しいオーロラが輝いた。酷く心を惹かれ、屋敷の柵を越えて北へと歩いていく。すると、ごく小さな黒い球体を見付けた。手を伸ばす。

　目を覚ます。見知らぬ土地の、貧民向け施療院。日付を聞くと、自分の認識との間に2ヶ月程の齟齬があった。
　医者と話す。どうやら町の付近で倒れていたらしい。様々な話をして、恐らく奈落に落ちていたのではないか、と言われた。記憶は殆どなかった。覚えているのは、足元の地面が急に消えるような感覚と、真っ黒な空間。そして、強烈な血の匂い。

　さて、ずっと施療院に厄介になる訳にもいかない。いつもの様に「こんな事もあるよね」と気持ちを切り替える、……。
　胸に引っ掛かるものがあった。屋敷での生活、優しい人々。
　ちくり、と。何かが刺さった様な。
　だが、それを寂しさや切なさであると認識出来るだけの見識は、フレアにはなかった。分からないものは仕方ない。捨て置いて、一先ずはこれからの生活について考える。自分の得意な事と現在の状況を照らし合わせ、「冒険者」になった。色々な所で様々な依頼を受けて。そんな生活、自由で最高じゃないか。

　それからは、根無し草の様に様々な土地やパーティを渡り歩いた。この生活は性に合っている。「他の生き方の可能性」について聞かれたら何も答えられない、そんな事実に気付かないくらいには楽しい日々だ。
　さて、噂によると、グランゼールという街に面白いものがあるらしい。「静謐の王宮」と呼ばれる魔剣の迷宮。丁度よく、冒険者を募るギルドがあるらしい。行ってみよう。

　自ら押さえつける様にして消された、その身に宿る意志。
　根無し草の流浪者（ワンダラー）。
　揺らめく炎が消える時はいつなのかを、誰も知らない。

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