孤独。それは人にとって最も恐れていることの内の一つだろう。
しかし彼女にとってはそれが当たり前。
自身が経験したことから、孤独が"苦痛"から"安心"に変わっており、
むしろ誰かと一緒にいる方が"苦痛"に感じているだろう。

とある縁でルミエールという村に住むことになった彼女だが、家の外に出ることは滅多にない。
家の中で独りでいることが、彼女にとって最も安心することだから──

シトリーはルミエール出身ではない。が、彼女自身もどこで生まれ、誰が両親なのかを知らない。
彼女の故郷は蛮族に滅ばされており、シトリーは母親に守られ、安全な場所に隠され、
シトリーは滅ぼされた村で唯一生き残ることになった。

シトリーは物心がついた時には孤児院で保護されていた。
当時赤ん坊だった彼女を通りすがりの冒険者が保護し、孤児院に預けたらしい。
この孤児院には何人か同じ年齢ぐらいの子供たちがいるが、シトリーにとっては居心地のいい場所ではなかった。
子供たちに話しかけても無視され、食事は床に出される。
挙句の果てには彼女の持ち物を捨てられたりしていた。
こんな境遇であれば、彼女が周りの人間と距離を取り、自分から孤独になることは自然なことだっただろう──

シトリーは孤児院を出ることにした。
孤児院ではいじめられていたが、ここがおかしいだけで他の場所では受け入れてくれる場所があるのかもしれない。そんな場所を探してシトリーは歩き続けた。
道中、商人を見つけたシトリーは声をかけてみることにした。
しかし、その承認はシトリーが期待していた言葉を返してくれなかった。
その後のことはあまり覚えていなかった。どうやら、彼女は商人の手によってリカントの少女を好んでいる人間相手の商品となったらしい。
だが、実際にシトリーが売られることはなかった。冒険者「ナーシャ」の手によって商人は殺されたのだ。
ナーシャに保護されたシトリーはそのままルミエールで暮らすことになるのだが、彼女の心はこの時点で既に壊れていたのかもしれない──

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