容姿・経歴・その他メモ

風化した聖印
色褪せ、ひび割れ、欠けた、何かの神の聖印と思われる物体。本人は頑なに、その由来を語ることはない。
色褪せ、ひび割れ、欠けた、"騎士神"ザイアの聖印。彼女の折れた信念、その残骸。

ラクシア出身。日々適当な依頼で糊口をしのぎ、生きて行ければいい、くらいの厭世的な生き方。それでも、たまに思い出すのだ。自分にも嘗ては願いがあったこと。そして破れて死んだことを。

遡ること魔動機文明時代の黎明期。大量殺人の罪で火炙りになった人間の少女がいたという。

　その少女は村娘であり、偶然神官としての力を得て、村にいた先達の教えを受けて神官戦士として育ち、そして村を出た。
『飢えや病に苦しむ人々を助けたい』
初めは、そんな気持ちであった筈だ。そのために、地方病蔓延るある都市に向かったことも。それ故にあった働き口を求めてやってきた者達と冒険者隊(パーティ)を組んだことも、よく覚えている。
　神の怒りに触れた土地。麻薬じみた“神の血”が蔓延り、接種し続ければ最終的に全身毛深くなった“獣”になる。人々は疑心暗鬼になり、毎晩“獣狩り”をする。拡大を食い止める手の尽くが失敗に終わり、獣と怪物だらけになったその街の凄惨さは想像を超えるものだった。
　それらと戦う日々の中で、仲間達は一人、また一人と死んでいった。気がつけば、自分だけになっていた。それだけではなく、この街の真相も知った少女は、決意したのだ。『最早、患部を切除するより他にない』と。それができるだけの力も、戦いの中で手に入れていた。
　故に、全てをを切除した。街の住民を獣や怪物ごと切除した。元凶たる新興宗教も切除した。単なる被害者だったのかもしれない神も切除した。──全てを切除した後に残ったのは、血濡れた我が身だけであった。
　所業が知れれば、追われる側になった。追手も何度も殺した。しかし、最初の願いを打ち捨てて、民衆に手をかけたからだろうか。騎士神の加護を喪い、そしてそれが原因で斃れ、捕まり、処刑されることになったのである。

　そして、今生。罰とでもいうのか、人間ではなく、ナイトメアとして母を殺しながら生まれた。父親に即座に殺されたり、捨てられたりしなかったのは幸運だったのだろうか。自力で動ける年齢になれば、前世の知識である程度やっていけた。神の加護はとんと得られず、代わりに覚えられたのは召異術。これも罰だとでも言うのか、なんという皮肉だろう。ただ、前世に近い戦闘スタイルは、不思議とよく馴染んだ。誰からも助けられなくても、一人でも戦える。冒険者としての活動には困らなかった。

　それでも、困っている者がいれば、ぶつくさ言いつつも手を貸す。上辺だけの感謝だとわかっていても、物乞いに金を撒くこともある。生まれ持った性質は。腐り、折れても、その根っこは変わらないのかもしれない。

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