容姿・経歴・その他メモ

【経歴表】
■旅をしたことがない
■特定の異種族を好んでいる(いた)＝ナイトメア
■身体に傷跡がある
【冒険に出た理由】
■故郷を滅ぼされたので

小さな頃から、フェンリルはコロロポッカの森の中で野生の狼のように生きてきた。人族でありながら野生の血に従い、自分より弱き獣を食らって生きる。
反面、強い獣に食われないように、他の仲間と違って身体を鍛えて強くなった。その時にたくさんの傷がついて、たくさんの痛みを受けた。その傷や痛みの分だけ、強くなれた。

だからフェンリルは、痛めつけられることを好む。
痛めつけられた分だけ、強くなれるから。
道で拾ったロープで自縛すれば、締め付けられるほどに筋肉が膨れ上がった。
フェンリルは常に身体に縄を食い込ませるようになった。

そんなある日、コロロポッカの森で1人のナイトメアの男が倒れているのを見つけた。ナイトメアは全裸だった。そして、美しく逞しい肉体を持っていた。その痣までもが、まるで芸術品の一部のようだった。
何よりもその角。固く鋭い角に指先で触れれば、肉にくい込んで淡い傷みを覚える。指の腹で角先をなぞれば、引っかかれたような甘痒い感覚に震えた。

悦に入っていると、ナイトメアが目を覚ます。どうやらコロロポッカに住む妖精に悪戯をされて、気を失っていたらしい。
男は肉体派の戦士らしく、自分の裸体を誇示してきた。フェンリルも負けじと引き締まった肉体を見せ返す。2人はあっという間に意気投合して、笑いあった。
名を、ジェネスと言った。

それからと言うもの、フェンリルとジェネスはコロロポッカの森の中で切磋琢磨しながら身体を鍛え合った。お互いに限界を越えて鍛え抜けるよう声を掛け合い、身体を叩きあって発破を掛け合った。
ジェネスは自らの角を誇りに思っているようで、フェンリルが角を羨むと大いに喜んだ。そしてフェンリルが望む通りに、角を堪能させてくれた。
たった数日の間に。フェンリルとジェネスは濃厚な関係を築きあった。

やがてジェネスが妖精達から服を取り返すと。帰らねばならぬと言って、フェンリルに別れを告げた。
どこへ帰るのかと問えば、ジェネスはここから遥か西の、角付きが受け入れられている国だと。自分はそこの冒険者なのだと、最後に教えてくれた。

フェンリルはジェネスと別れると、冒険者という存在に憧れを持つようになった。思い立ったが吉日、フェンリルはすぐに森を出て人里を目指す。
途中で変質者として悲鳴をあげられ、そういえばジェネスは服を着て出ていったことを思い出す。出会ったのが幸運にも商人であったため、森の中で集めた魔力の込められた貴重な宝石や木の実などと交換して服を手に入れた。
縄は外さなかった。

森を出て南下したところで、掃き溜めの魔動死骸区にたどり着く。そしてすぐに、倒れている角付きの少年を見つけた。
せっかく冒険者になるのなら、好きな者と一緒がいい。フェンリルは少年を拾うことにした。

近付き抱き上げると、少年は目を覚ます。虚ろな目をしてぼんやりしていたので、フェンリルはまず己の欲求を満たすことにした。

その角で俺を突いてくれ、と。

少年は、とても呆れたように溜息を吐いて。
額の角で鎖骨の間を突き刺してきた。
エグいほどの呼吸困難による苦痛に悶絶する。
フェンリルは少年のことがとても気に入った。
共に冒険者になってくれと、迷いなく声をかけた。

フェンリルにとっては不思議でもなんでもないのだが。
普通なら断られるであろうこの提案に、少年は迷うことなく頷いた。
ただこの掃き溜めの魔動死骸区ではやって行けないと告げられ、ならばとコロロポッカの中にある人族の街へ赴くことにした。

少年はシュメルという名前らしい。額の角の硬度がジェネス並だ。
何かを願えば、とても嫌そうにしながらも決して断らない。
冒険者になるにあたって最良のパートナーを得たと、フェンリルは満足そうにユーシズ魔動公国を目指すのだった。

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