デジール・リーズカルテット 過去
プレイヤー:黒猫
【油断は死を招く】
- 種族
- 年齢
- 性別
- 種族特徴
- []
- 生まれ
- 信仰
- ランク
- ―
- 穢れ
- 0
- 技
- 体
- 心
- A
- B
- C
- D
- E
- F
- 成長
- 0
- 成長
- 0
- 成長
- 0
- 成長
- 0
- 成長
- 0
- 成長
- 0
- 器用度
- 0
- 敏捷度
- 0
- 筋力
- 0
- 生命力
- 0
- 知力
- 0
- 精神力
- 0
- 増強
- 増強
- 増強
- 増強
- 増強
- 増強
- 器用度
- 0
- 敏捷度
- 0
- 筋力
- 0
- 生命力
- 0
- 知力
- 0
- 精神力
- 0
- 生命抵抗力
- 0
- 精神抵抗力
- 0
- HP
- 0
- MP
- なし
- 冒険者レベル
経験点
- 使用
- 0
- 残り
- 3,000
- 総計
- 3,000
技能
戦闘特技
練技/呪歌/騎芸/賦術
- なし
判定パッケージ
なし
- 魔物知識
- 0
- 先制力
- 0
- 制限移動
- 0 m
- 移動力
- 0 m
- 全力移動
- 0 m
言語
会話 | 読文 |
---|
技能・特技 | 必筋 上限 | 回避力 | 防護点 |
---|---|---|---|
技能なし | ― | 0 | ― |
- 所持金
- 1,200 G
- 預金/借金
- ―
所持品
- 名誉点
- 0
- ランク
- ―
名誉アイテム
点数 |
---|
容姿・経歴・その他メモ
※容姿
黒髪・翡翠色の瞳
余り笑わない
服装は動きやすさ重視
※経歴
A—6—5 血縁者と死別した
C—1—3 目標としていた人が居た
C—4—3 負けず嫌いな節がある
※冒険に出た理由
2—6最強になる為に
アルヴェスタから借金:G
アージェントから借金:G
※家族構成
母 リーラ・アルスフォート (元冒険者) 父 オルガ・アルスフォート (元冒険者)
妹 ディアナ・アルスフォート(僕の一つ下) ティアナ・アルスフォート(一つ下)
僕 ラルガ・アルスフォート (改名後 デジール)
‣デジール・リーズカルテット(25歳)
性別:男性
種族:人間
容姿:黒髪のショートに翡翠色の瞳
性格:普段は冷静だが蛮族関連や人助け関連だと冷静さを欠いてしまう
概要:彼は本物の「天才」を目の当たりしており、自身は「凡人」であると自負している
:基本に忠実で、戦闘スタイルはバーサクタンク(師匠の戦闘スタイルの一部しか真似できなかった)
:自身の力を過信しない
※ネームド紹介
‣リニヤ・アルケミスト・・・20歳?(旧暦)身長:168㎝
性別:女性
容姿:エメラルドグリーンのショートヘヤーに朱色の瞳
性格:皆のお姉さんの様な性格
概要:ラルガ(デジール)の初恋の相手 お姉さんみたいな人
‣アイシャ・リーズカルテット・・・250歳(旧暦)身長:154㎝
性別:女性
種族:ミスト・エルフ
容姿:シルバーのロングに碧色の瞳、エルフ特有の耳
性格:天真爛漫
概要:エルフの中でも希少種な存在な他、薬の類や回復魔法が完全に効かない事、魔法の類が一切使えない特異体質
:その天与呪縛により、ありとあらゆる状態異常の完全無効、呪いの完全耐性、絶大な身体能力を獲得
:身の丈に合わない大剣〈ガイスター〉を軽々と振り回す
:元々は深い森に引き籠っていたが、助けた人族と共に過ごすにつれて好きになった為、一緒に外に出た
:雇われ傭兵として各地を放浪している
:基本的には何でも器用にできる
:戦闘スタイルはオールマイティー(魔法は使えない)
:二つ名【霞月】
‣ジーク・アルスフォート・・・45歳(旧暦)身長:185㎝
性別:男性
種族:人間
容姿:黒髪のショートに翡翠色の瞳
性格:好奇心旺盛、自由奔放
概要:アルスフォート家の初代パレスの弟
:アルスフォート家の領主の座を、面倒と言う理由で蹴った
:雇われ傭兵の身分を利用し、自由奔放に世界を放浪していた
:剣技は後の歴代最強と謳われる
:元々は冒険者
:二つ名【月夜】
‣パレス・アルスフォート・・・95歳(旧暦)身長:162㎝
性別:女性
種族:人間
容姿:黒髪のセミロングに蒼と翡翠の瞳
性格:温厚、腹黒
概要:アルスフォート家の初代当主
:本来であれば、弟であるジークが当主になる予定だったが、自由奔放な彼にここは狭すぎると感じ、私が当主の座に就いた
:剣技では弟に負けるが、魔術と頭脳で圧倒していた
:元々は冒険者
:二つ名【雨黒】
‣バーパス・オルケスタ・・・年齢不明 身長:190㎝(人間形態)
性別:男性
種族:ドレイクバロン
容姿:白髪に紅い瞳、白銀色の被膜の翼、白と紅が基調した角(人間形態)
:白銀と紅を基調した鱗、翼、角(竜形態)
性格:驕ることなく冷静
概要:貴族階級に固執はしていない
:貴族階級ではバロン(男爵)となっているが本来はバイカウント(子爵)と同等かそれ以上
:先天性色素欠乏症(アルビノ)を発症しているが故、同族から腫物扱いされている
:黒を基調にした質素ではあるが気品漂う服装
‣ミーシャ・クロウス・ベール・・・35歳(旧暦) 身長:135㎝
性別:女性
種族:レプラカーン
容姿:桃色髪のロングに黄金色の瞳 毛の生えた大きな耳
性格:臆病
概要:生まれつき盲目
:盲目であるが視覚・痛覚以外の五感が優れている
:薬師と錬金術師をしており、孤児院や恵まれない人達に安く提供している
‣オーグ・リクレクト・ホーン・・・55歳(旧暦) 身長:175㎝
性格:男性
種族:エルフ
容姿:金髪のセミロングに藍色の瞳
性格:八方美人
概要:蛮族を嫌っている
:蛮族を撲滅する為に【天晴の声】と言う組織を立ち上げた
:【天晴の声】は蛮族撲滅を主にしており、蛮族や蛮族に加担している人族を異端者と認定する
:『異端者には死を』を掲げている
※蛮族紹介
レッサーオーガ
知能 :人間並み 知覚:五感(暗視) 反応:敵対的
言語 :汎用蛮族語・魔法文明語・共通交易語・ドレイク語
生息地:森・洞窟・砦・山
解説
・人肉を好み、身長2mほどの筋骨隆々とした蛮族。 それでもオーガ族の中では小柄で、 魔法を使う。
・レッサーオーガの最大の特徴は人の姿を取れること。
・積極的に人の姿を取るものは人間の文化に対して造詣が深い場合が多く、そのせいか人間に似た性格や考え方を持つものもいる。
・生来で持つ固定の一つの人族の姿に化けられるが、人族の心臓を喰らえば、その個体の姿も取れるようになる。
・心臓を喰らえば喰らうだけ化けられる姿は増えていく。
ドレイクバロン(人間形態/竜形態)
知能 :高い 知覚:五感(暗視) 反応:敵対的
言語 :交易共通語、汎用版俗語
生息地:様々
解説
・ドレイクの中でも力と知恵に優れた貴族階級にあるもの
・人間形態では、通常のドレイクと大きくは変わらない。強いて、美しさにより磨きがかかり、豪奢な衣装に身を包んでいる
・竜形態は、通常のドレイクより一回り大きく、鱗は銅色に輝く
・ドレイクバロンが率いる蛮族の数は100を超え、人族にとっては存在するだけで脅威だ
※武器
ロングアックス
ファストスパイク
テンペスト
バスターソード
‣特殊枠
ガイスター(SSランク)
禍々しい文様を施された、真っ黒な刀身の大剣 全長は2m程度
刀身からは常に瘴気を放っている
※道具
トリートポーション
【過去】世界は美しいと同時に……『残酷』である……
僕の名前は、ラルガ・アルスフォート。父と母、妹2人の5人家族だ。アルスフォート家は初代当主パレス・アルスフォートが冒険者の貢献により、平民から名誉貴族へと成り上がった一族である。しかし、平民からの成り上がりであるが故、そこまでの金と権力は持ち合わせいない。それに、現当主オルガ・アルスフォートが同じ領主仲間の友人に領地を託し、自分たちは隠居の為にダグニア地方の辺境に位置する、名も無き村に家を移住を決意。理由は、子供が出来た事と、安全に暮らしたいためらしい。結果、貴族と言うものは飾りにしかならなくなってしまったのだ。でも、自分は幸せである。村の人たちはとても穏やかで、優しく、心地よかった。確かに貴族にはなったが、元々は平民だったんだ、それ以上求めるのは酷と言うものだろう。
それに、僕には好きな人が居た。名前はリニヤ・アルケミストと言う女性だ。謎多き人ではあるが、皆に好かれ、気兼ねなく話せるお姉さんみたいな存在である。僕はその子に対して一目惚れと言う感情を持つようになるが片思いではある。それもまた一興と考えているからこそ、ここで一生過ごす事に何の躊躇いも疑いも無いし、ずっと暮らしていけると、思っていたのに………どうして…どうして、こうなったんだ…………世界と言うものはこれほど【残酷】なものなのか……。
僕がまだ、6歳になる頃合いの話だ。その時の僕は、元冒険者であった父と母に憧れたいた。父は勇敢たる剣士で常に最前線を駆けてきた。母も父と同様に突き進む聡明な魔術師だった。だが、自分達の子供が生まれると同時に冒険者の引退を決意したらしい。僕や妹達は両親の武勇伝を聞かされ、父と母の様な立派な冒険者になりたいと夢を持つようになった。強くなりたいと決意した……が、妹2人に……ディアナが剣士の才能、ティアナには魔術師の才能があった。
二人に才能があった事には嬉しい…が、僕にはどちらの【才能】も無かった。
正直辛い現実を突き付けられた様な気分だが、妹達には嫉妬はしなかった。むしろ二人の成長が日に日に開花していく事に誇らしさを覚えたくらいだ。自分も負けてはいられない為、両親や妹達に黙って、夜な夜な村外れの森に出向き、鍛錬を欠かせなかった。そこから約2年(当時8歳)の歳月が経ち、僕はいつも通りに妹達と鍛錬に励み、リニアお姉さんとの一時を過ごし、夜は村外れの森での鍛錬をし、この一日を終わらせる……つもりだった。
今日は張り切り過ぎたのか、いつもより遅い時間に帰路に着く頃、何やら村の方がやけに騒がしいし、全体的に明るい。もう、0時を過ぎているにも拘らずにだ。僕は言葉では表せない胸騒ぎを感じ、走るペースを上げる。そして……森を抜けた先に見えた光景は……悲惨であった。この世の地獄を模しているかの如く………燃え盛る建物に地面を染めあげる朱い血、無残にも殺された人に焦げて爛れた人、泣き叫び苦悶に歪む声に誰かの嗤い声。僕は駆けた……不安と焦燥が込み上げる、家族の下に早く……速く……村全体から少し離れた自家を視界に捉えた。良かった…幸いにも燃えていない……慣性に従い、思いっきり扉を蹴破る。
辺りは気味の悪い位、静かだ。照明は消されており、暗闇…だが何かいる。少し進んだ所で、ある事に気が付く。噎せ返る程に劈く異臭に……鉄錆と生臭さに加え、獣臭が…………月明かりが窓を覗かせた瞬間、それが何かを貪っていた………血肉だ……血を滴られ、無我夢中で頬張っている。
月明かりが完全に照らさせた時、僕は絶望と同時に理解を拒んだ。何故なら……血肉の正体は…自分の家族…そのものなのだと……そして何より、家族らを貪り喰う「それ」が見知っている奴なのだから………。
ラルガ 「……どうして……どうして君…がここに……っ何で、家族を」
今にも掠れてしまうような声で「それ」に言葉を投げ掛ける。ピタッと血肉を喰らう手が止まり、こちらに振り向く。朱く染まるエメラルドグリーンの髪に血の様な朱い瞳を持ち、手や服、口元も赤黒く染まった彼女は口角を上げ…嗤っていた。そう、「リニヤ・アルケミスト」の姿があった。
リニヤ 「どうしてって?……食事は大事でしょう?お腹が空いたら喰べる……当たり前でしょう」
彼女は当然と言わんばかりの反応を示した。僕が呆気に囚われる事を後目に、彼女は言葉を紡ぐ。
リニヤ 「あぁ~あ……折角、この村に交渉を持ち掛けて、誓約を作ったってのに、お前らの所為で台無しになったじゃあないの」
リニヤ 「私がどれだけ苦労したか…貴方には解らないでしょうね。オルガやリーラとか言う冒険者風情が、我々の存在に気が付き、密かに援軍を引き入れようとしなければ、こんな事にはならなかったのよ」
ラルガ 「なっ……何を言って?誓約?存在?」
頭がこんがらがって訳が分からない。一体、何の話をしているんだ………
リニヤ 「あぁ…そう、じゃあ教えてあげる。お前らが一体何をしでかしたかをねぇ」
彼女の説明はこうだ……
この村は30年前に不運にも、レッサーオーガによって襲撃を受けてしまった。本来であれば、蹂躙となるはずだったが、知能の高いレッサーオーガの提案で、食料を提供すれば、ここは襲わないと言う誓約を村長と結んだとの事。しかし、条件として、食料の供給が止まったり、反逆の意思があると判断されれば、蹂躙すると言う。だから今回の場合は、元冒険者であるオルガ、リーラが我々の存在に気が付き、援軍を引き入れる算段をしてしまった結果、村人全員を蹂躙したのである。
リニヤ 「分かったかしら。お前たちが余計な事をした所為で………ここまで築き上げたものが!……全部!…全部無駄になったのよ!」
彼女は怒り狂い、家族の遺体を何度も…何度も踏みつける。僕は全身の力が抜けたかのように座り込み、ただそれを見ているしか出来なかった。家族を失い、初恋の相手には裏切りられ、村の住人は炎と共に蹂躙され……何も残ってはいない……生きる希望なんてもう……どこにもない。
リニヤ 「あら?……生きる事を諦めたつもり?はぁ、普通なら懇願し、泣き叫びながら命乞いが定番じゃあないの。まぁ、殺す事には変わりはないけどね……でも、簡単には殺しはしない。どうやら、貴方だけしか生存者は居ない訳だし……じわじわと殺してあげる」
彼女は……いや、レッサーオーガは自分を建物外に引きずり出し、その言葉通りにわざと致命傷を避け、血肉を削っていく。殴打や蹴られる度に、骨が軋み、砕ける………痛い………爪で皮膚や肉が裂かれる……痛い……痛い………このまま…僕は、確実に死ぬだろう。目を閉じて……意識を、感覚を隔離させる……そう…これは夢だ……とても…とても長い悪夢だ。もう少しでこの夢も覚める……そうしたら、また……みんなと楽しく………………痛みが途絶えると同時に叫び声と咆哮が耳を劈く。
僕は驚き、意識や感覚を元に戻し、目を見開いた。そこに映る光景は……レッサーオーガらの死体と致命傷を受け、膝付いているリニヤに化けていたレッサーオーガが居る。そして、僕の目の前には………エルフ特有の長い耳に白銀の髪を揺らめかせ、碧い瞳をこちらに向ける少女の姿がそこに。その手には、身の丈には合わない黒い刀身の大剣を片手で持ち、血を払っている。レッサーオーガと敵対している事から味方だと伺えるが……残念なことにここで意識が闇に落ちる。落ちる最中、こんな声が聞こえた……
『良かった……一人だけでも救う事が出来た…それに……』
その声は安堵した様な声であったが、何処か悲しくもあり、辛く後悔している様な印象だと感じた………
次に目を覚ました光景は、どこかの天井であった。身体を起こそうとするも言う事を聞いてくれない。夢……だったのだろうか。あの状況で生きていることは奇跡に近い事だ。なら……あれら全ては夢……きっと…夢なんだ…きっと………。現実逃避をしている最中、視界に白銀の少女が映る。
??? 「っ!……良かった。本当に…良かった」
少女は驚きの表情をみせるやいなや、安堵した表情を僕に向ける。
??? 「貴方は、あれから1週間程、意識が無かったんだよ……あの時は…駄目かと思ったけど、何とかなって良かったよ」
彼女は微笑み、治療を施そうとしたが、僕は『あれから』『あの時』の言葉を聞いた瞬間に全ての事がフラッシュバックし、涙で視界が歪む。頭では理解している、でも……でも、理性がそれを拒もうとしている。
『あれは……夢…夢では……無い。みんなが殺され、裏切られ……家族が…家族は…みんな………死んで……死んだ、死ん…だ、死んだ死んだしんだしんだしんだ死死死死ししんしししし………【みんな、死んだんだ】………。』
結果、重い身体が小刻みに振動し、全ての感情を吐き出すが如く、泣き叫んだ…………
突然の事で彼女は、一瞬だけ呆気に取られて居たが、すぐさま僕の身体を抱きしめ、布団に抑え込んだ。僕の意識が遠のくまで無言のまま決して放す事は無かった。その時に一瞬だけ彼女の表情が見えた………いたたまれない気持ちと苦悶の表情を浮かべていた。
そこから5日程経過した頃、僕は……いや、俺は、食事が喉を通らず、痩せこけていた。彼女ことアイシャ・リーズカルテットは俺の為に毎食作って持ってきた。それに加え、包帯の入れ替えや体を拭いてくれて、治療まで施すと言う至れり尽くせりであった。でも、そんな俺は、彼女の好意に対して何も出来なかった。食事を口には運ぶが少量しか食べる事が出来ず、肉を食べようすると、あの光景が脳裏に浮かび、拒絶反応を起こしてしまう。終いには、夜な夜なトラウマで頻繁にうなされ、最悪暴れる事も多々ある。彼女に対して多大な迷惑を掛け続けているにも関わらず、彼女はなんの文句も無しに看病をし続けた。
自分から話すことが出来たのは、村襲撃から丸一ヶ月経った日の事。俺は、彼女に対して質問をした。
ラルガ 「……どうして……俺なんかを救ったんだ?ここ一ヶ月、治療してくれた好意には感謝しかないが……どうして…」
彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔で俺をまじまじと見るが、すぐに目線を外し、苦悶の表情へと変わった。
アイシャ「私がもっと早く……村に到着していれば、ここまでの惨劇にはならなかったのに……ごめんなさい」
涙を浮かべ、彼女は事の発端と断片的だがあの日の事を語った。
事の発端は、オルガやリーラの気が付きから始まった。彼らは冒険者の経歴を持っており、最前線で活躍していた期待のエースとも言われてきた人達だ。その二人が現役から一線を引いて、多少勘が鈍るとは言え、この村の違和感に気が付いてしまったのは必然だっただろう。だから、密かに援軍を呼び込もうとした。そして、白羽の矢が立ったのは私。私と彼らの関係は、雇われ傭兵として何度も最前線に出ていた為、彼らとは面識があり、連絡をし合える程の関係だった。その為、手紙などで状況を分かっていたが、すぐさま動ける状態では無かった。
手紙のやり取りを数回交わし、村を訪れる手筈を整えて、約束の日へと準備をしてきた。でも、私の直感が何かあると言わんばかりの警鐘を鳴らしていたから、1日でも早くあの村に向かったの………直感は正しかっけど、もう少し早く村に付けば、皆を…………少なくとも…貴方達を救えたのかもしれない………………。
アイシャ「あの日の事は言い訳するつもりは無いが、これだけは言わせて……彼らから…ある約束を頼まれたの。【娘と息子だけでも救ってくれと】それと、個人的な事もあった為、私は約束を引き受けたの。でも、実際に救えたのは君一人だけだった。なら……君だけでもと、治療を施し、看病をし続けた」
アイシャ「私が、もたもたしていたから、間に合た命を……助けるって約束したのに………ごめんなさい」
彼女は何度も、謝った。彼女自身が悪い訳ではないと言うのに……俺はどうしようもなく、いたたまれない気持ちに陥り……
ラルガ 「……ありがとう、ございます……別に俺は、貴方を追及するつもりは……無いです。唯、ただ俺は知りたかった、今を乗り超える為に……決意する為に、過去と向き合う為に………本当に……ありがとうございます」
アイシャ「……ぁ…………うん___よ~し、まずは腹ごしらえね♪」
彼女の顔から影が消え、涙を拭いながら、照れくさそうに笑顔を見せてくれた。
俺は決めた、なんの才能の無い俺ではあるが……強くなって………あいつ等を……【蛮族共を、駆逐してやる】
今日この日、アイシャ・リーズカルテットに弟子として、ここに置いてくれと、懇願した。彼女は戸惑いはしたが、快く聞き入れてくれた。そして、覚悟の象徴として、両親が指にはめていた指輪を妹達がくれたネックレスに通して首に着飾り、自身の名前と家名を家族の墓と共に、この地に置いて行く事にした。蛮族を駆逐するその時までに…………。
あれから12年(当時20歳)の歳月が経過した。俺は、決意した日からラルガではなく「デジール」と言う名前と師匠の家名「リーズカルテット」として、名乗ることにした。理由を聞くと、色々と融通が利くからだと。まぁ、師匠がこの名前が良いと言うのであれば、断る理由は無い。この12年間は、雇われ傭兵として各地へと赴き、蛮族共との戦いや様々な経験をしてきた。でも、一番驚きな事と言えば、師匠の事である。初めて会った時は、見た目以上に(まぁエルフだから仕方がない事ではあるが)穏やかな印象だったが、一緒に暮らし、放浪して行くなかで、250歳のわりに子供な考えを持ち、天真爛漫と言った印象になった事だ。まぁ、いいさ。俺は、強くなれればそれに越したことは無いし、少しではあるが楽しいと感じていた。このまま師匠と共に旅を続ける…………と思いったいたのにな……なんでこんな事になるのかね……本当に………運命に呪われているとしか思えないな…………
数日が経ち、依頼でダグニア地方に寄る事となる。今は陽が沈み、月明りが周囲を照らしていた。俺たちは森の中で野営をする為、慣れた手つきで日没前には、キャンプの設置は既に終わっており、くつろいで居る頃合いだ。俺はいつも通りにバスターソードを振るい、鍛錬をしていた。師匠は水浴びの為に近くの池に赴いていた。師匠は中々の綺麗好きで、毎日風呂か水浴びしないと死ぬと豪語していた程だから、師匠のルーティンと言うべきだろう。しかし、今日はいつもより水浴びの時間が長いと感じた。まぁ、12年も一緒に居れば体感で分かると言うもの……だが、妙に胸騒ぎも感じていた。これが、的中してほしくは無いと首を振るうが……12年前の件もある。確認をするだけ損とはならない。それに、師匠は強い。杞憂で済むと…………思った矢先に……発砲音が鳴り響く。音の方向は池方面……
デジール「クソ!……なんでこうも、悪い予想は的中するんだよ!」
自身の武器を乱雑に装備し、駆ける。大丈夫だ……師匠はあの馬鹿げた身体能力を持ってんだ、奇襲や武器云々で弱くなる事は無い。しかし、発砲音と言う事は、人族である可能性がある。これが味方によるものなのか……それとも師匠を狙った敵によるものかは現状分からない。蛮族に至っては森に生息しているかつ銃を扱う奴は候補があり過ぎる。まぁいい、思考するのはここまでだ。誰が相手だろうとも、やる事はかわらないのだから。
そうこうしているうちに、池に到着。 周囲を確認すると、師匠の服が枝に掛かっており、足跡が多数……形からして人、靴の跡、大きさは男性ものばかり。戦闘の痕跡あり………成程、窃盗や人身売買目的の類か。
確かに、師匠はエルフの中でも希少種「ミスト・エルフ」尚且つ魔法の類が一切が使えない特異体質の持ち主。狙われるのは分かっていた事だ……その為、ローブを身に纏い、足が付きずらい傭兵として今の今まで生きてきたんだ。覚悟は既に出来ていたはずだ。
師匠は今、交戦中だ。師匠の服をバックに詰め、周囲に気を張り、金属音を頼りに草木を掻き分けて駆ける………見つけた。水浴び中に襲われた事から、予想はしていた。ほぼ全裸な師匠が武器片手に数人相手を蹴散らしている。師匠は俺に気が付いたのか……
アイシャ「デ、デジール!ちちょっお!みみみあ///見ないで////!」
あからさまに顔や耳まで真っ赤に染まるが的確に相手を殺している。返り血がえげつないが……
デジール「今更何を言ってんだ師匠。それに敵を屠りながら言うセリフじゃないぜ。隠れてもいないし」
アイシャ「う///、うう五月蠅いなもう///……女性の裸を見るってことは……本来は極刑だからね!デジール」
デジール「はぁ、本当に今更だろ。まぁいい……まずはこいつらを蹴散らさないと、話はそれからだ」
倒されている数は7人。生き残りが3人、大柄の男・ロングアックス、中肉中背の男・ファストスパイク、小柄の男・テンペスト
師匠は一番厄介なシューターを倒すべく速攻を仕掛けるが、大柄の男が庇うように立ち塞がり鍔迫り合いにもち込まれる。俺はその横を通り抜けて、シューターを狙うが、弾丸が頬を掠り、進行を阻まれ、中肉の男が割った入る。何とか回避したが、やりずらい……師匠の方は大柄とやりあっている。あっちは大丈夫だ……問題はこちらの方だ。絶妙な間合いでの射撃に中肉は的確に隙を潰してくる。時間を掛け過ぎれば、俺がやられる。なら、やる事は一つ。射撃は全力で避けるが……ダガーの攻撃は躱さない。腹に突き刺さるが、それでいい。お前は確実に死ぬんだから……〈全力攻撃Ⅰ〉………
デジール「……死ね」
全開の力で振るう剣は奴に逃げる隙を与える間も無く絶たれ、即死。シューターはもう次弾装填している。この攻撃は、確実に当たるだろう……が大丈夫だ。奴の後ろには既に師匠が居る。シューターは背中を深く斬られ……戦闘終了。流石は師匠だと褒めちぎろうとしたが……師匠が物凄い形相で駆け寄り、胸倉を掴む。
アイシャ「君は大馬鹿なのか!?………これで死んでしまったら、私は………わたし、は…………どうしたら……っ…兎に角、これを…早く!」
師匠からトリートポーションを貰い殆どは回復したが……それよりも…
デジール「師匠、服」
師匠は今の状態に気が付いたのか、俺を睨みなから無言で服を奪い取り、着替える為に離れた行く。俺は師匠から目線を外し、周りの警戒も完全では無いが解いていた……【油断】……それがいけなかったんだ。
アイシャ「っ!……デジール!!」
師匠の叫び声で事の重大さを知る。視界に入るのは、師匠と師匠に斬られ、倒れていた筈のシューターがこちらに銃口を向けている。致命傷だと言うのに気を失わず、俺に一矢報いようと……全てがスローに見える。今の状態では回避が出来ない……弾丸が発射された……3発〈バースト・ショット〉か。流石にこれは死んだ、か。
戦場では常に警戒を怠らない、そう師匠教わっていたのに……目を閉じ、少しでも良いから、致命傷を避ける為に身体をよじる。焼け石に水だろうが、やらないだけマシである。後は、来る痛みに備えるだけ……な筈なのに一向に来ない?……まさかと思い、目を見開く…と………そこには………師匠が立ち塞がっている。本当に嫌になる……悪い予想が高確率で的中するのが……
シューターも限界だったのか、地に伏してしまったがそんな事はどうでも良い………よろめき、倒れる寸前で師匠の身体を支えた。そう、デジールに向けられた弾丸の全てをその身で庇ったのである。腹部と肩部と胸部に一発ずつ…完全な致命傷だ。
デジール「…っ!…な、なんで…だよ、師匠!……どう、して、だよ!」
アイシャ「あ…ははは、…っはぁ…はぁ………デジール、怪我…してな…い?」
強がるように余裕な笑顔を見せるが……明らかに血の気が無い
デジール「怪我って…そんな事はどうでも良い……早くこれを」
ベルトポーチからトリートポーションを取り出し、傷口にかけようとするが……師匠はそれを拒否した。
デジール「…っな!……何で……いま、今…止血しないと…血が…血がっ……………」
手が震える…不味い……このままだ…と師匠が……死んでしまう………………
アイシャ「ごめ、んなさい。…ずっと黙っていたの……私は、産まれ…つきで………ポーションの類が、効かないの。……だから、この怪我では、私はも、う助からない」
今思えば……ここ12年程一緒に居て、ポーションの類を一切使ってなかった。多少の怪我はあれど、殆どのポーションは俺が使うか、師匠以外の人だ使っていた……一切の疑いなんて無かった………少し考えていれば分かったことだろうに。
デジール「じゃあなんで俺を庇った!……ポーションの事を黙っていたことは気にしていないし、俺の責任でもある。でも!それとは話が違うだろ!……俺が負傷した方がポーションが効くし、致命傷にならなかった可能性だってあったはずだ……なのに…どうして、どうしてだよ!……俺はまた、大切な人…を失えって…いうのか」
涙が止まらない……過去の自身への怒りと同時に救えなかった怒りが混濁する。そんな俺を見て、師匠は遠い目で……
アイシャ「あぁ……デジール…やっぱり………彼と……あの子と、瓜二つだ………ほん、とうに…………」
師匠は、俺の回答を待たずに昔話を語る……まるで、独り言のように……懐かしむかのように……自身の命の灯が消え去る前に……
彼女こと、アイシャ・リーズカルテットは孤独だった。ミスト・エルフとしてこの世界に生誕した彼女は、薬の類や回復魔法が効かない事と魔法の類が一切使えないことにより、生まれながらにして天与呪縛が身体を蝕んでいた。その代わりに圧倒的な身体能力とあらゆる状態異常の完全無効、呪いの完全耐性。それらの恩恵を受けたが、同族からは腫れ物として酷い扱いを受けてきた。
そんな中、私(当時50歳)は森を散策中に一人の男性を見つける。酷い怪我をしている為か、気を失っている。私からしたら助ける義理は無かったのだが、気が付けば介抱をしていた。彼(当時25歳)が目を覚ましてから、助けたお礼として、色んな事を聞かされた。外の事やら国、気候、生活環境などなど……この世界から見た私達は、とてもちっぽけな存在であると気付かされたと同時に彼に対して、次第に好意を向ける様になった。
そして、自分は彼と共に外に出る事を決意した。勿論、集落の長には話を通してあるが、厄介払いの如くすんなりと出る事が出来た。
そこから彼と共に様々な国や地方、街に村と巡る事20年の歳月が過ぎようとしていた頃、2年前にようやく子宝に恵まれ、黒髪に碧い瞳の元気なハーフエルフの男の子が産まれたのだ。今は2歳になるこの子は【デジール】と言う名前を付けたのだ。しかし、良い事ばかりでは無いのがこの世だ。
私の夫であるジーク・リーズカルテットもといジーク・アルスフォートが45歳と言う若さで急死してしまったのだ。残された私は、悲しみに打ちひしがれていたが、我が子だけも何としてでも守ると心に誓った。
あれから10年(当時80歳)の歳月が経ち、デジール(12歳)はすくすくと育ち、冒険者に憧れていく彼だが、母として危険な事は少しでも避けたかった。しかし、息子の頼みであるから無下に出来ない為、傭兵の身分を使い、サポートをすることに。でも……この選択が間違っていた事に気が付いたのは2年後の話………
私達は依頼の為、とある街に滞在している所だ。
依頼内容
緊急クエスト「街の脅威を排除する」
概要
街郊外にて、小規模ではあるが蛮族群が数ヶ所あり、全て敵対勢力である。捜索の結果、およそ100体以上の蛮族が居る
目的はそれらの排除および後方支援
この街は危機に瀕している為、私達の他に多数の冒険者や傭兵が参加している。デジールは前線に行きたいとお願いされたが正直、私は前線に出てほしくなかった。むしろ、デジールを置いて行きたがったが、我が子の為を思い、後方支援傭員としてねじ込んでもらった。デジールは不満たらたらだったが、冒険者になってから2年しか経っていない事を考慮すると難しい話であった為、何とかして説得した。
さて、時間は流れ、少なくはない犠牲を出しつつも次々に戦果を挙げていった。このままいけば、無事に依頼達成だろうと誰もがそう思っていたが、ドレイクバロンが2体出現したとの事により、事態は急変した。1体は最前線に出現し、現在戦闘中。もう1体が、最悪な事に街の方に行ったの事。しかも、教会側の方向で噴煙が上がっている。そこには、後方支援組が居る所…………
『マズい……不味い!……デジールが配属になった所だ!!』
私はすぐさまデジールの下へ全力で駆ける。
現場は酷い状態であった。後方支援組の人らの死体が無残にも転がっている。私はそれに気を止めずにデジールが生きている事を願い瓦礫などを撤去しながら捜索を開始する。……30分……一時間と時間は進み、諦めかけていた時、瓦礫の隙間にデジールを発見した。私は、すぐさま瓦礫を慎重に撤去し、デジールを救出することが出来た……のは良かったが……時既に遅かった……息も絶え絶えで、瓦礫の破片が無数に突き刺さった事による出血や致命部位、特に頭蓋と脊髄周辺が重点的に狙われ、損傷が著しく激しい……もう………ポーションや回復魔法でどうこう出来る傷ではない…………蘇生魔術を行える神官は無残にも殺されここには誰も居ない……後は死を待つしか………
『私が間違っていた……デジールの為と思って…ここまでやってきたのに……どうして………』
我が子を抱きしめ…悲しみに打ちひしがれているなか………
デジール「あ…ははは、…っはぁ…はぁ………母さん…怪我…してな…い?」
彼が掠れるような声で言葉を紡ぐ………その顔はとても穏やかな笑顔だった。
アイシャ「……ごめん…な、さい……私は……わた、しは………」
言葉が出てこない……護ると決めてのに…どうして……なんで、なんでなんの………
【また……また、失えと言うの?】
【私は何の為に……ここまで来たの?】
【私は……あの子の為に……】
【失う?………嫌だ……いやだ!……絶対に諦めない!】
【我が子の為になんだってしてやる!】
【その為だったら死神すら殺してやる!】
私は自身を奮い立たせ、最低限の治療をデジールに施し、安全な場所へと運ぼうとするが……行く手を阻む者が現れる。直感で分かった……立ち塞がる様に佇む人族?が教会やデジールを含めた後方支援組を滅茶苦茶にしたドレイクバロン(人間形態)である事に……
??? 「何処に行こうと言うのかね?……強きエルフよ」
アイシャ「……………」
流暢に話す彼、ドレイクバロンが立ち塞がる。こいつがデジールを………
アイシャ「ごめんね……デジール……………少しだけ待ってて………今すぐこいつを______」
私は笑顔で答え……ドレイクバロンを正面に捉える。こいつ相手に、手を抜く事は出来ない。それに、こいつはデジールを傷つけた張本人………だから________
アイシャ「【本気で殺す!!】」
怒気を放ち、眼前にいるドレイクバロンを睨む。
??? 「ほう……この俺を殺すだと?たった一人で?……舐められたものだ」
ドレイクは気品ある立ち振る舞いで私を見据え、言葉を紡ぐ。
??? 「まぁいい……本来の目的は達した……後は、この街に居る奴らを鏖殺するだけだ」
アイシャ「私はお前を絶対に許さない!!彼らを殺し、この街を破壊した!そして……私の命より大切なデジールを!お前は傷つけた!!」
私は大剣〈ガイスター〉を握り締め、全力で地を踏み込む。竜形態になる前に……大地を駆け、音速を超える程の速度で、憤怒と憎悪を剣に乗せて……振るった………が、腕で防御し、硬い外皮に阻まれて半分までしか切り裂いていない。強い………
??? 「憤怒と憎悪の乗った一撃……良い攻撃だが、それでは俺の怨嗟には届かない……」
ドレイクバロンが力を溜め、竜形態へと姿を変えた。
バーパス「我が名はバーパス・オルケスタ。強き者よ……これは侵略では無い……復讐だ!!……俺の大切な居場所を奪い、愛する彼女を【ミーシャ】を殺した奴らに……地獄を見せる為だ!!」
彼は、翼を大きく広げ、憎悪と怨嗟のこもった声を高らかに上げる……だが、彼の表情はどこか苦悶を浮かべたように感じたが、今の私には関係が無い。早くこいつを倒さないとデジールが死んでしまう。
私はもう一度、大地を駆けようとするよりも早く、バーパスが動く。口元が煌々と輝くと同時に「燦光(さんこう)のブレス」を私に向けて放つ。
バーパス・オルケスタは孤独だった。生まれつき先天性色素欠乏症〈アルビノ〉を患っており、同族からは腫れ物として扱われた。だが、蛮族界隈は実力主義の世界……弱ければ死ぬか、下に身を置く。強ければ上にのし上がり、更なる強者に淘汰されるか乗り超えるか………正しく弱肉強食だ。奇しくも俺は強かった。即座に〈バロン(男爵)〉の階級を与えられ、同じ〈バロン〉の中で一番と言われる程強い。また、格上相手にも善戦している事から、〈バイカウント(子爵)〉と同格かそれ以上とも言われていたが、俺は貴族階級と言うものに興味が無かったうえに、高みに行く意欲も無く、ただ何となくで生きてきた。
『強過ぎる力は、ここまで世界をつまらないものへと変えてしまうのか……』
日々の生活に刺激が欲しいが為に、竜から人に形態に変え、角や翼を隠す為にローブに身を隠し、各地にへと放浪している。俺は、いつも通りに街を転々としている道中、盗賊であろう者達がローブを目深に被っている少女?を襲っている場面に出くわしてしまう。普段では見過ごす所だが、どう言う訳か、彼女を助けたいと思ってしまった。これは、本能によるものなのか、気まぐれによるものなのかは分からない。身体が勝手に動いてしまう感覚に襲われたが、不快感は無かった。
結果、俺は彼女の前に立ちはだかり、盗賊を簡単に蹴散らした。まぁ、当然と言えば当然だ……だが………
『力を使った事で少女?にこの姿を見られたか……どう言い訳する?殺すか?いや……』
考えあぐねていると、少女?が声を上げる。
??? 「ぁ……あの、叫び声が聞こえたのですが……一体……何が?」
バーパス「あ?盗賊は今さっき倒したが……見れば…わか……?」
少女?はオドオドしながら俺に質問を投げ掛けるが、質問に違和感を感じた………
『なぜ少女?はそんな事を聞く?一目瞭然だろうに……ローブで顔が少ししか見えないが、目線が合っていない。と言う事は…』
少し沈黙が続き、一つの解に辿り着く。
バーパス「成程、お前……盲目なのか」
盲目であればあの質問を投げ掛けた事に辻褄が合う。そう言葉を投げ掛けると少女?は驚きと苦悶の表情を浮かべ……
??? 「え?ぁ…はい、私は、生まれつき目が見えないものでして、あの、一体何があったんですか?確か私は盗賊に襲われて……叫び声が聞こえて……そしたら貴方が声を漏らしたので……その……訳が分からなかったので……あ、あの……」
また、オドオドし始めた。俺は溜息を吐き、今起きた頃を端的且つ分かるように教えた。
バーパス「そう言う訳だ…日が落ちる前に帰る事だ」
そう踵を返し、立ち去ろうとしたが………
??? 「あっ……待って、ください」
彼女が近づくと同時に俺の裾を引っ張ると同時にフードが浮き上がり、その素顔を見せる。ふわりとした桃色の髪に黄金色の瞳をチラつかせ、大きな耳が飛び出る。
??? 「うっ……そ、その、盗賊から助けてもらって、命の恩人なので、ぁ、あの……ぉ、お礼を…させてください。お願いします」
鬼気迫る程に懇願する彼女を見て、正直な所、面を食らったが厄介事はなるべく避けるべきではある。だが、路銀が底を尽きかけている事もあり、渋々お礼とやらに乗ってみることにした。まぁ、何かあっても問題はない。道中、互いの自己紹介を軽く済ませ、近くの街に向かう事に。
彼女こと〈ミーシャ・クロウス・ベール〉は盲目ではあるが、視覚、痛覚以外の五感が優れている事もあり、彼女の先導の下、迷うことなく少し大きな街に到着する。門番にかなり怪しまれるが、ミーシャが「傭兵として雇った」と門番を説得し、無事に街中に入る事が出来た。そのまま、大通りを抜けて、街中央から離れた一つの一軒家に到着する。どうやらここが彼女の家だと言い中に招かれる。
『一体、目的はなんだ?罠なのか………しかし、盗賊相手に手も足も出なかった奴が俺の脅威になるとも思えない。なら……いや、どんな相手であろうと問題無く対処出来る……だが、弱者相手であろうが警戒は欠かせない……生きていく中で【油断】は命取りだ』
それから、彼女の饗(もてなし)を受けるが……幾つか分かった事がある。一つは、彼女は小柄で大きな耳が特徴である【レプラカーン】と言う種族である事。二つ、彼女には一切の悪意を感じない。むしろ、心配になるレベルでお人好しだ。三つ、ミーシャは薬師であり錬金術師でもある彼女は、ポーションの作成やマテリアルカードの作成、道具作成等々やっており、それを恵まれない人達に定価以下で提供している事。三つ、自己犠牲が過ぎる事だ。自身の生活費も他人の為に削る始末だ。
正直、これで生きて行ける事に疑問が湧いてくる程、彼女は危なっかしい………が、なぜここまで俺は彼女の心配をしているのだろうか?
『たかが人族相手だぞ?……俺達、蛮族とは相反せぬ者だ。なぜだ………何故なんだ…………』
この答えが分かる事になるのは、ミーシャと出会い、傭兵として共に一年の時が経過した頃だった。
俺は、とある用事を済ませる為でに隣町まで出向いていた。彼女を街に残して行くのは心配だったが、彼女も大人だ……それに一年前より比べると裕福になり、かなり家計は安定している。まぁ、常に火の車状態だったのを通常時に戻しただけだが、ミーシャがとても喜んでいたから、良しとするか……。
っと……それはそれとして、少し高い買い物だが、ミーシャが喜ぶ顔が浮かぶだろう。
結果から言えば、多大な被害を受けたが、蛮族共やドレイクバロン1体の討伐しもう1体は撃退、今度こそ依頼達成である。しかし、私の顔に晴れやかなものはうつらなかった………デジールは間に合わなかった……ドレイクバロンが居なければ……私が奴を早く殺せれば……或いは、あの選択肢が間違っていたのか………今、後悔した所で我が子が帰って来る事は無い……
大切なものは何処にも無いのだから……今は一人となり現在まで各地を放浪する傭兵に成り下がってしまったのだ。
あれから現在に至り、オルガやリーラ、君達と出会った。ラルガに出会った時は、とてつもなく驚いてしまった。息子と瓜二つである事、彼と同じ家名である事もだ。でも、あの時に息子と同じ名前と付けるのに抵抗はあったが、時を同じくしていく内に段々と、無意識的にデジールと呼んでしまうんだ。なら、いっそのこと過去を隠し、「デジール・リーズカルテット」として、息子の分まで生きてと密かに願ったのである。
師匠が全てを話し終えると………満面の笑みを浮かべ、優しく俺を抱きしめた。
アイシャ「…っぅ………ごめんな、さい……私の……我儘で君に……デジールに背負わせる形になって…ごめんね」
か細い腕が小刻みに震える。俺は、力強くかつ優しく抱きしめ返す。
デジール「謝るのは俺の方だ師匠。12年前に師匠が来てくれなかったら、死んでいた所だったんだ。師匠が懸命に治療、看病をしてくれて、ここまで俺を育ててくれたんだ。むしろ、救えなくて……すまない………だから、改めて言わしてくれ」
一呼吸し……
『ありがとう……母さん』
その言葉を最後に、師匠が……アイシャ・リーズカルテットは………日の出と共に俺の腕の中で息絶えた。
そして、現在(25歳)俺は家族と師匠の墓参りするべく、ダグニア地方の辺境の地に来ていた。歩いていると丘に4つの墓石と1つの大剣が目に見える。5年前に、師匠が息絶えた日にダグニア地方の辺境の地にある、家族の墓標のすぐ脇に師匠を埋葬した。墓石の代わりに師匠が愛用していた〈ガイスター〉を突き刺した。今の俺ですら扱えない武器であるから、墓標にした方が師匠も喜ぶだろう。
『もう、5年が経ったんだな。時間の流れはあっと言う間だ……師匠が死んでからまた各地を巡り、来るのに時間が掛かってしまった。すまなかったな。次来る時はもう少し早くに来るよ』
『母さん、父さん、ティアナ、ディアナ、師匠』
『行ってきます』
さて……この先、彼が誰と出会い、感じ、悩み、進むかは神のみぞ知る世界。だが、彼は変わらないだろう……正義も悪も関係ない。ただ…彼「デジール・リーズカルテット」は自身の信念のもと、歩み続けるだろう……………
そう、理不尽で残酷な……それでもなお…美しい、この世界を…………
【END:G 空蝉に沈む、運命に呪われた者の宿命】
セッション履歴
No. | 日付 | タイトル | 経験点 | ガメル | 名誉点 | 成長 | GM | 参加者 |
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キャラクター作成 | 3,0001,200 |
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取得総計 | 3,000 | 1,200 | 0 | 0 |