そこそこ名のある貴族、エスクドルス家にて、ヴァルキリーとナイトメアの双子が生まれた。
　ナイトメアの赤子は捨てられるはずだったが、おっちょこちょいレベル16のメイドさんによってヴァルキリーの方が捨てられる。ナイトメアの痣が背中とくるぶしにあって羽の紋様っぽかったために間違えたらしい。色が全く違うのですが。
　結果、母親は寝込み、父親は半狂乱。仕方ない、ヴァルキリーに付ける予定だった名前をナイトメアに付けよう！　そしてヴァルキリーとして育てよう！　無理でした。母親はますます寝込んだ。父親は爵位を剥奪され、目が死んだ。

　そんなドタバタで間引かれるタイミングを失い、リイハは生かされた。教師はつけられたが、座敷牢に監禁されて。
　父親は「ヴァルキリーの方が残っていれば」とぼやき、母親は「かわいいヴァルキリーのリイハ……」とぶつぶつ呟いていた。リイハの味方は師匠だけだった。
　教師としてやってきた師匠は、リイハに様々なことを教えてくれた。本もたくさん与えてくれた。その中の一冊、自分と同じナイトメアの冒険譚に目を輝かせれば、戦う方法を教えてくれた。神様の声が聞こえた時は、神聖魔法について教えてくれた。そして、もっと自由に生きていいのだと教えてくれた。

　リイハが15になった日。
　父親に呼び出されたリイハはこう告げられる。
「冒険者にでもなって、ヴァルキリーを見つけて連れてこい。そしたら家も再興できるだろう。お前の待遇も良くしてやらんでもない」
　リイハは生まれて初めて反抗した。ヴァルキリーの幻想を追い続ける両親がいやだった。
「私は自分で勝手に冒険者になりますし、家の再興だってしたければ私が自分でやりますわ」
　絶縁だと言われた。その上、目障りになれば消すと脅された。
　そうすればいいと啖呵を切って、リイハは家を出た。冒険者になろう。かつて本の中で見た英雄みたいになりたい。そのためには、
「冒険者のお店ってどこかしら？」