容姿・経歴・その他メモ

【経歴表】
■未だ叶わない夢がある
■監禁された事がある
■特定の異種族を好んでいる(いた)
【冒険に出た理由】
■失われた家紋を取り戻すため

アヴァルフ妖精諸王国連邦にある、エルフの国の1つカバネル。
そこにあるエルミエル家の、鉄格子に閉ざされた部屋がずっとフウカの自室だった。
由緒正しき妖精の女王の声を聞く、ユトラエル家の分家であるエルミエル家にとって、家に生まれた穢れた血は忌むべき物だった。

ただ社交界に通じたこの家で、子どもの遺棄はマズい。フウカはその事情だけで生かされ、満足な食事も与えられず、ただただ虐待されて生きてきた。
希望など物心ついた頃から持ったこともない。希望などもたなければ絶望もない。当たり前の苛酷な環境をただ享受して、しかし心だけは折れずに、少しでも痛みを和らげるために身体を鍛えていた。

どれほどの時が経っただろうか。自分は出して貰えないけれど、いないかのように振る舞われて関係のない話が耳に入ってくる。
曰く、ユトラエル家のメリアは本家であることを鼻にかけて横柄な態度をとっている。エルミエル家のエルフを馬鹿にしている。乗っ取りを企てている。暗殺を企てている。陰謀に貶められる。
フウカでもわかる、ばかばかしい陰謀論だった。でもきっと、ユトラエル家がエルミエル家を省みていないのは本当なのだろう。だからこうして悪感情が膨れあがっているのが、放置されている。
愚かだなと、ただそれだけの感想を抱いていた。

そしてそれが具体的な殺意となり、暴動して起こる日も聞いていた。それにも興味がなかったけど、その日は珍しくユトラエル家の人間が来るからとフウカのことを見張る者は誰も居なくなった。
次に人が来るときは、私が殺されるときかと特に感慨もなく思った。

しかしやってきたのは、小柄で弱々しい1人の女メリアだった。
綺麗な服を着て、穢れを知らないような顔をしている。腹立たしい、睨みを利かせればすぐに消えるだろう。
そう思って憎々しげに眼力を込めてやった。

なのに、そのメリアは逃げなかった。むしろ部屋に入ってきたときよりも、真っ直ぐな目をして近寄ってくる。
眩しい。咄嗟にそう思って、目をそらした。近寄るな、いなくなれと、罵声を浴びせて追い払いたかった。でも、出来なかった。

メリアが鍵をあけて、ゆっくり近づいてくる。その気配を感じ取りながらも、なにもできなかった。追い払うことも、拒絶することも。言いしれぬ不思議な雰囲気を、感じ取っていた。

初めて、肌に人の手が触れる。知らない温度だった。後になってこの温度は、温もりと呼ぶのだと知った。
メリアを中心に、石の床から花が咲き誇った。神の奇跡のようなその現象により、優しい花の香りに包まれながら、メリアは告げた。

「一緒に、生きて」

脳に、心に、直接響くような声だった。
一緒に。一緒。この暗い孤独の世界に訪れた、新しい世界。今、私の世界を照らした。

「ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ」

口から勝手に漏れた言葉。自分でもなんといったか分からない、言葉の意味すら知らなかったかも知れない。
でもその吐き出した言葉は勝手に自分に浸透して、ああこのメリアと共に生きようと。そう思った。

そして暴動が始まる。醜い争いがそこかしこで起こる。
メリアの名前はネルシャといった。何が起こったのかの理解すら追いついていないネルシャを引き連れて、フウカはエルミエル家を出た。この家には、未練などなかった。

ネルシャは、ユトラエル家の者だった。悪感情に包まれ堕落した分家エルミエル家の本当の使命、それは本家ユトラエル家の者を護ること。
フウカはそれを自身の使命として、もうなくなったエルミエル家のただ１人の生き残りとして、その使命を果たすと誓った。
ネルシャ・ユトラエルのために、フウカ・エルミエルは冒険者として生きていく道を選んだのだった。

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