とある村の庭師の家に生まれ、昔から色んな庭を手入れする家族と過ごしており、
本人も妖精たちの声を聴きつつ、花壇の管理などを担当していた。

50歳を超えたある日庭の手入れを任されていたそこそこ大きな家の息子(人間・30歳)に、
その珍しい種族と可愛らしい雰囲気から見初められる。
すわ玉の輿かと家は大盛り上がり。
やんややんやと話は進み、1年ほどで正式な許嫁となる。
相手もティティカの美貌を生涯手に入れられるならと子供ができないことも了承してくれていた。

そのまま5年ほど順調なお付き合いを続けていた。
仲もかなり良く、お互いの名前の刺青を見えにくいところに入れたりしちゃったりした。
しかし、いつまで経っても結婚の話が進まない。
と言いつつも長命種のメリアとしてはそこまで焦るほどの時間でもなかった。
ただ相手方の年齢としても、村の雰囲気も、もうそろそろ……という感じになってきた。

そこでティティカも積極的に結婚の話を持ち出すようになった。
元々しっかり者だったため、相手の親族なども巻き込みそこからは話が進んでいったが、
どうにも本人がうだうだと言い訳をしては逃げ回る。
あまりにも逃げ回るのでとうとうティティカの親族、相手の親族総出で問い詰めたところ、
「実はここ1年ほど隣町の商家の令嬢(人間・23歳)と密かに付き合っており、相手が妊娠した」と。

村は大荒れ。
慰謝料はきちんと支払われたが、村全体の利益としては隣町の商家との繋がりを重視され、
婚約は向こうから破棄されて相手方の令嬢が嫁入りすることとなった。
結婚式の準備はほとんどできていたこともあり、とんとん拍子で話が進んでいき、
なんとティティカも招待されて村全体を挙げての大騒ぎとなった。

もちろんティティカは結婚式にはいかなかったが、そこから村の中には居づらくなった。
睡眠が必要ないとはいえ、たまに寝れば「なんであの女はまだこんなところにいるんだ」と
陰口をたたかれる悪夢を毎回見るようになった。

これはもうこの村から離れるしかない、と、少し残った慰謝料を妖精の宝石に変えて
ティティカは冒険者として旅立ったのだった。

「次こそは、誠実な人と幸せに……いやでも、しばらく恋愛はいらないわね……」

経歴表

A/6-4:体のどこかに刺青がある
B/2-2:同じ夢を何度も見ている
A/3-5:許嫁がいる(いた)