夢を見た。13歳の頃だ。見慣れない部屋で、辺りが真っ赤に染まっている夢。真っ黒な大人の影が3人いて、床を見れば絶命した男女がいた。そして、影の1人が自分にナイフを振り上げるーーそこで目が覚める。
一年に一回、そんな夢を見た。これが予知夢であることを知ったのは15歳の時。引越しをして、半年くらいの事だった。家に帰ってくれば、両親が死んでおり、逆光で顔の見えない大人が3人、こちらを向いた。死んでしまう…そう思った時に、後ろから誰かがやってきて、大人達を捕縛していった。
「ええと…ぼく？大丈夫？」
声掛けられたと気が付く。
「ボクは、大丈夫、だけど…」
屍になった両親を見る。その動作に、声をかけてきた人が、同じように目線を向ける。
「……お一人ですか？」
「え？」
「ご兄弟などはいらっしゃいますか？」
「ああ…いない、です。お母さんとお父さんとボクだけで暮らしてたし、親族？にも会ったことは無いです」
「では、暫く住み込みで働けるところを紹介します。我らが所属する冒険者ギルドが贔屓にしてる場所があるんです。そこで働きながら今後を決めるといいかと。ご両親の埋葬は教会にてきちんと行っておきますし、その際には貴方もつれていきましょう」
何も言えなかった。何も考えられなかった。とりあえずそれがありがたい事であることしか分からなかった。

それから5年の間で出来たことといえば、瀕死の子を1人、無事に回復させてあげられた事くらいである。もちろん、回復魔術なんて使えないから、料理の提供と、宿場への口利きくらいしかやっていないが。それでも、その子は「拾ってくれた事こそが最大の助けでした！」と行って聞かなかった。そして、元気になったと思ったらまた旅立って行った。
そして、思ったのだ。ずっとここにいる訳には行かない。もしかしたら、誰かを助ける手伝いが色んな所で出来るかもしれない。そんな生き方をしてみたい、と。

何もかもが一般的なステータスしか持ち合わせていない自覚はあった。買い物をするのにも迷子になるので下手な道に行くなよ、と窘められ…心配されまくってもいる。それでも、そんな事くらいで諦めたくなかった。自分を助けてくれた冒険者のように。自分自身が誰かを助ける手伝いをする為に。平和を作る手伝いをしたいという願いの為に。
ギリギリ魔術行使の適正のあったことを知った住み込み先の人に簡単なロッドを餞別がわりに貰って、今、旅立つこととなる。
……のだが。
まさか操霊術師の人に拾ってもらえるとは思わなかった。
師匠は穏やかなおじさまで、危険についても死体でおしえてくれた。ちょっとそれが1番怖かった。おじさまは「賢神キルヒア」を信仰している神聖術師でもあった。だから人体実験はしないけど、研究の一環で普通にアンデッドとか召喚してたから、なんか、うん。ボクはああならないようにしたいなって思った。