とあるオニクスバジリスクが長を務める、バジリスクの集団に生まれる。ウィークリングであることから、親を含めた同族たちは忌避する者、面白がる者、不気味に思う者など、少なくとも平和な環境で生まれ育つことはなかった。

長であるオニクスバジリスクは、シグに対し「普通のバジリスクにできないだろうか」と、面白半分、暇つぶし半分にシグの身を弄ぶことにした。
叩けば、殴れば、焼けば――とにかく痛めつければショックなり何なりで多少はバジリスクの見た目に近づくかもしれないと(そんなことあるわけがないと理解した上で)、長の気まぐれでシグは痛め続けられた。
逃げても連れ戻され、更に激しく痛めつけられた。やがてシグは能動的に動くことを止め、考えることすらしなくなる。
身体には多くの傷跡が残ったが、現在はそれを隠すため、そしてシグ自身が記憶の奥底に押し込むため、身体は包帯が多く巻かれた上でローブで覆い隠している。

「隠しても、見えなくしてもそこにある事実は変わらない。包帯を巻き直すのは、きっと一生慣れないだろうな」

シグ八歳の頃。ある日、シグのいるバジリスクの集団が偶然近くを通りがかったヴァグランツによって討伐される。ヴァグランツたちはボロボロだったシグを保護。身体に残された多くの傷跡からシグの生活環境を悟ったヴァグランツたちはシグを治療し仲間として迎え入れる。
その後2年の間、ヴァグランツたちの下で育てられる。この頃に弓を教えられ、狩りの仕方も教わった。
元々シグを拾ったヴァグランツたちは蛮族を討伐することで人族の安全を確保することを活動目的とする集団だった。シグが10歳になったころ、「自分たちについて来るよりももっと良い環境で生きていける」と、仲間の伝手で「フリーダム・ブリーズ」を紹介される。
その後、シグは「フリーダム・ブリーズ」に加入、以降キャラバンの狩人兼射手として育つことになる。
ちなみに現在のシグが使用している矢筒は、「フリーダム・ブリーズ」へ移る直前にキリルから選別として渡されたもの。

「こんな俺にキリルとレネーは居場所をくれた。生まれは蛮族でも、"人生"捨てたもんじゃない。受け入れてくれたみんなには感謝しかないさ」