容姿・経歴・その他メモ

【経歴表】
■予知夢を見た事がある
■有名人の友達がいる
■裏切られたことがある
【冒険に出た理由】
■故郷に居られなくなって

カイドロンが生まれた時には、彼の使命は決まっていた。
冒険者ギルド本部に所属し、魔神との戦いに命を賭ける。祖父母はそれで戦死したし、父母はいつ死んでもおかしくない戦場に日夜繰り出されていた。

それに疑問を持ったことなどなかったし、カイドロン自身もいつかそうなるだろうと当たり前のように思っていた。そしてその時は当然のように、カイドロンが成人するのも待たずに始まった。
彼の所属したチームには、同期に人間のマギテックシューターがいた。熟練したその腕前で、次々と敵を屠っていく。そして仲間への心遣いを決して忘れない。戦う者として、仲間として、友として、カイドロンはその人間…ツルカミを尊敬していた。

そんな日々が続いたある日。カイドロンは戦いにて再起不能に至るほどの怪我を負ってしまう。なんとか生還し、治療を受けたものの、後遺症は甚大だった。カイドロンは冒険者として引退を余儀なくされ、同時に生きる意味を失った。

戦闘地域において、戦えなくなった戦人に価値はない。カイドロンは家族からも見放されたし、カイドロン自身もそれが当然だと思った。だからあとは誰にも迷惑をかけず、治療も受けずにひっそりと死んでしまおうと思っていた矢先に、ツルカミから声がかかった。

友を失いたくない、そんな俺のわがままを聞いて欲しい。カイドロン、どうか生きてくれないか。今はダメなら、眠っていてくれ。いつか起きたときに、治療技術が進歩してまた戦えるかもしれない。朧気な希望だが、また俺と一緒に戦う未来を見てくれないか。

ツルカミの言うことは、カイドロンにとっては不思議なものだった。自分以外にもチームメイトはたくさんいる。戦えなくなった自分など捨て置け。そう思ったのに、言えなかった。カイドロンはツルカミの言葉にただ頷き、自らの意思で長い眠りについた。

どれくらい経っただろうか。カイドロンはあるとき、夢を見た。ツルカミが自分の名を呼んでいる。仮死状態の自分が夢を見ることなどないから、これは目が覚める前兆だろうか。またツルカミと並んで戦うことが出来るのだろうか。
だがツルカミは、申し訳なさそうに謝罪と、カイドロンに頼み事をしていた。どうか俺の代わりに、あの子を頼む、と。

カイドロンは目を覚ました。誰が自分を起こしたのかも分からない。何かしらの神の奇跡だろうか。

カイドロンが目を覚ますと、かなりの時が過ぎ去っていた。ツルカミはいなかった。戦死したのではない、この冒険者ギルド本部を裏切ったのだと、古い人々は語る。
ヴァイスシティ旧市街区から拾ってきた魔神の子を匿っていた。それが露呈し、責任を追及されるとその子を連れて逃げていった。それ以降の消息は誰も知らない。

愕然とした。戦う意思をなくし、敵の子を庇うなど、戦士としての誇りがない…そんな生き方など許されるはずがないと思った。激しい憤りも感じた。
だが、同時にかつてのチームメイトは言う。ツルカミは最後まで、人族のために戦い続けた。裏切り者なんかじゃ決して無い。救ったのも魔神の子じゃない、ヴァイスシティで保護した人族のナイトメアだった。ただ街の人々に受け入れられないだろうから、ツルカミ自身が匿っていた、と。

どちらが真実か確かめる術はない。だが、カイドロンは誰から聞くよりも、自分を救おうとしてくれたツルカミ自身の人柄を知っている。それを思うと、きっとチームメイトの言葉が正しいのだと思う。しかし同時に、かつての約束を果たせなくなったことに怒りを感じる。

あの子を頼む。かすかに聞こえたあのツルカミの声は、彼の遺言なのかもしれない。

カイドロンは旅支度を整える。かつての怪我による後遺症により、戦闘能力は著しく落ちていた。だがそんな身体でも、行かねばならなかった。
ツルカミの足跡を追って、カイドロンはドーデン地方から南下していく。ツルカミの真意を、そして彼が自分に託したあの子を、見極めなければならない。もし彼が弱き者であれば、カイドロンはそのまま静かに死を選ぶだろうし、もしも…ツルカミの意思を継ぐ者であれば、果たせなかった約束を果たすことが出来るかも知れない。

カイドロンはただそれだけを考えながら、導かれるように…月狼亭の扉を開くのだった。

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